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町会からの要望と文京区の回答<全文掲載>

前回のnoteで、小日向台町小学校改築問題についての概要と問題点についてまとめました。

今回は、小日向台町小学校改築問題に対する現状の区の見解についてまとめます。小日向台町小学校が所在し、学区域でもある小日向台町町会が区に対する要望書を提出しました。その要望書に対するメールでの回答文が現状の区の姿勢だと捉えることができます。

前回のnoteにもPDFは掲載しましたが、ここはあえて全文を掲載します。長いので編集した概要も記載しますが、できればぜひ全文を読んでください。住民が考える問題点と要望、それに対する区の“ゼロ回答”をリアルに知ってほしいと思います。


小日向台町町会からの意見および要望 全文

2021年に小日向台町小学校の改築について改築基本構想委員会(以下、改築検討委員会)が設置されましたが、2022年11月の6回目の会議で、突如文京区より工期が8年であることが示されました。

さらに、2023年11月に、これまで小学校の敷地内に仮校舎を建てる「自校方式」で行われる根拠のひとつになっていた「財務省跡地は法的に使えない」ことが、実は法的に問題がなく使えることが判明しています。

これらを受けて、小日向台町町会は計画に問題点が多々あると判断し、区への意見および要望を2023年11月27日に提出しています。

(前文略)
以下の問題点が判明致しましたので、ご検討の上、早急にご回答お願い致します。

1 ご返信いただいたタイミング(設計事業者選定後)での住民説明会は遅すぎる点

まず、ご返信いただいた住民説明会は改築計画という行政計画を適法に行うために法的に要求されるパブリックコメントを得ることが目的であり、計画の策定に向けた民意 を吸い上げるための機会としての意味を持たない。
そして、計画の策定に向けた民意の吸い上げの為の住民説明会は、計画が固まるまで になされなければ意味がないので、すでに業者の選定に向けた手続きが始まっている現 状においては、可及的速やかに、「現状を」「一部の代表者ではなく、広く説明を希望す る区民に対して」の説明会が開かれるべきである。
そこで、当町会としては、このような説明会を速やかに開催することを、学務課に対して強く要望いたします。

2 改築基本構想委員会の現行改築方針への同意は、同意の前提となる重要な事実についての錯誤に基づくものであり、取消しうべきものであるので、あらためて、正しい情報を 委員会及び区民に説明した後で改めて同意を得なければならない、という点

まず、「財務省跡地の仮校舎用地としての利用が法的に可能であることを知らされず、 財務省跡地を仮校舎用地として利用することが不可能であるとの理解の下に行われた」 ものであるが、これは、現在進行中の「小日向台町小学校の校庭および“財務省跡地以外の”用地を利用して仮校舎を建てる」改築計画に、改築基本構想委員会が同意をするか否 かの判断の前提となる重要な事実である。
そして、国有財産の利用に関する法令によれば、国有財産である当該財務省跡地を特 定の用途として利用する計画が先行していたとしても、その土地を国との協議により一定期間転貸することは可能である。このことは、当町会役員による、当該財務省跡地を 管轄する関東財務局担当者への問合せによって、11月24日までに明らかになっている。
当町会役員はまた、このような財務省跡地を利用した仮校舎設置の可能性を、令和5年11月22日および11月23日に学務課(古田氏)・介護保険課に問い合わせたが、時点において、学務課にも(教育長にも)、介護保険課にも、この認識はなかった。(なお、介護保険課はその場で関連法令を調べた結果、町会役員の指摘通り、財務省跡地を仮校 舎として利用することが可能であることを認めた)
このように文京区自体に「財務省跡地を仮校舎として利用することが可能である」との認識を欠いていたにもかかわらず、また、その結果、改築基本構想委員会に対してそ の正しい認識が与えられる機会が一切なかったにもかかわらず、「財務省跡地を仮校舎 として利用することは不可能であること」を前提とする、改築計画への委員会の同意に は、意思決定における重要な事実について錯誤がある。
したがって、委員会の当該同意は取消しうべきものであるから、委員会を構成する各 委員に上記事実につき正しい説明をし直した上で、あらためて「現在の校庭と“財務省 跡地以外の”用地を探して仮校舎を建てることにより長期の工期(1案によれば8年)が 見込まれる」現行の改築計画に同意するか、または現行プランには同意せず、「仮校舎(の一部)を財務省跡地に建てることにもっと短期の工期で完了する可能性の高い」改築計 画を求めるか、の意思形成を行うべきであると考える。

以上の問題点に鑑み、区に対して以下の行動を求めます。

1)区は、まずは、特養事業者と小学校改築の業者選定手続きを中止すること。12 月 開催予定の選定委員会は延期すること。
2)また、区は、早急に、改築基本構想委員会の各委員に情報提供を行うこと。
3)加えて、このような事態となったことの重大性に鑑み、区民、特に小日向台町小 学校改築に関係する周辺地区の住民に対し、一日も早く、これまでの経緯と今後取り得 る選択肢について説明会を開催すること。
4)2)の情報提供と3)の説明会を経た後に、あらためて改築基本構想委員会の意 思形成を行なうものとすること。

