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【連載】生涯学習時代におけるオンライン大学のこれから(2)

水曜日はフリーテーマで書いています。連載で「生涯学習時代のオンライン大学のこれから」というテーマで書いています。4回くらいで完結の予定です。

2.オンライン大学の卒業生調査からわかること

早稲田大学人間科学部通信教育課程は2003年度に開設された。社会人を中心ターゲットとしたオンライン教育による課程である。通称「eスクール」と呼ばれているので、以下eスクールと記述する。2018年度に16期生を迎えるeスクールは、科目選択によってはスクーリングなしで卒業することができることが特徴であり、その意味でオンライン大学と呼ぶことができる。

eスクールは卒業研究が必須となっており、その際に対面の個別指導を必須とするゼミもあるけれども、多くのゼミでは指導のすべてをオンラインで実施している。そのため、フルタイムで働いている社会人の他に、プロスポーツ選手、外出に困難がある障害者、国外に在住する人たちを受け入れている。これを支えているのが教育コーチと呼ばれるメンター制度である。教員と教育コーチがチームを組むことにより、授業コンテンツの設計と作成は教員が請け負い、質疑応答、フィードバック、採点、個別指導といった仕事は教育コーチが請け負うという作業分担が可能になった。

このeスクールを2007年から2013年に卒業した社会人学生753人を対象として卒業後調査を行なった研究報告がある(田中・向後 2014)。回答は無記名で行われ、135人の回答を得た(平均48.0 歳, SD=9.40; 回収率17.9%)。

振り返ってみてeスクールに入学してよかったことを5段階評定(5が最高)してもらったところ、評定値の高い順に、eスクールに入って良かった(平均4.87)、ゼミに入ったこと(4.79)、オンデマンド受講(4.79)、スクーリング参加(4.76)、教育コーチからのコメント(4.74)となった。この数値の解釈には、好印象を持った卒業生がアンケートに答える確率が高いことを割り引く必要はあるだろう。しかしそれでもなお、eスクールの特徴である、ゼミ(卒業研究)、オンデマンド授業、教育コーチが高い評価を得ていることがわかる。

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