見出し画像

夏の匂い

梅雨があける頃に漂う夏の匂いが大好きだ。
何で好きなんだろうと考えると父のふるさと、長野の思い出が強いからだ。

小学生の頃、毎年お盆になると長野に帰省していた。
畑に囲まれた祖父母の家に行くと、必ずいとこがいて一緒に遊べることが楽しみで仕方なかった。

プール、ショッピングモール、花火大会、リクリエーション、トランプ…
小学生の私にとって何もかも新鮮で毎日が楽しかった。
最終日には『火垂るの墓』を観て、号泣して、でもけろっと庭先で花火をした。大人たちはビールを片手に子供たちの花火を遠目に眺めていた。

中学生になるといとこたちは部活を理由に祖父母の家に来なくなった。
それでも花火をしたかった私は、一人でも花火をした。
「あんたは花火が好きなんねー」という声が遠くからしたが線香花火を離さなかった。

高校生、大学生、どの時期もいとことは会えずに遊べなかったが、1人で花火は続け、親たちはビールを片手にずっと私を見ていた。

昨年の夏、そんな思い出の土地がなくなるという事実を電話で聞かされた。
あのとき遠めで見ていた大人たちのように缶ビールをプシュッと開けて、見えない土地を眺めながらベランダで飲み干した。
その瞬間、夏の匂いがしたような気がした。

==================================

夏といえば私が大好きな「時をかける少女」
時の儚さと未来への希望を思い出させてくれる作品。
この鑑賞後、「未来で待ってる」というセリフを無性に言いたくなる。
ビールを片手にね!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?