以上につき、早急に、書面にて、ご回答ください。

小日向台町町会からの意見および要望<概要>

すこし長いので、まとめます。要望書の主な内容は以下です。

<計画の問題点>
1.住民説明会が設計事業者決定後では遅すぎる。
2.財務省跡地が使えることが法的に問題がないことが判明する前の同意は、意思決定における重要な事実の認識が異なる状態のものである。
(重要な事実の認識を一致させた上で、改めて意思決定をすべき)

<区に対する要望>
1.小学校改築の業者手続き選定の中止。
2.改築検討委員会の委員に正しい情報提供を行うこと。
3.区民や周辺住民に、これまでの経緯と今後の選択肢についての説明会を行うこと。
4.改めて改築検討委員会の意思形成を行うこと。

文京区からの回答メール 全文

小日向台町町会からの意見および要望について、文京区からはメールで回答がありました。町会が仮校舎建設を希望している「財務省跡地」は、現在、特別養護老人ホーム(特養)などが建設される計画になっています。メールの全文を掲載します。

(前文略)
令和5年11月27日及び12月1日にいただいた標記に関する意見及び要望について、以下のとおり回答いたします。

1 特別養護老人ホーム等と仮校舎の併設について

国有地の敷地面積は約7,100㎡あるものの、「土砂災害警戒区域(一部は土砂災害特別警戒区域)」に指定されている傾斜地(崖地)や位置指定道路などが敷地に含まれており、建設地として活用できる平地の面積としては約4,500㎡程度と認識しています。
本計画では、特養、地域密着型サービスと育成室を複合した施設とすることとしており、建築基準法等の法令を始め、様々な条例や要綱への適合、建物の防火や避難等の安全面の確保、施設の運営時間や管理等の違いによる動線の確保、などの対応等が必要なことから、概算の各施設の必要面積の積み上げ計算の延床面積以上に、複合施設としての建物規模は大きくなります。
そのため、現在計画している特養等の面積を確保したうえで、仮校舎建設に必要となる面積を確保することは困難であると考えております。

2 「小日向台町小学校等改築基本構想検討委員会」の意思決定について

令和5年12月5日付け「小日向台町小学校改築に係る小日向二丁目国有地に関する区の見解について」でお示ししたとおり、制度的には国有地の用途として仮校舎を整備することは可能であると認識しております。ただし、先に述べたとおり、特養等と併設し、仮校舎建設に必要となる面積を確保することは困難であり、検討委員会において、実現困難な国有地の活用を議題としては掲げておりません。
また、特養整備を行う前の一時貸付による仮校舎としての暫定利用の可能性に関しては、特養のスケジュール上難しい旨、検討委員会の質疑の中で回答しております。
これらを踏まえ、「文京区立小日向台町小学校等改築基本構想検討委員会報告書」を取りまとめており、改築整備の方針を取り消すことは考えておりません。

3 事業者選定について

上記1でお示ししたとおり、特養等と仮校舎の併設は困難であることから、小日向台町小学校等の改築及び特養等の整備について、 特養選定事業者に対し、 仮校舎の設計等に関する追加条件を付与することや、事業者選定を延期及び中止する考えはありません。
なお、 小日向台町小学校等の改築事業者選定においては、工事手法の工夫による工期の短縮、及び期間中の教育環境や周辺地域への配慮等について、事業者へ技術提案するように求めております。
また、小日向台町小学校等の改築工事の配置プラン、工期、工事の流れなどがお示しできる段階で、改築計画に関する説明会を実施する予定です。可能な限り早いタイミングでの開催を検討してまいります。

4 国有財産の定期借地における転貸について

本件国有地の「転貸」による活用については、12 月1日に改めて国に確認を取り、以下のとおり、回答いただいております。

○国からの回答(関東財務局東京財務事務所に確認)
国有財産の定期借地における転貸については、法的には整理されているものではなく、財務省通達「(令和元年9月 20日付財理第3207号)定期借地権を設定した貸付について(以下「定借通達」という。)」記7(1)に記載のとおり原則認められておりません。
転貸について認められる例は、同通達記7(1)①②に限定的に列挙したものとなります。補足しますと、本国有地における施設整備は、国と区との契約ではなく、区の公募により選定された事業者が、国の審査を経て、国と事業者にて直接、定期借地権設定契約を締結し、特養等の施設整備をする、公共随意契約によるものであり、二段階一般競争入札ではありません。(令和元年9月 20日財理第3206号通達第4-3-(1))
今回のような特養整備事業者である社会福祉法人が、国有地の一部を区に貸し付ける、「貸付財産の転貸」については、定借通達では、原則認めないものであります。例外として掲げる「特別の事情があるものとして別に定める場合」について、限定的な列挙として地方公共団体が定期借地を受けて、福祉施設、認定こども園又は医療施設を経営する事業者へ転貸する場合と二段階一般競争入札により選定された貸付相手方が転貸する場合について定められています。本件については、そのいずれにも該当しないと認識しております。
なお、(昭和40年4月1日付大蔵省訓令第2号)普通財産取扱規則第30条第4項ただし書後段の規定による「財務大臣の承認を得た場合」として、転貸にかかる承認を得ることも規定されておりますが、この規定は、現行法令通達で想定されていない場合に財務大臣の承認を得ることを定めているものであり、仮定の話では国は検討を行えず、 区として現在の利用計画を根本的に再検討できない状況において、この規定を前提に転貸について国に協議することはできません。
「転貸」制度の適用の可否に関わらず、現在計画している特養等の面積を確保した上で、仮校舎建設に必要となる面積を確保することは困難であると考えております。

