MMT解説1

むしろ文系だからこそ分かる経済理論MMTを解説 その2

さる7月16日、今世界中で論争を巻き起こしているMMTこと「現代貨幣理論」の提唱者の1人である、ステファニー・ケルトン教授が来日されました。

ただ、このMMT (Modern Monetary Theory)ですが、現在の“主流派”経済学とは考え方が根本的に違うため、なかなか正当な評価が広まっていません。

特に大手メディアで紹介される時は「異端な経済学」「トンデモ理論」という枕詞がついてから紹介されるほどです。

先日発売されたNewsweekで「日本人が知るべきMMT」題して特集記事が組まれていましたので、読んでみたのですが・・・まぁ、MMTを全く理解していないか、誤解に基づいたもので、正直読む価値ないくらいです。

「MMTを信じるやつはアホ」という結論ありきで、MMTの理論を捻じ曲げて書いてあると言っても過言ではないでしょう。

正直Newsweekの特集記事を読むくらいだったら、申し訳ないですが下記の私の投稿を読んでもらった方が百倍マシです(笑)。

ただ、この投稿の時は文章量の都合もあって敢えて書かなかった大事なことがあります。

そして、MMTの批判記事を読むと必ずと言って良いほど、その点に関する誤解から批判が展開されています。

そこで「MMT批判に対する批判」的な感じで、前回書けなかったMMTの大事なポイントを書いてみたいと思います。

MMTを理解する上で大事なポイント

MMTによれば一定の条件を満たす国であれば、政府の財政赤字それ自体は大きな問題ではありません。

その一定の条件というのは

1.自国通貨で運営されていること

2.変動為替相場制を採用していること

3.国債の発行に関しては自国通貨建てであること

この3つです。

日本は当然この3つに当てはまります。

具体的に言えば

1. 日本円という独自通貨を採用している(=自国通貨で運営されていること)

2. 毎日円安とか円高とかのニュースが流れている通り変動為替相場制です。

3. 日本の国債はほぼ100%日本円で発行されている(他の国から借金しているのではないということ)

だからです。

これらが当てはまる国家であれば、政府が財政破綻するということは理論的にあり得ません。

なぜなら、政府が財政破綻するということは支払うべきお金が払えなくなるということであり、“自分でお金を発行できる政府”がお金を払えなくなるなどということはあり得ないからです。

ですから、MMTによれば経済成長を果たすのに必要な範囲であれば赤字を恐れずに積極的に政府がお金を使っていくべきである、ということになります。

「MMTは無限にお金を発行できると言っている」は嘘

MMTを批判する人たちはここまでの話でもって

「MMTはお金を無制限に発行できると言っている」

「MMTの通りにお金を無制限に発行すればハイパーインフレーションになる!」

と言って批判します。

しかし、これは明らかな間違いです。

なぜなら、確かにMMTの理論によれば(条件さえ整えば)無限にお金を発行すること自体は可能です。しかし、だからと言って「無限に発行して良い」とか「無限に発行するべきだ」とかは全く言っていません。

先程も書いた通り、MMTの理論では「(上の条件を満たす)政府が財政破綻するなどということはあり得ないのだから、財政赤字が積み上がるのを恐れ過ぎて必要な政策を打たないというのは間違っていると言われているに過ぎません。

財政赤字がを恐れ過ぎて必要な政策を打たないというのはどういうことでしょうか?

例えば日本では吉田洋という東京大学経済学部の名誉教授が

「東南海大地震が来たら何十万人という人が亡くなり、数十兆円規模の経済損失が発生するかもしれない。そのためには国家規模の防災対策が必要である。

しかし、日本は財政赤字のためそんな余裕はない。

国土強靭化などと言ってお金を使っていてはいつまでも借金がなくならないから、そんなことにお金を使ってはならない。」

という主旨の発言をしています(『中央公論』2018年8月号)。

※上記の吉田洋氏の主張の詳細に興味がある方は、下記の中野剛志氏の論考をご参照ください。

上記記事にて中野剛志氏もご指摘になっていますが、この発言は要するに“「インフラ耐震工事費を40兆円も出せないから、南海トラフ地震の被害は甘受しろ」”という意味が含まれています。

正直“人として信じられない”というレベルではありますが、実際にこのような人物が財務省の中枢とも言える財務省財政制度審議会にて会長を務めているのです。

実際にこのような人物が、政府が国民を守るために必要なお金を使うことを妨害していることを考えれば、MMTの理論の方が圧倒的にまともであることは誰でも分かって頂けるのではないでしょうか。

MMTが示す財政規律の指標とは?

