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脱・ミッドナイトジャンキー

その日を迎えるまでには、いくつもの夜があった。

ブラックコーヒーを片手にテスト勉強との死闘を繰り広げた夜。あの人からのメールの言葉とともに日付を跨いだ夜。誰かのSNSをあてもなく眺めた夜。LINE通話越しにケンカした夜。静まりかえった街をふらふらと散歩した夜。ブルーハーツを爆音で聴きながら創作活動に勤しんだ夜。今となっては、わたしにとってそのどれもが愛しい夜。

深夜の時間の流れはいつも独特で、昼間に満たされなかった何かを必死に取り戻そうとするかのような、時間を貪る、時間を喰うようなあの感覚は、一度身体に染みつくとなかなか離れない。多分それって、不摂生が人間にとって快楽のひとつでもあるからだと思う。

10代半ばから不規則な生活を送ってきたそんなわたしは、ミッドナイトジャンキーだった。


でも、その日は突如として訪れたーー。


遡ること4週間前。連日の暑さの中での外出の疲れが溜まっていたのか、その日は夜9時前に眠りについてしまった。

そして翌朝、5時半に起きる。いや、目が覚めるという表現の方が的確だ。身体が軽い。普段のような起床時の気怠さがない。顔を洗う。いつもより化粧水が肌に染み込む。化粧ノリが全然違う。髪の毛もつやつやさらさら。なんだこれ。早朝のバイトへ向かう。バイトが終わってもいつもより疲れていない。なんだこれ。午後の勉強。頭への入り方が全然違う。なんだ、これは。

そしてわたしはふと気づく。


もしかしてさ、早く寝て早く起きて睡眠時間たくさん確保すれば、お肌も髪も体調も作業効率もいいのでは…?


人間生活22年目にして、ようやくたどり着いた真実。

すべては時間の使い方。
リピートアフターミー。
すべては時間の使い方。


その日を境に、23時までには寝て、6時までには起きるという生活を徹底し始めた。
早く寝るどころか、深夜から活動するために夕方や夜に仮眠をとっていた、あのわたしが。
「おはよう」に「おやすみ」と返していた、あのわたしが。
早起きするから、夜は健全な時間に健全な眠気がやってくるし、何よりめちゃめちゃ作業効率が良くて、ホント今までの人生なんだったんだろうって思う。もうね、人生の質が違う。


いや、あのね、いつにも増して何言ってんだコイツって感じだろうけど、今までわりと自分がヒト亜族のヒトであるということに、いくらか半信半疑だったんだよね。

1940年代に提唱された、生物と機械における制御と通信・情報処理を統合的に扱う、サイバネティクスという学問分野の中では、人間をコミュニケートする機械とみなしているらしいのだけれど、感覚としてはそれに近いかもしれない。動物の種としての「ヒト」であることよりも、実社会では社会的な「人」として存在することの方に意識が向けられているように思う。

だからときどき、意識と自分の肉体の境目が曖昧になるというか、この肉体にこの意識が宿っているということを忘れそうになる。

そんなことを思っていたからか、早寝早起きが健康にいいらしいとか、この栄養素は身体にこういう働きかけをするらしいとか、適度に運動をするといいらしいとか、知識としてはもちろん知っていたし、頭ではわかっていたけれど、内心ほんとかよって思って軽視していた。


でもね、この度確信を持って実感した。


わたし、全然、ヒト亜族のヒトだわ。人間だったわ。


そして、ヒト亜族のヒト、人間にとって、どうやら睡眠ってのはとても重要っぽい。寝ている間に細胞を作り替えたり、筋肉や身体の組織の修復や再生を行ったり、記憶の整理をしたり、睡眠とは自らの身体をデザインすることなんだね。
特に女性には今夜からでもぜひともやってみてほしい。「化粧ノリ」という言葉の意味を、いい肌状態のときに実感してほしいんです!!(美容部員さんじゃないです)

質の良い睡眠は、SK-Ⅱにも勝るよ。






今夜も、おやすみ、世界。

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