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日本とオーストラリアで複業する働き方 「企業」と「起業」

前回は、日本とオーストラリアで同時に2つの仕事を行う「複業」について書きました。今回は、性格の異なる二つの仕事を実際にどのように行なっているかについてノートします。

前回のノートは、こちら。↓

複業に至るまで
日本の企業に就職してから、15年目でのオーストラリア移住。
私の場合、会社としてのミッションとしてオーストラリア赴任が決まったわけではなく、いくつかの理由があって先に自分たちの意志でオーストラリアに来ることを決めました。当初は、今のような形(海外複業)というものを想定していたわけではなく、まずオーストラリアに移ってから仕事のことは考えるつもりでした。

オーストラリアでのビザを取得した段階では、日本で勤めている会社は退職せざるを得ないかと考えていました。当時(今でもそうかもしれません)、海外法人や支店、出向先などの拠点がない場合、海外に赴任する制度はなく、オーストラリアはその対象ではなかったため、会社に勤めたまま移住する方法がなかったのです。

ところが、マネジメントやHR部門との話し合いの中で、オーストラリアでほかの仕事をしている(複業)という状態であれば、東京の組織に所属しながら、オーストラリアで働くことができるのではないかという、なんとも柔軟な(!?)アイデアが生まれました。特にパンデミック以降は、働く場所の選択肢が広がる中で、こういった勤務形態もあるいは可能かもしれませんが、当時としてはかなりユニークな方法だったと思います。

私としては、現地でしか得られない情報や体験を日本に伝え、また日本で培った知識や技術を海外で活かせるのではないかという漠然としたイメージは持っていました。また、オーストラリアは、日本とは異なるライフスタイルがあり、私が仕事にしている働き方、ワークスタイルの文脈においても世界でも最も進んだ国のひとつとも言われ、仕事の上でも結びつけやすいとも思い、この方法をトライアルしてみることにしました。

「企業」と「起業」
さて、日本の「企業」での就労とオーストラリアでの「起業」。地球の半球をまたぎながら、同時並行で進めているわけですが、この2つは別々の仕事として進めながらもつながっているところも多くあります。

日本の仕事は、海外の事業に関わるリサーチ、マーケティング、社内のプロジェクトやクライアント案件での設計サポートなどを行なっています。オーストラリアは、さまざまな国から移り住んでくることから、グローバルにつながりやすく、また英語圏ということもあることから情報が集まりやすい側面があります。パンデミックの折には、地の利を活かして世界中からの情報インプットを行い、私自身も次世代のオフィスのコンセプトづくりに携わっていました。こういった仕事では、日本側のチームと連携して行うことが多くなります。日本とオーストラリアの間は、時差が少ないため、ほかの海外エリア、例えばアメリカやヨーロッパに比べると非常にコミュニケーションが取りやすいです。

一方、オーストラリアでは、ゼロからのスタートアップとして、事業開始に関わる手続き(保険や各種契約)から始まり、ウェブサイト構築や名刺のデザインのような事業準備、その過程でのサービス定義やステートメントなど、事業立ち上げに関わることをしながら、オフィス、住宅、教育施設などの設計・デザインを行なっています。ほとんどがクライアントワークですが、メルボルン大学のオープンコンペで ランドスケープの提案を行なったり、パンデミックの渦中では、買い物をする体験を拡張するバーチャル上での空間設計などの実験的な取り組みも行なっていました。こういった小さい組織ならではの小回りの効いた仕事は、大きな組織では難しい側面がありますが、実験で得られた知見を組織に共有したり、フィードバックできるメリットがあります。また、私自身、小さなデザインスタジオを運営することにより、以前よりも事業視点で仕事を考えられるようになったようにも感じます。

こうして、オーストラリアに来てからは6年ほど、事業を立ち上げてから5年ほど、「企業」と「起業」をバランスしながら、あるいはジャグリングしながら(私はこの表現が好きでよく使っています)、ユニークな働き方にチャレンジしています。

次回は、オーストラリアに移住することになった経緯(最初はイタリアに移住しようと考えていた)について書きたいと思います。

image courtesy: eberhard grossgasteiger / Pexel

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