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物理の分業体制

物理学は大きく分けて2つの分野からなっています。理論物理と実験物理の2つです。物理学の研究は分業になっているというわけです。物理を理論的に研究する物理学者と、実験的に研究する物理学者がいることになります。
ファインマン物理学「力学」のなかで、ファインマンが述べている通り、
「理論物理学者は洞察し、演繹し、新しい法則を推測する。けれども、実験はしない。実験物理学者は、実験し、洞察し、演繹し、そして推測する。」ということになります。

さらに、朝永振一郎は自身の著書「量子力学 I」のなかで次のように述べています。
「理論物理学者の仕事を大別して二つに分けることができる。一つは出来上がった理論を理論的に解決されていない問題に適用して現象の由来を明らかにすることであり、今一つは新しい理論を作り上げることである。」
理論物理学も純粋な理論と現象論の二つがあることになります。

一方で、実験物理のほうはどうでしょうか。実験物理も、例えば、加速器を使って宇宙の初期状態を人工的に作り出して実験する物理学者がいます。人工的に自然界で起こっている状況をうまく制御して、現象を調べるやり方です。さらに、人工的な状況を作り出すのではなく、例えば、遠い天体からの宇宙線を観測することで、現象を調べる実験物理もあります。実験物理のほうも、観測と実験の二つがあることになります。

純粋な理論と現象論の二つと観測と実験の二つの計四つの分野があることになります。
今までは、この分業体制がうまく機能して、20世紀は物理学の世紀と言われるほど、目覚ましい成果をあげてきました。ところが、21世紀になて、特に素粒子物理の分野では、この分業体制がうまく機能していないように思われます。素粒子物理の純粋な理論は、超ひも理論や量子重力をすることになりますが、ここで扱う現象は人工的に作り出すことができず、実験的な研究を行うことが不可能な状況です。観測の方も、例えば、量子重力は、超高エネルギー宇宙ニュートリノを観測することで検証できると言われていたりしますが、そうしたニュートリノが地球に飛来してくることは頻度が低く、詳しく調べられていません。

そろそろ、物理の分業体制を見直す必要があるということなのかもしれません。


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