単独親権制の恐ろしさ2

単独親権制は今となっては、世界でも珍しくなってしまった。

子どもの権利条約を批准した締約国のほとんどが、離婚後も共同養育を実現できるよう制度を整え、不断の努力を続けている

父母が協力して養育せよ、それが子のためにあるという価値観までを否定するわけではない

日本においても、しっかり根付いている

だからこそ、協議離婚制という、これもまた、世界に稀に見る、協議離婚しやすい珍しさとあいまって、離婚することも自己責任によって実現する自由がある反面、離婚した先の状況についても、自己責任に任せる状況なのだ

すなわち、離婚後の子育てについて公的なサポートは乏しく、せいぜい、困窮している“ひとり親家庭”に最低限度の文化的生活を満たすならば足りるという次元にとどまる支援しかなく、結局、自立していくには、自助努力が欠かせないことになっている

支援制度を活用することはできるが、なかなか、思い切って自立するまでは大変な苦労を伴ってしまう

離婚後も父母が共同養育をすることの理想があっても、それを選択するための心や物質面のケアがとうてい足りない

元々、裕福な層であれば、自助努力によって、共同養育を実現できるかもしれないが、離婚した自己責任観の下、共同養育が困難な荒んだ世界に突き落とされていく

唯一、家庭裁判所では、共同養育が推奨されるものの、かえって、葛藤が高まることもあり得る


そんな自己責任論が蔓延る離婚制度下では、協議離婚=双方の合意による離婚の自由は広く認められるが、一方で、合意ができないときには、離婚するには、調停、ひいては、裁判手続きを要し、数年に渡って、離婚原因、特に有責性の主張合戦を繰り広げる熾烈な闘いに陥りかねない

破綻主義が完成している共同親権制のある諸外国では、離婚の成否について深入りすることなく、離婚成立ありきで、離婚後の養育計画について建設的な協議をする仕組みが整っていることと大きな違いがある

誰も助けてくれない離婚後の子育て状況に放り出される恐怖は、離婚そのものを委縮させる

運よく協議ができて共同養育(面会交流をして養育費が支払われる環境)が実現する場合もあるが、保障は全くない

翻意した場合のリスクも自己責任になってしまう

だから、どんな苦痛を伴うDV被害者も、離婚後の暮らしへの恐怖があれば、「我慢」をしてしまい、ますます苦痛を継続してしまうことがある

DV被害者こそ、どんなに難のある配偶者であっても、子どもにとってはかけがえのない親であり、親子関係を断絶したくないという思考に陥ってしまいかねない

暴力に起因して支配されている被害者は、ますます正しい判断と遠い思考回路に自ら捉われていく

とても闇深い問題ではあるからこそ、自己責任による協議離婚のしやすさではなく、破綻主義の要素も取り入れた離婚制度の見直しが必要になる

現在、裁判所の傾向は、破綻主義に傾いているというがあくまで、有責主義の制度の枠内なので、忌避されるべき離婚をしなければならない理由付けとして、相手の有責性を妄信しかねない


お互い、縁がなかったんだね、と受け入れて、冷静に婚姻関係を解消できれば、共同養育に向けた前向きな協議へと切り替えやすいだろう

単独親権制に伴う離婚制度の歪みは全体に蔓延っている

とりわけ、離婚をしたら、父母のどちらかが親権を失う、特に、父親が失いやすいとなると、子を思う父親からの離婚請求は委縮しかねない

我慢して婚姻関係を続けた果てに、親権が問題にならなくなる頃、すなわち、子が成熟した頃に、牙を剝くことにもなりかねない

配偶者への愛情はなく、単独親権制のために、離婚を躊躇していただけだから、親権の問題がなくなったとたんに、遠慮なく離婚を請求するのだ

我慢させていることに気づかなかった方は、心外であろう

若い頃ならばやり直せたかもしれない

でも、シニア世代になって、仕事も、パートナーも、見つかる可能性が細丸中、どうやって自立せよというのか

単独親権制は熟年離婚の悲劇を招くのだ

財産分与という制度により、夫婦間の経済格差はある程度是正するし、年金分割制度もあるから、もはや離婚を躊躇するものがない

一度離婚したいと思えば、とことん憎くなる

長年我慢してきたための呪いの塊から吐き出される冷酷な主張は、ますます心身を切り刻んでいく

なるべくなら父母が協力して養育できるように

その価値観を、婚姻の枠内にとどめるために、離婚後は単独親権しかないということは、神様のいたずらのようだ

父母双方ともわが子を大切にすればするほど、一つの親権を奪うために、葛藤が高まり、激しく傷つけあうことになる

一つしかないから、奪い合いを避け、固定された性別役割分業を果たしながら養育する仕組み

お互いに役割を分けたから、暮らしの上で、ある意味必要不可欠だからこそ、我慢を受け入れてしまう仕組み

しかし、今となっては、男女共に稼ぎ、共に働き、共に養育しようという社会

お互いが対等だから、いつでも奪い合いができる以上、単独親権制では無理がある

共同養育社会への流れは止まらない

性別役割分業制を克服しようとした瞬間から、単独親権制は終わらなければならないのだ

男女共に、働き、稼ぎ、そして養育する

男女の対等を望む限り、単独親権制は見直さなければならない





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