以上1から4を踏まえ、令和5年 11 月 27 日付「小日向台町小学校の改築に関する意見及び要望」における以下4点の意見・要望に関して、以下のとおり回答します。

1)区は、まずは、特養事業者と小学校改築の業者選定手続きを中止すること。12 月開催予定の選定委員会は延期すること。
(回答) 3で述べておりますとおり、小日向台町小学校等の改築及び特養等の整備について、両事業者選定を延期及び中止することは考えておりません。

2)また、区は、早急に、改築基本構想委員会の各委員に情報提供を行うこと。
(回答)2で述べておりますとおり、改築整備の方針を取り消す考えはありませんが、改築基本構想検討委員会の委員も含め、改築に関する情報については適宜お伝えしてまいります。

3)加えて、このような事態となったことの重大性に鑑み、区民、特に小日向台町小学校改築に関係する周辺地区の住民に対し、一日も早く、これまでの経緯と今後取り得る選択肢について説明会を開催すること。
(回答) 3で述べておりますとおり、小日向台町小学校等の改築工事の配置プラン、工期、工事の流れなどがお示しできる段階で、改築計画に関する説明会を実施する予定です。可能な限り早いタイミングでの開催を検討してまいります。

4)2)の情報提供と3)の説明会を経た後に、あらためて改築基本構想委員会の意思形成を行なうものとすること。
(回答) 2で述べておりますとおり、改築整備の方針を取り消す考えはないため、新たな合意形成を図ることは考えておりません。

【問合せ先】
教育推進部学務課施設担当 電話 03-5803-1296
企画政策部企画課 電話 03-5803-1126
福祉部介護保険課高齢者施設担当 電話 03-5803-1208


文京区からの回答メール<概要>

文京区からの回答は、端的に言うと、特養の建設が予定されていて、その計画を変えることはできないからすべてできない、というものでした。以下に要望に対する回答をまとめます。

1.小学校改築の業者手続き選定の中止。

特別養護老人ホームと仮校舎の併設は、面積的に難しい。そのため、事業者選定を延期及び中止する考えはない。
(なぜ面積的に併設が難しいのか、明確な根拠は示されていない。現状の計画への言及はあるものの、その計画を見直し、併設を実現するための工夫をしようとする考えもない。)

2.改築検討委員会の委員に正しい情報提供を行うこと。

検討委員会では、実現できない財務省跡地の活用を議題としていない。仮校舎としての利用の可能性については、特養建設のスケジュール上難しい。改築整備の方針を取り消すことは考えていない。
(仮校舎と併設すると特養建設がなぜ遅れるのか、根拠は示されていない。)

3.区民や周辺住民に、これまでの経緯と今後の選択肢についての説明会を行うこと。

改築工事の配置プラン、工期、工事の流れなどが決定した段階で、改築計画に関する説明会を実施する予定。
(すべて決まった後、変更不可能な既成事実の説明会を開催する模様。)

4.改めて改築検討委員会の意思形成を行うこと。

改築整備の方針を取り消す考えはないため、新たな合意形成を図ることは考えていない。
(財務省跡地が使えない前提で進んでいた話は、使えるようになると「それはまったく話が違う」となるのが普通の感性では?)

この回答で納得できるか?

文京区からの回答は、いろいろな言い訳が書いてあってやたら長いのですが、要するに

・財務省跡地は特養を作ることが決まっている
・法的に使えることが後からわかったけど、一度決まったものを差し戻すことはしない
・改築委員会での意思形成も、改めて行うことはしない
・とにかくできない

というものでした。

一度決まったものを覆すのは、いろいろなことを検討し直したり調整し直したりしなくてはならないから、嫌だ。

と、お役所あるあるのことを言っているようにしか聞こえません。

「決まったもの」と言っても、財務省跡地が法的に使えない!と言われていた2023年11月以前と、使えることがわかった以降では、

「話が違うやないかい!」

と突っ込みたくなります。

ここまで来るのには、区としても多大なる時間と人的コストを費やし、定められたステップどおりに、誠実に、仕事を重ねてきたのだと思います。戻りたくない気持ちもわからないわけではありません。しかしそれは、住民や保護者といったステークホルダーの声を真摯に聞いて積み上げたものなのでしょうか?

さらに、個人的にnote筆者が一番納得できないのが、

「できない」から始まるのはなぜ?
住民や保護者が求めていることを、実現できるように考えないのはなぜ?

ということです。区は前例通り、決まった通り、に進めることだけを考えて、なぜ実現できる方法を探らないのでしょう?さっぱりわかりません。

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