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おじいさんと秋田犬

なんとなく出かけてみた週末、クルマで信号待ちをしていた時のことだ。

おじいさんと秋田犬の子犬が目の前の横断歩道を渡っている。
なんとかわいい光景だろう。思わず「かわいいー」とつぶやいて笑顔になった。
まさか車内のつぶやきがおじいさんに聞こえたとは思えないが、横断歩道の真ん中でおじいさんがこちらを見てほほ笑んだ。
おじいさんはリードを引っ張って子犬の顔をこちらに向けてくれた。
かわいい、子犬もおじいさんもかわいい。
わたしは小さく手を振った。なんて幸せなんだ。今日はいい日になりそうだ。

横断歩道を渡り切ったおじいさんは、子犬を肩から持ち上げてバンザイのポーズをさせてわたしに手を振ってくれた。
なんて優しいおじいさんなんだ。子犬も笑顔のように見える。
わたしも大きく手を振った。ああ、もうあと2年くらいは幸せな気持ちのまま過ごせそうだ。
青信号で発車してから、おじいさんと子犬の幸せを心から願った。
わたしの心もきれいになったような気がした。

ちなみに、秋田犬の子犬なのでとても大きかった。
身体のバランスや顔立ちは子犬なのだが、大きさは柴犬の2倍くらいあるのではないだろうか。
ふわふわの毛並み、おじいさんと子犬の笑顔、思い出すだけで頬がゆるむ。

幸せな気持ちのままある街へ行った。
この街は自転車がやたらと多い。
そのせいか歩道の中心に白線が引いてあり、車道側を自転車が走れるようになっている道路がけっこうある。
わたしが白線の内側というか建物側を歩いていた時、正面からフルフェイスサンバイザーのBBAが自転車で向かってきた。
当然BBAは車道側の自転車走行可の部分に入るかと思いきや、人間が歩く側をぶっとばしながらわたしに向かって「邪魔!!」と言い捨ててそのまま直進していった。もちろんわたしはさらに建物側に除けなければならなかった。

心の中で悪態をつき、顔はアウトレイジの小日向文世になり、幸せな気持ちは一瞬で吹っ飛んでしまった。
幸せな週末をどうしてくれるんだ。

それにしてもさっきは向こう2年は幸せな気持ちでいられそうだと思ったのに、自分の幸せはかくも脆弱なのか。


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