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詩|爪

ふつうの幸せなら
もう一通り持ってるの
分けられるものでもないし
誰にもあげないですけど

帰り道
春の雨がわたしを湿らせるので
わざとらしく眉根を寄せた
あくまで嗜好のひとつとして
不安定が好き なんですよ だから
このヒールも右だけわざと削って

昨日買ったいちごはあたり
ナイフで切ったら芯まで赤いの
タルトから溢れるぐらいに
カスタードクリームを盛って
この可愛い断面を晒す

お腹いっぱいだけど
もう少し食べたい
デセールってそういうものでしょ
冷蔵庫でほどよく凍えたものを
舌の上で溶かす
そういう遊びなら
わたしとの方がきっと楽しい
銀のフォークは磨いてあります


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