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旅36-ギリシアのストによる中休み

日本ではなかなかない“スト”。つまり、“ストライキ”。ギリシアでもそうなのだが、“ストライク!”と皆は言う。昨今のギリシアは少々不穏。入国時はバスのストで国境越え不可だったので電車移動だった。そして出国。イタリアのバーリへ抜けるフェリーチケットを購入。しかし、僕を待っていたのは海の波でなく、ストの波だった。 (アイネイアスゆかりの地を巡る旅の話は今回お休みです。)

23日の昼、ホテルのご主人にケルキラシティまで送ってもらった。バックパックを海岸沿いのホテルに預かってもらい、レンタカー。初めての、左ハンドル、右側通行、外国での運転。それも1人だから、ちょっと手に汗握るチャレンジ。反時計回りにコルフ島北部を一周。そしてサンセットは西の海岸へ。

窓を開けて走る爽快感。初運転の緊張感。島の最東北部カシオピまで約2.5時間。ここまで来ると、向こう岸にアルバニアのサランダが見える。

くどいけれど、アイネイアスゆかりのプトロトウムはあの辺りか。

20時に車を返し、22:30発のフェリー乗り場へ1時間半前に着く。息が白い海べり、釣り人に船が来るポート(4番)を確認。30分前になっても現れない。乗客もいない。大きな船なのに・・・。来たのは車に乗ったおじさん2人。
「ストライク(ストライキ)だ!、フェリーは来ない。」嘘だと思った。だったらなぜチケットを発券するんだ。しかしどうもそのようである。教えてもらった、戸締り間近の安ホテルを見つけチェックイン。寒さと疲れと…でカチンとくるが、もう22時過ぎ、代理店も閉店。このホテル、€25でボロボロ。暖房なし、シーツ汚い、暗い。それもシャンプーしても泡がたたない。洗顔フォームはなおさら。なぜ? 歯磨きしようとして理由判明。凄まじいまでの鉄の味が。この怒りを何処に? もらった『東京タワー』を開き、気分転換。

翌日、代理店に行くと涼しい顔で「ストだよスト~」。はあ?昨日からちょうどストになったらしい。まさに、ストライク! 3日前にチケットを購入したときには運航予定だったようだ。払戻しもタライ回し。でも、昼過ぎ、港傍の代理店で状況急変。今晩のイタリア・ブリンディシ行きがあるという。すぐさま購入。夜中0:30発。荷物はホテルに9:30まで預かってもらうことに。昼間。行くところがない。寒いし。移動してはボーっとする。

19:00、教えられたようにフェリー会社へTAXを払いに行くと、「現在ストの会議中だからまだ受け取れない」と言われる。また別会社で、か? いい加減にしろよ。客はどうでもいいのか?受付のおばちゃんに励まされる。「99%大丈夫だから。21:00にわかるから2時間後来てね。」夕食を食べて2時間後にオフィスへ戻る。「まだよ・・・。」なお、ストの会議中らしい。おばちゃんも機嫌が悪くなっている。ホテルから荷物を持ってオフィスで待たしてもらうことにした。今日ダメなら今度こそ€50以上のホテルに入らねばならない。電話がひっきりなしに鳴る。でも何も状況がわからない。「どう?、おばちゃん。」おばちゃんは作り笑顔で「99%大丈夫だから待ってなさい。」『99%』かあ。さっきの21:00会議終了予告は見事に外れている。21:40、疲労で眠りかけていた僕を起こしておばちゃんが言う。「起きなさ~い? スト、終わったわよ。TAX受け取るわよ。」“Strike is over”。“Love is over”より趣のある言葉(?)。「よかった~。日本では『果報は寝て待て』って言うんだよ。」
港脇のカフェへ。集合時間までCL・マンU vs. インテル観戦。今回の乗船口は最奥のポート。約2km歩く。そこの待合所へ。僕一人。暖房なし。警官だけ。もうすぐ日が変わろうとしている。チケットを見た。「船名は『PENELOPE(ぺネロぺ)』かあ~」

ぺネロぺはトロイア戦争ギリシア側の知将オデュッセウスの妻だ。伝説では、トロイア戦争10年間、国王帰還までそれから10年間、計20年間、夫の帰りを待ち続けたことから“貞淑な妻”の代名詞だ。国王オデュッセウスのイタキ島はケルキラからすぐ南にある島だ。いい名前の船だなあ。僕を待ってくれたような気がするし。しかし、全然船が来ない。底冷えしてシュラフを被る。なんと、船が来たのは2:20a.m.。ギリギリまで会議してたせいか?『ぺネロぺ』に待たされるなんて、なかなか体験できるこっちゃない。

待合所から船までの2kmは大型バスで移動。もちろん乗客は僕一人。バスのおじさんも僕を送るためだけに待っていたのだ。「俺、家がすぐそこだからさ。まあいいか~ってとこだね。」この状況で明るいなあ。僕も怒ってばかりはいられない。まあ、もう出国できることが確定して気持ちは修まっていたけど。
対岸から来たこの船、すでに乗っていた乗客はみんな寝ている。国内線より狭い船だが、人が少ないのでゆっくり横になれる。またもシュラフを取り出す僕。

スト。
これは味わってみないと実感できないものがある。もちろん、それ以上に交渉する人や社員にとっても大問題だ。でもまあ、何とか出国できた。次はイタリアである。

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