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佃先生との対談(外壁と構造について)

はじめに

今回は構造設計のエキスパートである佃先生(構造設計一級建築士)に来ていただき、外壁と構造について対談しました。

佃先生は現在、岡山理科大学専門学校の非常勤講師(構造力学の授業担当)をされており、一般社団法人日本建築構造技術者協会の西日本エリアトップとして、構造設計に関する協会内報の執筆活動もされております。

なお、インタビュアーはかべいろはの代表をしている白神が担当しています。

外壁ってなに?

※佃先生(以下、佃)、インタビュアー(以下、イ)

イ:本日はよろしくお願いいたします。

佃:こちらこそよろしくお願いいたします。前回は屋根と構造でしたね。

イ:はい。あ、でも、ここには載っていない話はちょっと...(インタビュアー注:姉妹サイト「やねいろは」に「屋根と構造」で以前掲載しました)

佃:あ、先走ってしまってすみません。。笑 今日は切り替えて外壁と構造について簡単に説明していきましょうか。

イ:はい。お願いします。外壁ってそもそもどういったものなんでしょうか?

佃:いきなり根源的な質問ですね。。うーん、色々な表現はありますが、外壁とは、雨や風、そして外気や音を遮断するためのものといった感じでしょうか。

外壁で大事な要素(温度)

イ:ということは、デザインの話は別にすると、外壁を付ける上で大事なことは、雨や風をしっかりと長い時間しのげたり、温度変化を緩やかにするのが良い外壁ということですかね?

佃:そうですね。まず外壁と内壁の間にある胴縁というものがあるのですが、住宅だとグラスウールや発泡ウレタン、また板状の断熱材を胴縁と胴縁の間に入れるんです。それで外の温度が高かったり低かったりしても、中の温度が快適になるといった効果がありますね。

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引用:重ね張り窯業系サイディング仕上げ図、外張断熱工法|外壁リフォームの工法|外まわりリフォーム|屋根材・外壁材・雨といのケイミュー(検索日:2020/8/16), https://www.kmew.co.jp/sotoreform/srkouhou/sotobaridannetsu.html


イ:ということは、温度の面においては、外壁自体の性能はそこまで変わってこないというイメージでしょうか。

佃:そうですね。ただ、外壁というと、窯業系、金属系、ALC(軽量気泡コンクリート。厚みが100mm程度の気泡が入っているコンクリートのボード。基本的に住宅ではなく店舗や事務所なども使用される)があります。窯業系はセメントが主成分、金属系は言葉の通り金属系、ALCはコンクリートが主成分です。そういった意味では、金属系が最も温度を伝える(=遮断しない)ので、窯業系やALCが優れていると言えます。ただ、外壁の裏に胴縁があり、胴縁同士の間に断熱材があるので、程度熱を遮断することはできていると思いますが。


佃:ちょっと話は変わりますが、窯業系や金属系の外壁は施工上基本的に胴縁が必要なのですが、一般的なALC(厚さ100㎜)は胴縁が要らないですし耐火性が高いため、経済的なメリットがありますし、店舗や事務所では法律的に要請されるものが多い(耐火性)観点から、ALCが店舗や事務所でよく使われています。胴縁を使用した窯業系・金属系外壁よりも、ALCは胴縁要らずで金銭的にリーズナブルということもありますね。

イ:ということは、経済的なメリットの観点から、ALCは住宅にも使っても良いのでは?

佃:ALCはデザイン性が悪いからあまり使われていないのではないのでしょうか。ALCの上に例えばレンガを貼ることはできない(接着できない)ので。

イ:なるほど、住宅だとデザインにこだわる方がほとんどですもんね。

外壁で大事な要素(音)

イ:では、温度以外で、例えば遮音性についてはいかがでしょうか?

佃:一般的にはそこまで意識したことはないですが、金属系は音が共鳴するので、横なぐりの雨が降ると、金属系外壁が共鳴するかもしれません。とは言っても、先ほどの温度変化のときの議論と同じで、外壁の裏に胴縁という木材が入っていて、空気層があるので、その意味では金属系外壁の部分が共鳴しても、中側には音はそこまで入ってこないと思います。

外壁で大事な要素(雨や風をしのぐ)

イ:ありがとうございます。では、外壁で最も大事な「雨や風をしのぐ」性能については、いかがでしょうか?

