「Googleで開発された脳科学とマインドフルネスの能力開発メソッド」聴講メモ

○研修名
マインドフルネスで脳と心を最適化する ~予測不能な時代のセルフマネジメント~
Googleで開発された脳科学とマインドフルネスの能力開発メソッド

○序論
・シリコンバレーのGoogle本社でリーダーシップのベースを作るためのプログラムを1日に凝縮したもの。
・日常で実践でき、健康を維持していくための基盤を整える。
・自分自身を自分で導いていく、根本的なリーダシップ(セルフリーダーシップ)
 →セルフリーダーシップがあるから他人も導ける。
  上の役職に行くほど激しいストレスに襲われる。この問題意識からGoogleで開発された。
・道元の座禅の話「目的を持つな。ただ座れ。」
 →何それ?という感じだが最新の Neuroサイエンスで有効性を着目されている。
・神経科学=1990年代から盛んになってきた、脳の働きを活性化させるための科学
 →まだまだ脳は分からないことが多いが、f-MRIなどで解析できるようになってきた。
  瞑想が脳に及ぼす効用、マインドフルネスの効果など研究されている。

○マインドフルネスとリーダーシップ
・そもそも「リーダーシップ」は100人いたら100通りの解釈。言葉のイメージが一人歩きする。
 →よくあるのは「人を率いる」「ビジョンを伝える」「結果を出すためメンバを動機づける」
 →そのためのマネジメントの仕方、チームワークの作り方のフレームワーク→今日はやらない
 →本日はどういう気持ちを持って接するか、「その人のあり方について」
  その人のOS部分について考える。
・3つの質問
 ・私の日頃の”集中力”は・・・
 ・私の”集中力”を阻害するものは・・・
 ・”集中力”を維持するために私は・・・
・アメリカのビジネスマンに聞いた結果
 ・47%:1日のうちで意識があちこちに飛んだり、物思いにふけっている時間
 ・70%:大事なミーティングのとき「集中できないことがある」と回答したマネジャー
 ・2% :大事なことに集中できるように、何らかの実践を”ルーティン化”しているマネジャー
  →ルーティン化がポイント。アスリートで言えば”ここにコンディションを合わせる”
   ということをルーティンとして取り組めているか。
   パフォーマンスが地に落ちると誰でも気づけるが、地に落ちる前にどう対処するか。
・ダボス会議で世界のトップリーダーにリチャード・デヴィッドソン博士が伝えたこと
 →「たった5%でも「今、ここ」に意識を保つ時間を増やすことができれば、それは大きな変化につながる」
 →ビジネスではパフォーマンス低下の危機がたくさんある。

・マインドフルネスの定義
 →辞書的な説明:注意深さ、留意。
 →今日の解釈:”明晰な気づき”とともに「今に注力」している状態
 →自分が今、どういう状態かと気づいている状態が「マインドフルネス」。
・手のひら瞑想。1分間手のひらを見つめる
 →必ず注意は逸れる。それに気づくことが大事
  「意図を持って、今の瞬間に、評価や判断をて話して、注意を払うことから、わき上がる気づき(認識)」
  フォーカスすることがあるから逸れることに気づける。それた時に元に戻すということを行う。

・なぜ、リーダーシップに必要か?
 ・A VUCA World
  ・Volatile(変化が非常に早い)
  ・Uncertain(未来を予測することは困難)
  ・Complex(複雑化した世界)
  ・Ambiguous(問題も解決策も明確でない)
 ・今いる自身をコントロールしなければ、これからの世界を乗り切ることはできない。

・私の仕事のVUCA度は?
 ・あなたの仕事における変化のスピードは?
 ・事業の動きに関する予測性は?
 ・直面する課題の複雑性は?
 ・重要課題は明確?解決策は明確?

・ドミニク・テュルパン(経団連で講演)
 「これらのマクロな潮流は、自分でコントロールできるものではない。VUCAワールドにおいては何よりも”変化に対する俊敏さ”が不可欠だ」
 →このこととマインドフルネスがなぜ繋がり、リーダーシップにつながっていくのか?

