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ちはるのファーストコンタクト(2019年)

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2019年に書かれた(書かれる)「ちはるのファーストコンタクト」のすべての記事が読めます。300本以上あります。月額購読するよりも割安になっています。
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#研究

【研究】08 自分がとったデータをきちんと解釈するために統計を利用する

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。 前回は、仮説は否定されてなんぼのものという話をしました。自分が立てた仮説は大切にしたくなるのが人情です。でも、それをテストするときは公平にやる必要があります。そうしないと研究ではなくなってしまいます。 ■ 「早く宿題やって」といういつもの声がけを「待っててあげるから」に変えてみて、もし宿題をやる回数が多くなれば、「待っててあげるから」というセリフの効果があるということがいえますね。 □ そうですね。 ■ でも、どれくらい

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【研究】07 仮説は否定されてなんぼのもの

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。 前回は、実験参加者が1人のときの「シングルケースデザイン」について説明しました。そのとき、なにもしない、あるいは従前の扱いにする「ベースライン期(A)」を経て、違う扱い(介入)をしてみる「介入期(B)」、そしてさらに元に戻して(A)、効果がなくなるかどうかを確認するというデザインを紹介しました。これを「A-B-Aデザイン」と呼びます。 ■ 「早く宿題やって」といういつもの声がけがベースライン期(A)で、それを「待っててあ

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【研究】疑うことが研究者へのステップ

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。 前回は、実験参加者が1人でも実験はできるということを説明しました。これをシングルケースデザインと呼びます。たとえば「早く宿題やって」と声がけをしても宿題をやらない子どもに「待っててあげるから、宿題やってみて」という声がけに変えたら宿題をやるようになるかというような実験です。 ■ まず「早く宿題やって」といういつもの声がけをして、宿題をやるかどうかをデータとして取るのですね。 □ そうです。これが「A-Bデザイン」のAの期

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【研究】1個体でも実験はできる:シングルケースデザイン

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。 前回は、条件を変えて結果が変わるかどうかを観察するのが実験だということをいいました。たとえば、子どもに「早く宿題やって」と言ってもやってくれないときに、そのセリフを変更して「待っててあげるから、宿題やってみて」と言ってみるとやってくれたというようなことです。この場合、セリフを変えたことで結果が変わりましたので、セリフの変更が原因で宿題をやるようになったと推論できます。 ■ 「早く宿題やって」というセリフを「待っててあげる

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【研究】日常生活における実験

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。 前回は、私たちは日常生活の中でも、研究者的な活動をしているということを言いました。それは、出来事を観察して、そこから原因と結果の関係を推論して、それに基づいて仮説を立てて、それを検証しているということです。これはまさに科学者が行なっている活動と同じことです。 ■ ところで先生、うちの小学5年生の子のことで相談があります。 □ はい、なんですか。 ■ 宿題のドリルをやらないので困っています。 □ まあ、自分から進んでドリル

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【研究】推論、仮説、検証ということは日常生活で誰もがやっている

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。 前回までに、職場や共同体の中で私たちが身につけることは、自立することと協力することだと言いました。そして、この2つに加えて、研究することがあると主張しました。ここでいう研究とは、タクシーの運転手が町のどこを流せばお客を拾えるかというような、推論と仮説と検証の一連のプロセスのことです。そしてこうしたことは誰もが気づかないうちにやっていることなのです。 これを「研究者マインド」と呼びました。 ■ 推論とか仮説とか検証とか何

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【研究】09 研究のつまずき:締切を自分で作らなくてはならない

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いています。 前回は、質問を受けたときに即座に自分の研究の価値や意味について説明できるようにしておくことについて書きました。その答え方としては「今説明した私の研究はテーマや範囲も限定されているし、特殊なケースかもしれないけれども、これを明らかにすることで◯◯という<より大きな>問題を理解したり、解決するのに役立つのですよ」というパターンが典型的です。 今回は、「締切を自分で作

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【研究】08 研究のつまずき:自分の研究の価値を説明できない

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いています。 前回は、「レシピ的知識から抜け出せない」というテーマで書きました。「このような問題が起こった場合は、こうすれば解決できます」というようなレシピ的知識を集めた後は、なぜそうすることがいいのか、その裏側ではどのようなしくみが働いているのかということを明らかにしようとすると研究になっていくということです。 今回は、研究のつまづきとして「自分の研究の価値を説明できない」

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【本】ウェイン・ブースほか『リサーチの技法』:研究レポート・論文を書くための考え方を訓練する

木曜日はお勧めの本を紹介しています。 今回は、ウェイン・ブースほか『リサーチの技法』(ソシム, 2018)を取り上げます。 ■要約研究レポートや論文を書こうとする人はこの本を読んでおいた方がいい。取り上げられている実例は自分の領域とは違うかもしれない。しかし、だからこそ研究トピックの磨き方や議論の進め方について自分を訓練することができるだろう。また卒論をはじめとした研究指導をする人もこの本に沿って指導を進めるといいだろう。 ■ポイントパートII「問いを設定し、答えを見つ

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【研究】07 研究のつまずき:レシピ的知識から抜け出せない

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いています。 前回は、「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」というマズローの言葉をひいて、研究方法や分析方法をひとつ習得すると、そればかり使おうとしてしまう傾向があることを言いました。基本的な研究方法を身につけることは必要なことです。しかし、一通りの研究方法を理解したら、研究対象に合わせて研究方法を考えたり、新たな研究方法を考え出すことが必要になってきます。 今回はレシピ

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【研究】05 研究のつまずき:研究トピックが広すぎる

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いています。 前回は、ゴールが明示されないために研究がうまく進まないということを取り上げました。これは、自分で論文投稿することを目標とすることで解決できます。投稿するためには大会や研究会で発表して批判を受けておくというステップを踏んでいきます。大会や研究会での発表を研究のマイルストーンとして進めていきましょう。 今回は、研究トピックの適切な大きさということを取り上げたいと思い

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【研究】04 研究のつまずき:ゴールが明示されない

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いています。 前回は、研究になにか正解のようなものがあると思っていることがつまずきになることを言いました。得られた結果が自分の考えとは違うときに、それを失敗やミスだと考えてしまうのです。もちろんデータの取り方の不備であるとか研究手続きがうまくないということは可能性としてはあるでしょう。しかしたとえデータが自分が期待した結果と異なっていても、それは残念なものでもなんでもなく、そこ

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【研究】03 研究のつまずき:研究に正解があると思っている

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いています。 前回は、自分で問いを作ることに慣れていないということをあげました。研究を始めるまでは、おもに教室で先生から与えられた問題を解いていくだけでよかったのです。しかし研究では自分で問いを立てることからスタートします。その問いは自分が日々接している現場での問題や疑問から立てられるものです。問いを立てるためには自分の現場をよく観察することが必要です。 研究の問いが立てられ

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【研究】01 研究におけるつまずき

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。 年も変わりましたので、また新しい気持ちになって書いていきましょう。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いてみたいと思います。 「おとなの研究コース」というオンラインコースをSPOCという形で開いています。SPOCというのは Small Private Online Courses の略語で、「小さくてプライベートなオンライン講座」という意味です。最大12人の受講生を集めて、私のビデオとファシリテーターの手助け

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