こんばんわ、小池です。

人生を振り返ってみました。すると、なんでか知りませんがよく褒められたのは言葉でした。喋るでも、書くでも、歌うでも。わたしは絵がうまくなりたくて、描けるようになりたくて、人生の初期をひたすら水色シャーペンとケント紙とハイテックC0.4と丸ペンとレタリングゾルKとラジオから流れる音楽とで過ごしていました。私はきれいな線が引ければ絵を描ける人になれると浅はかにも幸せに信じていました。それは三分の一くらい正しく、残りはさびしいものでした。

言葉。

大学は哲学科に進学しました。小学生のころから「四年制大学の文学部というものにゆく大学生になりたい」という形の夢を持っていました。行った先は飯田橋の法政大学でした。大学院まで行きました。名ばかり院生だと今でも感じています。頭に残っているのは存在と時間の一部、杣道、そして判断力批判のかけらたち。

絵が仕事になって数年が経ちました。いまだに信じられませんが、ご依頼をいただけるようになり、毎日何かしら描いていたり、描くための準備をしていたりします。

大学の終わりごろに始めたバンドも、メンバーが変わりながらももう10年になります。バンドを始めるために覚えたギターも、いまはキーボードメインで、私はどこへ行くんだろうと、夕べレコーディング用の追加英詩を頭に躍らせながら考えていました。白紙でしかないけれど。

いつでもペンと、白紙のノートがわたしの友であり、恋人であり、あああなたはわたしなのです。ベローチェに入り、お気に入りの隅の席で、紅茶をそのままにしながら開いたノートに走らせたお気に入りのペンの先から出てくる言葉、ことば、あなたに会えるのはその瞬間だけで、わたしは、あなたにずっと会いたいのに、会えない時のほうが多い人生になりました。

あなたとたくさん話して、紅茶を何杯も買って、たまにスコーンもかじって、文庫本を読んで、有線とiPodと隣の老婦人同士のおしゃべりとを耳に入れながら、どんな日々が待っているんだろうとあなたと話していたあのころと、いったい何が変わったのかといえば、夢を一つ叶えて、そしてあなたに会う時間がめっきり減ってしまったということと。

わんわんと泣きたくなることは、いつまでもなくならないものですね。


はじめましては素敵なものです。さよならが苦手なわたしは、いつでも白紙の中に飛び込む。わたしは言葉で考えて、感じて、そうして何を出してゆけるのだろうか。

こんばんわ。もう夢の中であろうあなたは、これをいつ読むんだろう。

はじめまして。どうぞ、またね。

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