・ホメオスタシス(生体維持機能)
 ・人間に元々備わっている生きていくために一定の状態に保つ機能。平熱に保つなど。
 →心理的な働きの中にも当てはまる。
 →今までと全く違う革新的なトライをしていくこと=ストレスがかかる。
  安定したところに留まることによって健全を保てる
 →VUCAな環境はストレス。

・リーダーが最も開発すべき能力=自己認識力(セルフアウェアネス)
 →スタンフォードビジネススクールのアドバイザリーカウンシル75人のメンバにヒアリング
 →VUCAな世界を自分自身に落として認識していくことがリーダーには欠かせない。

・20世紀を代表する経営者ジャック・ウェルチ(GE)
 経営に最も必要なことは何か? = 「セルフアウェアネス」

・FedExのロゴ
 ・注意深く見ると見えてくるもの
 ・固定観念があると見落としてしまうこともある。

・第4次産業革命時代に必要なスキル・トップ10
 ・2015年版:Quality Control(6位)、Active Listening(9位)
 ・2020年版:Emotional Intelligence(6位)、Cognitive Flexibility(10位)
 ・Cognitive Flexibility(認知的な俊敏さ)
  →忙しいと次々とタスクに対処:フレキシブルだが振り回されている。
   そうではなく、自分でコントロールし、フレキシブルに動くことを認知して進んでいく。
  →ストレスがかかるのでコンディショニングが重要
 ・Emotional Intelligence(感情的な知性)
  →ストレスがかかる=感情的にネガティブになりやすい
 ・EI(Emotional Intelligence)の定義
  →志向の助けとなるように感情を理解し、アクセスし、創出する能力(EQ)

・マインドフルネスの関係性
 ・注意深い在り方(マインドフルネス) > 感情の活用(EQ) > パフォーマンスと健康(成果/影響力)
 →注意深い在り方が感情の活用を可能にし、感情を活かすことで成果や影響力につながる。

・脳の状態
 ・DMN(Default Mode Network)
  →雑念がたくさん湧いている状態。普通の健全な状態。
  →鬱状態は過剰なDMN
 ・注意深い状態:脳が全体的に休めている
  →ここぞという時にここに持っていく。
 ・注意がそれた時は、それたことにちゃんと気づき注意を戻す。
  これによって注意を安定させていく。

・マインドフルネスの習慣によって
 ・脳機能の向上:注意力の強化、情動の抑制、理性的な反応
 ・脳の構造変化:認知機能などに関わる部位の皮質が増加
 ・DNAの変化:テロメア体(染色体の末端粒子)の維持、炎症を起こしやすい遺伝子情報の発言低下(ストレス反応からの速やかな回復に関連
  →注意散漫な状態はテロメアが損傷を受ける。テロメアはアンチエイジングにも関与している。

・神経可塑性
 ・従来の脳の研究は死体を解剖するしかなかった
 ・1990年代に入って神経科学の発展が加速
  →筋肉と同じように使っているところが強化されているく脳の特性が明らかに。
  →ロンドンのタクシー運転手(Black Cab)は空間把握の神経が太くなっている。
 ・アメリカの小学校ではマインドフルネスの実践が重視されている
  →出席率や学級崩壊が改善された報告もある

○意思決定の科学
・瞑想とは?
 →実践者を特別な種類の心のプロセスに馴染ませるようにデザインされた、一群の心のトレーニング活動である。
・メンタルトレーニングとしてのマインドフルネス
 →2種類の注意力を鍛える
 ・通常の注意
  →意図した対象にしっかり集中する能力。
 ・メタ注意
  →自分の注意力がどうであるかモニタリングする。

・感情がかき乱されると、それだけで仕事で必要な理性が働かなくなる
 →情動と意思決定のリスク
・大脳皮質(脳の表面部分)、特に前頭葉(前の部分)
 →人間と他の動物を差別化する部分。知性を発揮する主役。
  言語。論理的思考など知的な人間らしい活動の中心
・大脳片影系(感情を司る部分は脳の深いところにある)
 →脳の奥の方に行けばいくほど原始的な機能
・扁桃体:わっと湧き上がるような感情を司る中心的な機能
 →脅威を感じることが起きると扁桃体が活発に反応(血流が集まる)
 →心拍↑ 心拍数↑ ストレス↑
 →理性を司る脳の表面部分に血流がいかなくなる。
 →言語を扱えなくなる、本来賢い人でも判断が単純になる。(扁桃体ハイジャック)
・単純な判断は3種類の反応に分かれる(3F MODE
 ・Fight(闘争モード):暴言、不毛な論争、他責、無理強い
 ・Flight(逃走モード):妥協、媚び、諦め、依存、距離を置く
 ・Freeze(硬直モード):真っ白、思考停止、生返事、無視
 →共通するのは視野狭窄と判断の単純化。
  原始的な脳の機能で動物にも備わっている必要的な反応であるが、
  現代社会に生きる我々にとってはリスキーなモードである。

・感情統制の神経モデル
 ・指示を出して統制力を発揮する脳の表面が、いかに感情に気づき上手く制御していくか。
  →言いたいことを一歩踏みとどまり、理性を十分発揮できる状態にしていく。

