知ってる!環境のこと(第55話)

⁂データや内容は、当時のものですので、ご理解ください。

こんにちは、みなさんいかがお過ごしでしょうか?12月4日のタイの環境デーに合わせ、その前日、チェンマイラーチャパット大学で行われた環境イベントの中で、足の大きさを測って、自分自身の生活を考えるという面白い試みが紹介されていました。その名もエコロジカルフットプリント(以下EP)、今回はこのEPをご紹介します。
 
エコロジカルフットプリントとは
人間の活動により消費される資源量を分析・評価する手法のひとつです。食料や住宅、工業製品など、私達が生活するために必要なものを生産したり、廃棄物を吸収・浄化するために必要な土地や水域をその表面積に換算して数値化し、自身の生活が持続可能であるかを確認します。多くの資源を消費しているものほど、フットプリント(足跡)は大きくなります。これは、人間が地球環境に及ぼす影響の大きさであり、「生態系を踏みつけた足跡(orその大きさ)」であるとして、このような名前がつけられたようです。
 
その計算方法とは?
まず、農地や牧草地、森林、生産能力を阻害する土地(建物や道路建設の敷地など)、海洋・淡水域等、人間の活動で必要とする土地の表面積を合計します。世界共通の指標となるよう、グローバルヘクタール(gha)という単位が使われます。また、各土地には特別の計算式があり、例えば、水田は、世界の平均的な土地の4.4倍の生産能力があるとして1haを4.4ghaとして計算します。次に、その面積を地域内の人口で割って、1人あたりのEP (gha/人)を求めて指標化し、世界の一人当たりの生物生産力のある土地の指標と比べて、活動の環境負荷を分析します。
 
ただ、実際には様々な要素を加味しなければならず、個人で計算するのはとても大変です。既に完成されたプログラムがあるので、是非、挑戦してみて下さい。以下に、クイズ形式でEPを計算できるサイトを挙げてみました。
 
NPO法人 エコロジカル・フットプリント・ジャパン
https://ecofoot.jp/
 
 
現状は?
2008年10月29日、WWF(世界自然保護基金)が発表した『Living Planet Report:生きている地球レポート』2008年度版では、2005年現在、私たちの生活のEP が2.7 ghaである一方、世界の1人当たりの生物生産力のある土地は、2.1 ghaしかなく、自然の再生能力を超えた消費を改善しなければ、世界の未来は暗いと警告しています。また、世界一の消費大国はアラブ首長国連邦で9.5 gha、二位はアメリカの9.4 ghaとなっています。日本のEPは、4.9 ghaで勿論アジアトップです。仮に世界の人々が、日本人と同じような生活をすれば、今の地球が1.8個分も必要となります。現在地球が何とか持ち堪えているのは、未来の預金を食いつぶしているからです。タイは、2.1 gha でちょうど世界の生物生産能力の値と同じですが、将来は決して安泰でないことは、ご想像いただけるでしょう。
 
タイでの取り組み
世界の基準と照らし合わせることで、自らの生産活動が環境にどれくらい負荷をかけているのかが、一目でわかるため、自治体や企業、NGOや家庭、学校での環境教育など、各方面で利用されていますが、タイでの取り組みをご紹介しましょう。
 
2008年、British Council、在タイ英国大使館、タイ環境振興局、バンコク都庁等が中心となり、エコロジカル・フットプリントコンテストが行われました。これは、学校の資源利用を6つの項目(学校舎のサイズ、水、エネルギー、ゴミ、通学、食事)から分析してEP を計算し、その値を減らすためのプロジェクトを立ち上げるというものです。締め切りの6月末までに、全国の中学、高校が271校もエントリーしました。作業を進める過程で、子供達に、自分たちの学校が、環境にどれだけ負荷をかけているのか?どのようにすればその負荷を減らせるのか?を考えてもらうことが、このプロジェクトの趣旨です。最終選考に残った20校には、12月4日の授賞式で、プロジェクト費用30万バーツ(上限)が授与される予定です。北部タイからは、プリンスロイヤルウィタヤライ校(チェンマイ県)とトゥーンウィタヤー校(ラムパーン県)が選ばれています。
 
環境技術よりも…
2008年度版のWWFのレポートを見ると、実は環境先進国とされるヨーロッパの国々のEP は、ほとんどが4点台と高い数字となっています。勿論、文化や宗教、地理的条件等の違いがあり、この数値だけをもって彼らを責めることは出来ませんが(EPの計算自体が不完全で不正確という批判もある)、環境意識や技術だけでは地球を救えないのかもしれません。私たち1人1人の課題ですが、自らの生活そのものを見直す時期に来ているのかもしれません。

CHAOちゃ~お ちょっとディープな北タイ情報誌(毎月2回10・25日発行)2008年12月25日第137号掲載


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