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旅23-ティラナの猫

連日の、モンテネグロからの乗り継ぎとティラナからの長時間移動。帰国が迫ってきているとはいえ、なかなかハードな日程。それも、ティラナにもう一度戻らなければならないわけだが、戻ることが苦でないのは癒される存在がいるからかもしれない。

ティラナの宿は“Tirana Backpackers”。アットホームな安宿。部屋は2段ベッド2つ&1段ベッドの5-bed room。先客が1段を使用。僕は2段ベッドの下を選ぶ。残りの2段ベッドの上は…猫が使用。気づかなかった。布団の上に丸くなって寝ていたのだ、ずっと。

宿の兄ちゃんに撫でられるとアクビ。その場を動く気配なし。兄ちゃんは「ピースフルだからさ~!」と言う。名前を聞いたけど忘れてしまった。なんだっけ?ある3文字の名前を呼ぶと、アクビをしつつ「フヒャァ」と言った。ということで、猫の名前を勝手に○○○に決めた。

チョコチョコ撫でてみる。背中を撫でても動かない。おとなしい。トキドキ向きを変えるが、体勢は変わらない。少々イビキが聞こえる。でも、毛繕いは丁寧にやる。綺麗にして誰に見せたいんだ、おまえ? 頭や顔を撫でる。僕の指をペロペロ舐めてきた。ザラザラの小さな舌。撫でて舐められて。そのうち軽く爪をたて、来たな!アマ噛み!?痛テテテテ。ちょっとヤリスギだぜ、○○○。それでもジャレて噛みにくる。僕の指の動きに併せて○○○も回転。回って、疲れて、また眠る。“遊んでやったんだヨ”って態度。

ティラナの町をブラっと歩き夕食を食べて帰ってきた。もう真っ暗。しかし、○○○は全く場所を変えていない。お前、ずっとそのままか!  明日朝早いからフトンに入る。すると、やっとベッドから降りてきた。チラチラ、こっちを窺っている。笑って手招きしてみる。ケダルそうに寄ってきて、前足を僕のベッドにかけ、キョロキョロ。僕のベッドの上へ飛び乗る。そしてフトンの中へモグリ込んできた。

温かい。ワザワザ僕の方に体重をかけてくる。フヒャァとアクビ。アゴの下を撫でる。僕の手の甲にアゴを乗せて○○○は目を閉じた。その体勢は僕にとって寝づらい。僕は体の向きを変える。でも○○○は肌感が好きらしい。いつの間にか、元の体勢になっている。2人でモゴモゴ動きながら、移動で疲れていた僕は眠ってしまった。

夜中に目を覚ます。○○○は布団から出て僕の足の上で寝ていた。同室のイギリス人が持ってきた暖房器具の前で丸くなっていたのだ。おいおい、ちょっと重いからさ。こっち来いよ。僕は彼女を持ち上げ、フトンに入れる。またアクビをする○○○。トイレから戻ってくると、隣の兄ちゃんの上で丸くなっている。気持ち良さそうにしている。今度はそのままにして眠った。

朝起きる。○○○がいない。隣の兄ちゃんのフトンの中かなあ。兄ちゃんも目を覚ました。猫は部屋の外に出したと言う。ナニ?!  荷物をまとめ出発しようとすると、玄関口のマットに○○○はいた。丸くなっていた。寒いだろ、そこ。こっちに居ればよかったのにさ。

玄関のドアを外からカジる音がする。結構激しい。ちょっと開けると赤い首輪を付けた大きな黒い犬がいた。驚く僕。中に入ろうとする彼を制して外に出る時、隙をついて○○○が外へ。黒い犬はジャレたがり、後ろ足で立ち、○○○に飛び掛ろうとする。僕は彼女を抱え、建物の中へ戻す。なんとなく不服そうな○○○。またね。数日後に戻ってくるからさ。僕は軒下へ降りた。小雨が降っているのでザックカバーをしていると、後ろからドーン!  大きな黒い犬が体当たりしてきた。更に、僕に体をすり寄せてくる。おいおい、ザックにカバーできないじゃないかよ。振り払おうとすると、、、アマ噛み! ヤイヤイ、お前もか!?

昨日、「土曜の朝に戻る」と“Tirana Backpackers”にメールした。
“……………… …………
And, I’m looking forward
to meeting you, your peaceful cat and dog again ! ”

犬派だった僕が猫派になり、2023年現在は猫と暮らしているのは、あのティラナでの日々があるからと思う。長旅は名所めぐりや大きな出来事の繋ぎ合わせではないのだ。バックパックに入っているのが全家財道具であり、仕事に明け暮れる毎日よりも衣食住という生活の基本を感じる海外放浪生活なのである。

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