・小まとめ
 ・扁桃体ハイジャック
  →理性よりも感情の方がシンプルな分パワフルである。
   ゆえに早く感情に気づいて統制しなければ行けない。
 ・情動が私たちの意思決定を左右する
 ・脳の「思考部分」が情動を認知する前に、情動が身体の感覚として経験される。
 ・マインドフルネスによって、身体の感覚に気づく力と、情動を認知して制御する力が高まる

・感情が身体に与える影響の研究では、国や文化が違っても概ね同じ反応を示している。
 思考様式は違っても、感情は根底的、普遍的なもの。
 →感情に気づくことがチームワークや周りとの関係性に重要な役割を果たす。

・自己認識(Know yourself)と自己管理(choose yourself)の基盤を養う習慣を身につける
 様々な実践法
 ・ジャーナリング(ある問いに注意を向けて手を動かす)
 ・ウォーキング(身体感覚に注意を向けながら歩く)
 ・イーティング(五感を十分に活用しながら食事を味わう)
 ・その他、日常の動作を注意深く丁寧に行う

・ジャーナリング
 ・手書きで一つのテーマ(問い)を立てて、自分と対話、内省していく。
 ・頭で整理して書くのではなく、先に書き始める
  →普段考えていることではなく、深いところにある無意識にアクセスできる効果が期待
 ・一定時間、できるだけ書き続ける
 ・(人に見せるものではないので)脚色せず事実をあるがままに書く
 ・文法や文章、文字の誤りなどは気にせず書く
 ・リラックスでき、かつ手中して取り組める空間を整える
 ・じっくり行う場合は、瞑想などウォーミングアップ、書いた後の内省と気づきの記録までを含めて1セッションとする

・ジャーナリングのさまざまなスタイル
 ・重要な課題に向き合う耐久レース型のジャーナリング(20分間×4日など)
 ・日常の内省を深めるための中距離走型のジャーナリング(10~15分間)
 ・短時間でコンディショニングを行うための短距離走型のジャーナリング(5分間)
 ・移動時間や空き時間を利用して行うクイックなジャーナリング(1-2分間)

・ジャーナリングの効用は?
 ・失業した職業人が5日間自分の気持ちについてジャーナリングしたところ、
  通常27%に対し68%という非常に高い比率で新たな仕事を見つけた。
 ・49名の大学生が2日連続して2分間のジャーナリングを行なった
  →心身の健常性の向上が見られた
 ・健康に関する効果
  →ストレスに関する病院が良いの減少、免疫システムの改善。
 ・社会的、行動的な変化
  →仕事での常習欠勤の減少、失業後のより早い再就職、作業記憶の向上、スポーツパフォーマンスの改善

○適切な感情を導くためのセルフマネジメント
・セルフアウェアネスをセルフマネジメントに繋げる。
 →神経可塑性によってできる。
・情動を制御するということは、
 ・生じているものから目を背けて避ける
 ・生じていることを否定する
 ・気持ちを押さえ込んで抑圧する
  ・・・といったことではない
・扁桃腺ハイジャックを避けるためには・・・
 ・6秒間ストップ(息を吐く)
  →脅威があった時に好ましくない脳内物質が分泌される時間。
   6秒間の間に制御しようと思っても無理。
   6秒はブレーキを踏む。
 ・90秒間、判断を保留
  →言い負かしてやろう、いい答えをしようと思わない。
   90秒間は判断をせず何となくコミュニケーションをとる(時間を稼ぐ)
・SBNRR(シベリア北鉄道)のプロセス
 →Googleで使われている。
 ・止まる stop
 ・呼吸する Breath
 ・気づく Notice
 ・よく考える Reflect
 ・対応する Respond
・セルフマネジメント実践に向けた3つの心得
 ・STOP:危険な身体反応に気づいたらブレーキを踏む
 ・姿勢:背筋を伸ばして胸を開く
 ・呼吸:ゆったりと眺めに息を吐きながら呼吸を繰り返す

○これからのセルフマネジメントに向けて
・テーマ
 ・今日のセミナーで私が手にしたことや気づき
 ・仕事や日常生活で、これからどのようにマインドフルネスを生かすか
 ・上記2つのテーマを組み合わせて
 ・自由に話したいことを決める

・変化が早い、複雑である、VUCAである
 仕事もそうで、いろいろなタスクが降ってきて思考停止の状態になっている。
 そういう時に大きな変化がやって来ると自分の支えがなくなってしまう。
 組織や上司が変わる、自分のPJが解散するなど。外部環境に振り回されてしまう。
 セルフアウェアネスが重要とのことで、忙しい中でも自分が何を大切にしているのか、
 どこへ向かうのかを考えるのが大事。個人だけではなくチームとしても大事。


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