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澄んだエネルギーに魅せられて

▶︎美しさに導かれるままに

 2020年の3月に大学を卒業する目処が立ったため,2019年8月より加賀に移住することにした.こんな話をすれば,きっと「なんで?」と聞かれるだろう.それに対する答えは,「好きだから」だ.もちろん言葉を尽くせば,一定納得してくれることを話すことだってできるだろう.だけど,それ以上に好きだから移住する.ただそれだけだ.僕は加賀が好きだし,可能性だって感じる.だけど,可能性を感じるから行くというのはなんか違う.一部そういう側面はあるけど,でもそれだけでは答えになっていない.「好きだから」の方がしっくりくる.
 僕は,2018年9月から4ヶ月程,石川県加賀市に住んでいた.きっかけはたまたまで,興味を持っていたNext Commons Lab(以下NCL)の人に連絡をしたところ,連絡の担当の方が加賀支部だったというだけのことだ.別に加賀に行きたいと思ったわけでも なんでもない.
 元々はポスト資本主義に興味があり,どのような形になるのか,それはどの様に作られていくのだろうかと考えていた自分にとっては,NCLが当時掲ていた「ポスト資本主義を具現化する」というフレーズはとても魅力的なものだった.
 石川県加賀市というのは,これまで全く知らなかった街だったが,実際に足を運んでみると,なんとなく好きだと感じた.説明しようと思えば,幾らかの言葉を使って説明することもできる.それはもしかしたら僕が日本海側が好きだということからきたものかもしれないし,自然が好きだから,人が好きだから.どれだけ言葉で語り尽くしても,僕の感じた何かにジャストフィットすることはない.きっと言葉を超えたところで,この街を好きになったんだと思う.だからここでは,あえて澄んだエネルギーという言葉を使う.きっとあの瞬間,僕はそうした何かを感じ取っていた.

▶︎加賀というローカル

 加賀市がどういう街なのかという紹介は,こちらにしてあるので,ご覧いただきたい.
 それも面倒だという方もいるだろうから,要点だけ簡単に紹介する.

▶︎歴史
・繰り返し起こった一揆
・松尾芭蕉もおくのほそ道の道中で9日間滞在
・百万石という一大栄華を築く
 
▶︎文化
・九谷焼
・山中漆器
 
▶︎自然
・加賀温泉郷(山中温泉,山代温泉,片山津温泉,粟津温泉)
・鶴仙渓
・日本海
 
▶︎現状
・南加賀(石川県南部)唯一の消滅可能性自治体
日本初のブロックチェーン都市宣言
行政主導でのRPA導入
IoTの推進
自動運転社会に向けた次世代モビリティサービスに関する連携協定の締結
イノベーション推進に関する連携協定の締結
自治体新電力への取り組み

 歴史的にも自然的にも,文化的にも様々なものが残っていながら,現状は人口減少傾向にある.しかし,それをなんとかしようと行政も最新のテクノロジーを導入したりするなどと取り組んでいるという状態だ.さらに言えば,加賀に限らず,石川県や北陸地域というのは明治半ば頃には人口日本一を誇る大都市であったことや,北前船での文化交流や大陸との密貿易によって富を築いた者もいる.前近代社会においては一つの大きな拠点であった.

▶︎共同体の再構築

 物質的な豊かさは飽和し,一人当たりGDPと幸福度が乖離し,精神的な豊かさへとシフトしている今日.加賀のように歴史があり,自然や社会,人との距離感が近い場所というのは,新しい時代の大きな鍵になるのではないかと思っている.太平洋側は,大きな経済の中で重要な役割を占めるようになったからこそ,経済の「人間が発揮できる価値を最大化していく」という性質を飲まざるを得なかった.人材市場を見たらわかるように,人間がどれだけの価値を発揮できるかによって数字で評価され,その数字をより大きくするためには非合理的なこころを封じ込めてきた.しかし,人間というのはこころが備わった生き物であり,決して機械ではない.そうしてこころを封じ込めて抑圧してきた限界というのが,まさに今日の自殺や鬱病,或いは凶悪犯罪と言われる事件の数に現れているのではないだろうか.みんなほんとうはもっと感じていることがあるし,大事にしたかったはずなのに,それを大事にさせてくれない経済システムがあり,そういう社会がある.その限界からこれまでへのアンチテーゼとして,幸福度や精神的な豊かさが語られ,地方が注目されているように思う.
 対して日本海側というのは,裏日本と呼ばれるような地域であり,経済においては重視されてこなかった.冬になれば雪が降り,孤立してしまう気候的な理由もあるだろうし,山が多い故にアクセスが大変だったこともあるだろう.このように裏日本と呼ばれてきたこの地域だからこそ,前近代的な文脈が掘り起こしやすいと思っている.その文脈とは,歴史や文化,精神性や伝承,地理など様々なものを含んでいる.さらに,この地域には,失われてきた共同体をも再構築できる可能性を秘めているようにも思う.共同体というのは,必ずしも人間同士の関係性におけるものではなく,人間,社会,自然を結ぶ関係性を意味する.これらの関係性や掘り起こされてきた文脈の中で,何かを考え学ぶ以外にも,感じることもたくさんあるだろう.それこそが感性から入る人間の豊かさであり,もっとも豊かに生きるための入り口になるはずだ.

▶︎文脈を掘り起こした自律分散的なニューローカルの創出へ

 僕自身がこれから加賀に移住して,どのようなことをしていくのか.それは一定頭の中にあるし,これから形にしていく予定だ.しかし,正直な話これから何を仕掛けるかはなんでもよくて,最終的に前述したような文脈を掘り起こして,その文脈に乗った形で現在にいるか否かと,人間,社会,自然のそれぞれが相互に関連しあった形での共同体の再構築ができているかという点が重要になる.
 国家政策としての地方創生は,都市一極化集中を避けるために行なっているというよりは,国家の経済を,もう少し穿った見方をするならば都市の経済の維持発展のために行われているような印象だ.2060年の実質GDP成長率を維持し,人口減少を食い止める.それこそが大きな目的なのだ.消費する都市のために,生産する地方が搾取されるというのは,誰にとっても幸せではないと思う.都市に依存しない形での自律分散的なあり方を模索する必要があるだろう.
 これまでの文脈,歴史や文化や伝承などを掘り起こし,それらに敬意を払いながら,その線上に未来を築いていく.それこそがほんとうのローカルの作り方なのではないだろうかと想い描いている.事業そのものが風土記のような存在になっていくのだ.それこそがほんとうの意味でのまちづくりであり,地域活性であり,僕はそれをニューローカルの創出と呼んでいる.

▶︎最後に

 古きに戻るでもなく,古きの上に未来を重ねる.それは古く懐かしくもありながら,新しい未来でもある.そんな新しくも懐かしい未来を創るために,拠点を加賀に移す.
 こんなことに共感してくれる人がいれば,何か一緒にできたら嬉しいし,そんな人はぜひ連絡してもらえるともっと嬉しい.実際に連絡くれた人もいるし,いろいろ相談させてもらってる人もいる.本当にありがとうございます.
 もちろん共感できない人もいるだろうけど,陰ながら,少しだけ応援してもらえると嬉しいなと思ってる.
 まあ,あれこれ言ったけど,こんな小難しい話がなくとも,温泉は心地よいし,自然はとても綺麗で,ご飯もお酒も美味しいのでぜひ遊びに来てください.きっといいリフレッシュにもなるはず.その時は,全力で案内します.

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