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【研究】03 研究のつまずき:研究に正解があると思っている

水曜日は「研究すること」のトピックで書いています。しばらく「研究におけるつまずき」というテーマで書いています。

前回は、自分で問いを作ることに慣れていないということをあげました。研究を始めるまでは、おもに教室で先生から与えられた問題を解いていくだけでよかったのです。しかし研究では自分で問いを立てることからスタートします。その問いは自分が日々接している現場での問題や疑問から立てられるものです。問いを立てるためには自分の現場をよく観察することが必要です。

研究の問いが立てられると、それを検証するために実験や調査の計画を立て、データを収集していきます。このようにして研究は進んでいきます。しかし、データが集まり、それを整理、分析していくと、立ち止まってしまうことがあります。それは思っていた結果と異なる結果が出てきたときです。

卒論や修論の発表を聞いていると、ときどき発表者が「残念ながら有意差が見られませんでした」というようなセリフを言うことがあります。もちろん発表者にとっては、期待された有意差がなかったのは「残念」なことかもしれません。しかし研究の立場から見れば、それは残念なことでもなんでもなく、入手できた結果そのものであり、それ以上でも以下でもありません。やるべきことはなぜその結果になったのかについて十分に考察することです。そこから研究が始まります。

これは、その人が研究に正解があると考えていることのあらわれかもしれません。あるいは、出てくる結果は自分が想定したものでなくてはならないと考えているのかもしれません。もちろん研究計画を立てている段階で、仮説は考えています。しかしそれはあくまでもこれまでの理論や自分が立てたモデルに現実が従うとしたらと想定したときの「仮のもの」です。

もし得られたデータがそれにしたがっていないのであれば、それはそれとして受け止め、なぜそのような結果になったのかについて考えるのです。そうすると、これまでの理論やモデルに修正が必要なのかもしれないという考察に発展します。それが研究の進歩ということです。

ですから得られた結果に正解はないのです。自分が期待した結果と異なっていても、それは残念なものでもなんでもなく、そこから研究が進展していくものなのです。

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