台風のあと

台風が過ぎ去った次の日は天気が良い。
台風の勢力はとても強く、車が飛ぶくらいだとニュースが言っている。翌日は30度を超える猛暑日になるらしい。
私は家に帰る途中だった。駅のスーパーでお惣菜を多めに買った。家に着いたら、雨戸を全部閉めなくちゃ。

昔、まだおばあちゃんが生きていた頃、雨戸を閉めろ。外に出るな。とよく言われた事を思い出した。

台風が近づいているね。
母とおばあちゃんが、おかってで話している。畑をやっているおばあちゃんは、ビニールハウスが飛ばないようにしたり、畑の道具を片付けたり、畑を守る準備で忙しかった。

もう来るぞ。鳥も低く飛んでらぁ。と言いながら、おばあちゃんは家へと向かった。小学生だった私は、お使いを頼まれたり、雨戸を締める手伝いをして台風に備えた。
いつまでたっても、ちょっくらじゃない母に、手伝えよ!と怒鳴る声が聞こえる。やってるじゃない!っと母が答える。また、はじまったよ。と姉がぼやいた。

この二人が何かやろうとすると、決まってケンカになった。台風が過ぎ去っても口も聞かない。なんて事も珍しくなかった。暗雲が漂う空気の中、私達は、晩御飯を食べた。おばあちゃんは、母にしかわからない事を私に聞き、母は黙ってご飯を食べた。姉は堪らず自分の部屋に行き、私はいつも通りご飯を食べ、テレビを見た。

雨も風も強くなり、いよいよ本番。
唸るような風の音も、叩きつけるような雨の音も、非日常的に感じてワクワクしてしまう。
怖がりのおばあちゃんは、吹っ飛ばされたら大変だ。怖くて肝いれちゃうわ。おっかねーな。と言っていた。

私と姉が、外の様子を気にしていると、絶対に扉を開けたら駄目だからな。扉を開けたら死ぬんだ。昔あそこのじぃさんも台風の時に外を見に行って死んだんだ。だから、どんなに気になっても、見に行ったらいけない。と、おばあちゃんにきつく言われた。

私が、雨戸の向こうを気にしていると、姉が雨戸を開け始めた。私は驚いて、開けたら駄目って言われたじゃん。と姉を止めた。姉は危険をかえりみる事なく、雨戸と窓を開け、わぁーすごいね。と言って雨戸を閉めた。肌で感じる台風はやっぱり怖かったけど、私は死ななかった。

こんなに雨も風も強いんだから、明日は学校休みになる。と宿題をしないで眠ると、大変な事になった。翌朝、見事に晴れ渡り、良いお天気の中、学校へ向かった。私は休み時間を使い慌てて宿題をやった。

そして今、私はおばあちゃんの言葉を思い出しながら、1人で雨戸閉め、お惣菜を食べている。鳥が低く飛んでるかどうかは知らないが、夜8時過ぎくらいに台風が近づいて来るらしい。

ガタンと、すごい音で目を覚ます。いつのまに寝ていたのか気づくと雨は強くなり、家が飛んでいくんじゃないか。と思うくらいの風と、借金とりでも来たんじゃないか。くらいガタガタと扉が鳴った。堪らず怖いと叫んだ。これで台風じゃなければ、心霊現象だ。

私は、外の様子が気になり、雨戸を開けてみたくなったが、開けると死ぬ。と言う、おばあちゃんの言葉を思い出し開けなかった。姉なら絶対に開けていただろう。と思うと可笑しかった。

明日はきっと天気が良い。
昨日の雨と肌寒さが信じられないくらいに暑くなる。と天気予報も言っていた。

私は、ガタガタと揺れる家の音を聞きながら、布団を被り眠りについた。



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