私の税理士業敗戦記 Episode2
先日アルキメデスの大戦という映画を見ました、航空戦力による戦いが主流になると気づきつつも海軍は、日露戦争の日本海海戦のように戦艦どうしが大砲を撃ち合って雌雄を結するいわゆる大艦巨砲主義が正統であるという考え方を変えられずに、国家予算の7%もかけて戦艦大和を建造しました。
税理士事務所でいうと従来の月次巡回監査方式が大艦巨砲主義。訪問を省いたクラウド方式が航空戦力型なのではないかと思います。
わたしは西暦2000年前後のネットバブルの時代に、ネットベンチャー企業のCFOをやっていました。そのころはベンチャーキャピタルからの投資を受けることを目的としたビジネスプランコンテストが数多く開催されていました。
私も「一石二帳」というネーミングのdocomoのimodeで弥生会計の入力ができるシステムを試作して大前研一さん主催のコンテンストに応募したことがあります。
その事前審査のときに審査員は「また、会計ASPですか!こればっかり来るんですよね。」とうんざりした様子でした。
現在クラウド会計ブームですが、私の観察では今は、第3次クラウド会計ブームだと思います。
第1次は、そのネットバブルの時代、ビジネスアイデアだけでお金が集まった時代ですので雨後の筍のように会計ASPが表れました(当時はまだクラウドと呼ばれていなかった)。
パソコンの黎明期に多く生まれたのが会計ソフトであったように、クラウドの黎明期にも会計ソフトが多く生まれました。
名前は忘れましたが、テレビCMを打つ寸前にネットバブルが崩壊して消えていった派手な営業をする会計ソフトベンチャーもありました。最後まで生き残ったのは、その大前研一氏主催のビジネスプランコンテストに勝ち残ったネットde会計でしたが昨年くらいにその生涯を終えました。
第2次は、発展会計やA-saasといった今もある実力派です。このほかオリコンタービレのフロンティア21という擬似的にクラウド会計を実現するシステムも生まれました。またオンラインストレージのDropboxでもクラウド会計の代用が可能となりました。
そして第3次は、ご存知のfreeeやマネーフォワードといった、fintechの技術を活用したものです。
早くから税理士業界における航空戦力の優位性に気づいていたので15年前には、事務所メニューを松竹梅に分けて、梅は、弥生会計+フロンティア21で訪問しない代わりに低価格(月額顧問料15000円)というサービスを作りました。これが大変好評で時間あたりの生産性も高いものでした。
また、この当時GoogleのSEO対策も簡単で、「税理士事務所」の検索で「近藤学税理士事務所」のホームページが常にトップページに表示されていました。
今から思うと、ライバル不在でブルーオーシャンの市場だったので、ここで頑張れば大きく業績を伸ばせただろうと思います
だがしかし・・・
心のどこかに、これは邪道だという固定観念があったのでしょう。しばらくしてこのサービスを廃止してしまいました。
いち早く航空戦力の活用法に気付きながら、大艦巨砲主義を捨てきれなかったのです。
私にとってのミッドウエイはここだったと思います。
当時私は、TKCの会員でした、TKCは月次巡回監査を生み出したいわば大艦巨砲主義の総本山です。
優秀なスタッフを揃え月次巡回による金融機関にも税務署にも強い高品質なサービスを提供するという理想像が輝いて見えました。
わたしも駅前のちゃんとした事務所に会議室を備え、正社員を雇用する大艦巨砲主義に邁進しました。
もともと、これは前回書いたような経営者タイプの志向をもつ人にとれば理想的なスタイルですが、私のようなひとり税理士、パラレル税理士タイプには最も向かないスタイルでした。
結局無残に敗退し負債を抱え、ひとり税理士へと撤退することになります。
それでもしばらくは大艦巨砲主義への憧れはなかなか消えませんでした。
正直今でも同年代で大きな事務所を築き上げたひとにいささかのコンプレックスを感じます。
それほどに大艦巨砲主義の呪縛は強いのです。
最近の若手の税理士を見てるとこの大艦巨砲主義の呪縛がないせいか、私がかつてイメージした空中戦を得意とする税理士のスタイルを躊躇なく実践されているかたも多く、とても頼もしくまた羨ましく思います。
そのまま自分の信じた道を突き進んで欲しいと思います。
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