4-お勧めの本

【本】カシュダン、ビスワス=ディーナー『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』:どんな心理状態もすべてよいとする見方

木曜日はお勧めの本を紹介しています。

今回は、カシュダン、ビスワス=ディーナー『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』(草思社, 2015)を取り上げます。

■要約

怒りや恥ずかしさといったネガティブな感情も意味がある。こうした感情は自分にとって大切なものを守るための行動を引き起こすために有用である。どんな心理状態もすべてよいと考えて、ポジティブ感情もネガティブ感情も受け入れて活用できる人がもっとも健全である。この状態をホールネス(全体性)と呼ぶ。ホールネスの状態になれば、人生の出来事に効果的に対応することができる。

■ポイント

ネガティブ感情は、ポジティブ感情以上に役立つ場合がある。たとえば、
・習ったことがすぐにわからなくても、その混乱状態を脱した学生は、最初から理解した学生よりもその後のテストで高い成績をとる。
・配偶者からの身体的・言語的な暴力を許せば、暴力が繰り返されることが多い。しかし、こちらが絶対に許さないという態度を示した場合、暴力は急激に減る。

現代ではますます物質的な快適さや便利さが追求されている。しかし、快適さへの欲望が満たされれば満たされるほど、私たちの経験の幅は狭まり、人生の困難を切り抜ける練習の機会を失う。それによって快適でない状況や不便さに対する心の免疫力が低下する。心理的な不快さには利点があるし、辛い心理状態がポジティブな結果に結びつくこともある。難しい人間関係を耐えることで世界が広がるだろう。

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