横道それ子の話③

少なからず、それ子は迷惑をかけていたのだろう。
献身的に接してれる友人に対しても、いつものような対応ができなくなっていた。

それ子の中で自分は、うつ病になっているのだから、大切に扱われて当然とういう気持ちがあったのだと思う。
だからこそ、無制限な自由は他人との関係をダメにすることがある。

病気の人に、席を譲ったり、妊婦さんの荷物を持ってあげるとか、ごくごく当たり前のことが、できなくなってきた。それ子は気の利く女性だった。

毎日遊び呆けている。趣味となったのは、溜まっていたDVDを見ること。好きなテレビシリーズのDVDを買い揃えて、順番に進めていった。

医者に寝ろと言われているにも関わらず、深夜まで、好きなお菓子を食べながら、dvd鑑賞にのめり込んでいた。

それ子が好きだったのは、「デクスター」殺人鬼が主人公の作品で、人を殺したい願望があるものの、悪い奴なら、殺して良いという、勝手な考えで、殺人を繰り返していくという作品だ。いつも、そんな周りの勘違いで、ピンチを切り抜けちゃうの?という少し、ご都合主義のある作品だった。

そこには、恋愛や、ユーモアもあり、それ子のお気に入りの作品だった。

最初は連絡をしてくれていた親友も、会社の同僚も、次第に連絡を控えるようになってきた。

自分の都合良い時(調子の良い時だけ)電話で話したり、LINEでやり取りするのは、
やはり気分の良いものではない。
受け取る方は、初めはうつ病患者に対する憐れみがあったのだろう。

可哀想なこの子に私で良ければ、力になりましょうと言った具合だ。

今まで普通に接してきた周りのみんなも、やはり何かおかしいと気づき始めた。

病気のせいなのかな?こんな時はどうしたら良いのだろう。それ子の要求は、エスカレートしていく。

遅かれ早かれ、面倒見きれなくなった周りの人たちは、離れていく運命だった。

私は、うつ病なの!と声高らかに自由な振る舞いをする、友人に対して、周りが離れていくのは当然である。もちろん、心的外傷を持った方に対して、意識して接していくことは大切だ。そういう人もいて、そうでな人もいる世界なのだから。

うつ病患者にとって、自分が鬱であることは、武器にもなるうるのだ。全員がそうでないにしても、鬱である自分は、大切に扱われるべきという考えだ。

医者のやりたい事をやってください。というのは、自分ができることは。というある種の制約がある。何でもかんでも、自分の精神が壊れてしまうような、やりたい事をやるといったことではないのだ。

それ子はそれを理解していなかった。

続く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?