とは言え、繰り返し書いているようにMMTも「無制限にお金を発行しろ」とは言っていません。

MMTが主張しているのは、お金を発行する際に参考にすべき指標は「赤字か? 黒字か?」という点とは別のところにあるのではないか? ということです。

じゃあ、具体的に何を指標にすべきかと言えば、それはインフレ率です。

インフレ率が正常な範囲に収まっている限りにおいて、政府は財政赤字を気にする必要はない、ということです。

実はケルトン教授が講演の後に行ったインタビュー会見で、さらっと非常に面白いことを言っていました。

このインタビューではいろんなメディアの記者が、ケルトン教授にMMTについてさまざまな質問を投げかけたのですが、ある質問の時にケルトン教授が

「日本は20年以上もたった2%の物価上昇率も達成できずに苦しんでいる国なのに、記者から発せられる質問が全て過度なインフレを心配するものばかりしているということが関心深いですね(笑)。」

と仰ったのです。

ケルトン教授は非常に上品に仰っていますが、要するにこう言っているのです。

「さっきからあなた達は“インフレになったらどうするんですか?”とか“インフレを止める手段はあるんですか?”とかインフレの心配ばかりしてるけど、あなた達の国は20年もデフレで苦しんでるんじゃないの??

たった2%の物価上昇率さえ達成できずにデフレで苦しんでる国がインフレになるのが恐いって、じゃあ、あなた達は一体何がしたいの? インフレが恐いからってずっとこのままデフレ不況で衰退して行っても良いというつもりなの??」

と。

全く仰る通りでぐうの音も出ませんwww

ただ、このような「インフレ=悪」という絶対的なイメージが蔓延していることが「なぜ日本がいつまでもデフレを脱却できないか」の根本的問題を指し示していると私は感じました。

日本人はデフレの恐ろしさが分かっていない

非常に残念なことに、恐らくほとんどの方はデフレの恐ろしさというものがよく分かっていないと思います。

その理由は多分すごく素朴なもので

「だって、デフレって物の値段が下がるんでしょ。安く買えるならそれで良いじゃん。」

というものだと思います。

残念ながらこれは半分正しいのですが、半分間違っています。

なぜなら、デフレというのは“物の値段が下がる以上のスピードで、所得が下がる現象”だからです。

確かに所得が変わらないのであれば、物価が下がった方がより多く物が買えるので良いことです。でも、それ以上に所得が下がってしまえば、結局買える物は少なくなってしまいます。

買えるものが少なくなるということは、生産者の立場に立てば物が売れなくなるということ。

物が売れなくなれば、当然売上は下がり、その会社で働いている会社員の所得も下がります。

そうすると、さらに物が買えなくなる・・・。

という悪循環が発生するのです。

つまり、デフレを放置するとどんどん皆が貧乏になっていくのです。

この逆がインフレになります。

「インフレ=悪」は極端な議論

確かにインフレも度が過ぎれば経済に悪影響を及ぼします。

でも、マイルドなインフレ(日本では2%〜4%程度と言われます)であれば、逆に安いうちに買っておいた方が得策ですから、どんどん物が売れるようになります。

そうすると経済が回るようになるのです。

日本ではインフレというと、恐らくほとんどの人が戦後の日本とか、第一次大戦後のドイツとかのイメージが強く「インフレと言えば、ものすごく物価が上がって、お金が紙クズになる現象でしょ?」と思っていると思います。

ですが、そのイメージはあまりに極端です。

変な話、「日本人ってみんな実は忍者なんでしょ? 責任を取るために腹切りするんでしょ?」という偏見くらい極端です。

A. 経済が縮小するデフレか?

B. お金が紙くずになるハイパーインフレーションか?

とか、そんな両極端な選択肢しか存在しないのではありません。

経済が成長するために適切なインフレ率というものが世の中にはある訳です。MMTはその適切なインフレ率の下で経済運営はなされるべきであると主張しているに過ぎません。

そして、そのインフレ率とは国によって、経済構造によって異なるので、それぞれの国においてどの程度のインフレ率が適正かをしっかり議論しましょう、と言っているだけなのです。

このような提案の一体どこが「異端」「トンデモ理論」なのでしょうか?

さっぱり分かりません。

冷静に考えれば、誰でも理解できるごく当たり前の話をしているに過ぎないのです。

MMTに関しては、今後さまざまなメディアで取り上げられる機会が増えると思います(それほど無視できな勢力になってきているし、実際この20年以上に及ぶ日本の停滞を系統だって説明できるのはMMTしか存在しない)。

しかし、MMTというのは現在の主流派経済学とは考え方が根本的に異なりますので、基本的には大手メディアでは批判的な意味で報じられるでしょう。

ですが、今回の投稿で繰り返したように、MMTそれ自体は何ら非常識な部分や、「トンデモ理論」などという非難に値するものではありません。

みなさんが今後MMTという言葉に接する機会があれば、そのような「異端」「トンデモ理論」というような枕詞に左右されず、冷静に中身を見て判断して欲しいと願っています。

という訳で、これからもちょくちょくMMTネタを投稿していきますので、興味を持たれた方は「スキ」や「フォロー」などして頂けるととても嬉しいです!


今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😊


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Jimmyuran

日々のニュースをメディアと逆の視点で読み解くブログ。マイナー意見だと分かっていますがコツコツ書いていきますので、フォローやスキをつけてくれると尻尾を振って喜びます。中の人は読書、音楽、政治経済が三度の飯より好きなロスジェネ世代サラリーマンです。
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