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No.24ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」

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2017年1月28日(旧正月大晦日)

僕は、ベトナム中部のダナン国際空港にいた。

(やっと着いた…)

ホーチミンからダナンは、飛行機で1時間半程度だが、

利用したLCCが2時間近く遅延したため、

到着が深夜になってしまった。

イェンは、数日前から休暇を取り、

先に里帰りをしている。

空港にバイクで迎えに来てくれる事になっていた。

(出口付近にいるって言ってたけど…)

遅延する旨は伝えていたのだが、

長い時間空港で待ってもらっていたら申し訳ないと、

周囲をキョロキョロ見回す。

「アンコイ!!」

後ろから声がして振り向くと、

イェンがいた。

アンコイとは、最近になって出来た僕の呼び名だ。

アン=男の人 コイ=コウイチの短縮系

僕の名前が呼びづらいようで、様々検討した結果、

アンコイに落ち着いた。

「Hi Sorry. Did you wait for long time?

(ごめんよ。待ったかい?)

「No. Little bit. Anyway we should go.

(いいえ、少しだけよ、とにかく行かないと)」

「Go where? I think I need to check in to Hotel.

(どこへ行くの?ホテルにチェックインしなきゃいけないんだけど)

「My home!!(私の家よ!!)」

「From now!?(今から!?)」

テト前が忙しかった事もあり、

いつイェンの家に行くのか詳しく聞いていなかった。

勝手に、明日新年の挨拶に行くものだと思っていた。

(今から!?夜も遅いし、心の準備も出来てないんだけど…)

とは言え、イェンの両親が待っているとの事だったので、

イェンのバイクに乗って、家に向かう。

(悩んでも仕方ない!!なるようになれだ!!)

唯一の取り柄である、ポジティブシンキングも、

この時は行き過ぎて、少し捨て鉢になっていた。

やがて、イェンの家に着く。

(日本人は、ベトナムのご家庭に行くと歓迎されるって言うし、

まあ、大丈夫だろ!!)

しかし、この噂話を信じて楽観視していた事を

後悔するのだが、僕はまだ知らない。

イェンの自宅に到着し、イェンが先に家の中に入って行く。

その後に、ドアから顔と手を出して、

手招きをする。

僕は、中に入りながら、

「シンチャオ」

と明るく声を出した。

当然、「シンチャオ」と明るい挨拶が

帰って来る事を予想していたのだが、

「………」

全くの無反応と、重苦しい空気が漂っている。

(え!?想像していたのと違うんですが!?)

「Come here!!(こっちに来て!!)」

イェンに促され、テーブルを挟んで、

お母さん、そしてお兄さんと向かい合った。

「アンコイ This is my mother and my older brother and his wife.」

(こちらが私の母と、兄、兄の奥さんよ)」

「シンチャオNice to meet you.」

と、恐る恐る手を出す。

「………」

無言&無表情のまま、握手を交わす。

(全然笑ってくれないんですけど…)

不意に、お母さんが、イェンに何か言う。

「They say that you should have dinner first.

(晩御飯を先に食べなさいって言ってるわ)」

(この空気の中で!?)

心の中では全力でツッコミを入れているが、

表情は笑顔を崩さない。

そうこうしている内に、

お兄さんの奥さんと、イェンが手際よく準備を始める。

(おいおい、この地獄の様な空気の中に、

俺を一人にしないでくれ…)

「Ah...My name is Koichi. 

イェン always help me so much.

(僕の名前は、コウイチです。

イェンは、いつも僕を助けてくれてます。)」

ふと、自己紹介を忘れていた事に気付き、

名前を名乗り、距離を詰めるべく

ジャブを入れてみた。

「???Ah...I can not speak English.イェン!!」

(お兄さんも英語を話せないのかい!!)

お兄さんが、イェンを通訳に呼ぶ。

「What did you say?

(何を言ったの?)」

と聞くので、先ほどと同じ事を

伝えると、顔を赤くしながら、

イェンが通訳をする。

自分の彼女を褒めるのを、

本人が通訳するという、

何とも恥ずかしい形になってしまった。

お兄さんが何か言う。

「He said anyway you should have dinner.

(とにかく晩御飯を食べなさいって言ってるわ)」

「Ok Ok!」

僕は、慌てて箸を持つと、

目の前に並べられた

ベトナムの正月料理に箸を付けていく。

(どれも美味しいんだけど、

こんな空気だからか、美味しく感じないな…)

そして、箸を付けているのが僕だけなのに気付いた。

「You don't eat?(食べないの?)」

「We had dinner before.(もう食べたわ)」

(一人で食べるのかよ!!)

と、また一つツッコミを入れたが、

遅くなった僕が悪いので、

「ンゴン!ンゴン!(美味しい!美味しい!)」

と言いながら、箸を進める。

お兄さんが、缶ビールのお酌をして来た。

「シンカモン」

そう言いながら、お酌を受ける。

お兄さんもグラスを持って、

乾杯をした。

やっと少しだけ笑顔を見せてくれ、

救われた想いだった。

結局その日は、夜も遅いという事で、

晩御飯を食べて、すぐに

ホテルに向かった。

「Tomorrow plz come here 9:00AM.

Don't be late!

(明日は、9:00AMに来てね。遅れないで!)」

イェンに釘を刺された。

「疲れた…。たった1時間位だったのに、

5時間位に感じた…。誰だよ、

日本人は歓迎してもらえるって言ったの…。」

そんな独り言を呟きながらシャワーを浴び、

早めにベッドに入った。

(明日、どんな展開になるんだろう…)

想いを巡らしていたが、

いつの間にか深い眠りに付いていた。


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