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改定入管法施行規則案に対するパブリックコメント

出入国在留管理局が改定入管法の施行規則案を公表し意見募集を始めました。

意見の提出期限は4月22日0時0分です。

急ぎ、添付+貼り付けの意見を送っておきました(急いでたので誤字のある可能性多)。他にも気づいたら、追加で送ります。


出入国管理及び難民認定法施行規則についての意見

                                                            2024年3月25日
                                                            弁護士 児玉晃一

1 監理措置条件(36条の2第1項)


(1)行動の範囲について、原則として「指定された住居の属する都道府県の区域内」とする(同2号)は、不必要な移動の制限にあたります。削除してください。
(2)出頭の要求について、同3号は現行規則の特別放免、仮放免と同じ定め方となっています(規則48条2項、同3項)。2023年4月18日の衆議院法務委員会で、西山卓爾出入国在留管理庁次長は、監理措置について「期限を設けず、法律上規定された取消し事由に該当しない限り収容されない、そういう点で、被収容者、仮放免対象者にとっては立場が安定的になるということで、仮放免に比べて対象者にとって利益になる措置であると考えます。」と答弁しています。現行仮放免同様に、1か月~2か月に1回の出頭を義務付けるのであれば、特に遠隔地に居住している者の移動に要する経済的・時間的負担は解消されません。また、出頭時に監理措置が取り消される不安は同じです。「立場が安定的になる」ということにはなりませんから、現行運用のような出頭の義務づけは廃止すべきです。これは、出入国在留管理局職員の勤務状況改善にも繋がります。

2 監理人による届出(36条の3)


 監理人による届出は「書面その他主任審査官が適当と認める方法によって行う」とされています(同1項・2項)。ウェブ上による届出も認めてください。

3 報酬を受ける活動の許可申請(被監理者につき36条の7第1項、仮滞在許可を受けた者につき56条の5)


 報酬を受ける許可申請をするためには、別記51条の8様式もしくは同76号の8様式による申請書並びに当該活動に従事することが自らの生計を維持するために必要かつ相当であること及び当該活動により受ける報酬の額が自らの生計の維持に必要な範囲内であることを証する資料」の提出が義務付けられています。
 しかし、非正規滞在者は生活保護の対象外とされているのですから(最判平13・9・25判例タイムズ1080号83頁参照)、人が生計を維持するためには自ら働き対価を得る必要があります。したがって、本条による許可申請がある場合は、家族や支援者による援助が十分な援助が将来に亘って確保される見通しがあったり、仕事をしなくても生計を維持するに足りる十分な資力があるような場合を除いては、「生計を維持するため必要」として、直ちに許可を認めるべきです。その審査の遅れは生計の維持に対する決定的なダメージを与えることになるから、申請があったら直ちに許可をし、後に許可を認めるのが適当でないと認めるときには本条4項による取消をすることで対応するという運用をするべきです。

4 在留特別許可申請(44条)


 申請書の書式などは定められていますが、申請後の具体的な手続について何ら規定がなく、手続保障の観点から問題は大きいです。本来は法律で定めるべき事項ですが、少なくとも法律の委任を受けた詳細な手続規定を整備すべきであり、要領や運用に委ねるべきではありません。

5 旅券の発給の申請その他送還するために必要な行為(48条の2)


 52条第12項に規定する法務省令で定める行為として、以下の行為が列挙されましたが、退去の命令(法55条の2)と異なり、52条12項は、送還停止効が認められている難民認定や補完的保護対象者認定申請をしている者を除外していません。迫害の主体である本国政府の出先機関の大使館に赴き、旅券発給をするよう命じることは、自らのための墓穴を掘らせるのと同様です。しかも、発出された命令に応じない場合には刑事罰にも処せられることになります(72条5号)。
 難民条約や拷問等禁止条約、強制失踪条約違反の疑いが強く、全面的に見直すか、最低限、法55条の2第2項各号同様の例外を明記すべきです。

(1)旅券の発給の申請に必要な書類を作成し、または取得すること
(2)旅券の発給の申請に必要な書類及び個人識別情報を大使館等又は入国審査官若しくは入国警備官に提出し、又は提供すること
(3)大使館等の構成員から出頭又は面接を求められたときは、これに応じること
(4)有効な旅券を入国審査官又は入国警備官に提供すること
(5)外国政府等又は航空会社、船舶会社の求めに応じて、関税の納付に関する申告書その他送還に必要な書類を作成し、又は取得すること
(6)外国政府等又は航空会社等の求めに応じて、関税の納付に関する申告書その他送還に必要な書類を、外国政府等若しくは航空会社等又は入国審査官もしくは入国警備官に提出し、又は提供することその他送還に必要な手続を行うこと
(7)旅券その他送還に必要な書類を保管し、又は保存すること
(8)入国審査官又は入国警備官の求めに応じて前各号に掲げる行為の状況を入国審査官又は入国警備官に報告すること日本国政府の承認した外国政府若しくは法第2条第5号ロに規定する地域の権限のある機関(外国政府等)

6 制止等の措置(法55条の11)に関連する規定の不存在


 法55条の11では、被収容者や、被収容者以外の者を、入管職員の職務行為を妨害しようとしたと認めた場合には「拘束」ができるとしています。拘束の手続、期間、場所、解放の手続が規則でも定められていませんこれも本来法律で定めるべきですが、少なくとも法律の委任を受けている法務省令(規則)で明記すべきであり、要領や運用レベルで規定すべきではありません。

7 送還停止効の例外規定(法61条の2の9第4項)適用に関する手続規定の不存在


 法61条の2の9第4項第1号括弧書き内の「相当の理由がある資料」や同2号後段の退去強制事由該当性を誰がどのように判断し、その判断において申請者がどのようにコミットしうるのかについて、規則には定めが一切ありません。これも本来法律で定めるべきですが、少なくとも法律の委任を受けている法務省令(規則)で明記すべきであり、要領や運用レベルで規定すべきではありません。

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