佃:これについては、外壁自体がしっかりと施工されていれば材料は関係ないと思います。一方で、最近聞いた知り合いの建築士さんの話だと、「金属系外壁の場合、金属系サイディングやスパンドレルの継ぎ目から水が入ってくる可能性があるので、あまり使わない」と言った話も聞いたことがあります。金属系は熱膨張と熱収縮を繰り返すので、接合部分のハゼが緩むとそこから毛細管現象などで水が入ってくるイメージかもしれません。今は金属系外壁も進化しているのであまり気にしなくても良い気もします。そんな私の家は金属系外壁(スパンドレル)を使っていますし。笑

イ:そうですね。他の材料、例えば窯業系サイディングだと外壁同士の継ぎ目がシーリングなので経年劣化でシーリングが痩せてくると、その部分から雨が入ってくるイメージだったんですが。

佃:それもあるかもしれません。金属系はシーリングを使わないので、そういった話はないですよね。窯業系外壁の場合、定期的なメンテナンスが必要になります。ALCの場合も継ぎ目はシーリングなので、定期的にシーリングを打ち替えることが必須になります。

外壁で大事な要素(構造面:地震力、風圧力、層間変形角)

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イ:ありがとうございます。段々理解できてきました。次に構造面で外壁を見た場合、どういった材料が良いか教えていただけますか?

佃:そうですね。構造面で見た場合、重量が大事になります。その観点で考えると、最も軽いのは金属系(10kg/m2)で、その次が窯業系(25kg/m2)、最も重いのはALC(60kg/m2)になります。

イ:その違いはどこから来るのでしょう?

佃:そうですね。違いは物質の密度の違いもあるのですが、最も大きいのは厚みです。ALCは単体で自ら立つくらい厚みがあります(100mm程度)。それに対して、金属系は1mm未満、窯業系が10~20mm なので、そもそも厚みが違うんです。その意味では、厚みがあるので重い、という当たり前の話ですね。笑

イ:なるほど。外壁が重いと家にどういった効果がありますか?

佃:まず、外壁が重いことによるデメリットとしては、屋根の話でもあったように、地震力(地震があった時に受ける力)が大きくなりますね。また、胴縁を使う場合、外壁が重いと、多くの胴縁を使う必要があります。言い換えると、胴縁同士の間隔を短くするということですね。柱と柱に入れる間柱(まばしら)を胴縁を打つために多くしたりしないといけません。

佃:一方でメリットもあります。外壁が重いことは厚みがあることと近いので、一概には言えないですが、耐久性が高いと言えますね。遮音性も重み(=厚み)に影響されるので、その意味でも重量があるALCや窯業系の外壁が遮音性に優れている可能性があります。

イ:先ほどのお話とも通じますね。

佃:次に、風圧力について説明しますね。風が吹いたときに、前回の屋根と同じように、風圧力が発生します。窯業系や金属系の外壁の場合、その風圧力が胴縁の耐久性と変形性に影響するので、その観点から、胴縁が壊れないか、外壁材が剥がれないかを設計しています。風圧力と材料毎の施工方法にあった設計が必要ということです。

佃:最後に、追随性(地震が起こった時に建物が倒れるのに対して外壁が剥がれないか)をチェックすることもあります。窯業系や金属系だと追随性の観点から胴縁がメインの部材になるので、層間変形角(地震で横揺れが起こった時の変形度合)が1/150以下であることが求められるのですが、ALCだと1/120以下で済むということがあります。あまり関係なさそうなので詳しい説明は省きましょうか。

イ:そうしましょう。笑

インタビューを終えて

佃:今回は構造の話があまりなかったですね。笑

イ:そうですね。笑 ただ意匠(デザイン)関係の建築士さんのお話も踏まえてお話して頂けたので分かりやすかったです。

佃:ありがとうございます。

イ:また是非お話聞かせて下さい!

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今日は構造設計のエキスパートである佃先生(構造設計一級建築士)に来ていただき、外壁と構造について対談しました。

外壁については屋根よりもさらに家全体の構造とリンクしており、一概に外壁だけを良くすることよりも家全体の一機能としてどうすべきか(どう修理するのか)を考えることが大事という印象でした。

もし外壁に困ったら、地元の良心的な外壁工事店が集まっている「かべいろは」へお問い合わせくださいね。

引用:重ね張り窯業系サイディング仕上げ図, 外張断熱工法|外壁リフォームの工法|外まわりリフォーム|屋根材・外壁材・雨といのケイミュー(検索日:2020/8/16), https://www.kmew.co.jp/sotoreform/srkouhou/sotobaridannetsu.html


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