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四半世紀近く前から国連は外国人の無期限収容が恣意的拘禁にあたると判断していました。

2021年8月15日にタリバンがカブールを支配したから、20年前にやっていたアフガニスタン難民事件のデータファイルを参照する機会が増えたところ、たまたま、A対オーストラリア事件の規約人権委員会による見解を訳したものを発見しました。

この事件は、オーストラリアの入管に収容されていたAさんからの申立(個人通報制度)を受け、1997年4月30日に、国連の規約人権委員会が、収容が適切かどうかを判断するために定期的な再審査がなく4年も収容を続けたのが自由権規約9条1項の恣意的拘禁にあたるとしました(17頁「9.4」)。日本にもそのまま当てはまります。

(ただ、この個人通報制度、日本は自由権規約の選択議定書というのを批准していないので、できないのです。詳しくはこちらを。)

また、

国内法上、行政による収容を裁判所 が改めて審査できる異なる手段を設けたとしても、9条4項の目的にとって決定的に大事 なことは、その審査が、実際に機能していて、形式的なものに留まらないものだということである。

との部分も重要です(17頁「9.5」)。

自由権規約9条4項は

4 逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。

というものです。

廃案になった入管法案で、司法審査がないことを批判された法務大臣・出入国在留管理庁は、事後的に行政訴訟を起こすことができるから大丈夫だと言い続けていました。しかし、行政訴訟の平均期間は15.7か月。執行停止という裁判所の手続で収容から解放された事例は、この10年間で一つもありません。

詳しくは、こちらをどうぞ(このnote書いたのが3月末ですが、その後5か月の間にも収容の執行停止が認められた事例はありません。)。

ということでこの見解は今なお重要で、参照価値の高いものです。

原文はこちら(PDF後半には原文も貼り付けてあります)。

私の訳文、研究や記事、執筆等に利用される場合はご自由にどうぞ。

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