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#わたしをかたちづくったもの ~夢の車は東へ走る~

高校生の頃、海外で活躍する日本人を紹介するテレビ番組が大好きだった。毎週登場する大人たちは皆キラキラしていた。

ある日、フランス在住のデザイナーが登場した。彼は二十歳の時に単身渡仏。紆余曲折を経て憧れのカーメーカーに就職した。



鉛筆が流れるように紙の上を走り、力強い車が描かれていく。
マーカーで色付けされると、鉛色の世界が一変し艶やかな光沢を放つ。
「この斜め後ろの姿がかっこいいんだ」
描き上げたばかりのスケッチをカメラに向けた彼の表情は輝いていた。

番組の終盤。
週末、彼は奥さんを連れてドイツへ小旅行に出かけた。古城のホテルに泊まると言う。
「城をバックに自分がデザインした車と妻と僕で写真を撮るんです」
彼は嬉しそうに笑いながら車に乗りこんだ。

夕暮れのアウトバーンを茜色に染まった車が東へ走る。

画面の中に憧れの全てが詰まっていた。


間違いない。
ハッキリと覚えている。
僕のデザイナーへの第一歩は、その瞬間だった。






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