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台湾内政に世界の注目が集まるも・・・市民の民意を第一に尊重したい

WCコスタリカ戦、一瞬の隙を突かれてしまいました・・・。幾多のチャンスが、今回は結果には結びつきませんでした。選手達は最強の敵といえるスペインを相手に気持ちを切り替えられるか、選手、監督、スタッフの胸中を察すると非常に苦しいでしょうが、世界と勝負する厳しさとは、そういうことなのでしょう。最後まで応援いたしましょう。

さてまたしてもアジアに目を転じますが、台湾では、政権の中間選挙的な意味合いがある統一地方選が実施され、与党民進党(シンボルカラーは「緑」)が苦戦し、野党国民党(同「青」)が躍進、首都台北でも、民進党は市長職を失いました。

蔡英文総統は、民進党党首を辞任、総統職は維持するものの、2024年に任期満了となる総統選で、もし政権交代が起きると、民進党よりは対中融和的とみられている国民党政権では、日米にとっては、安保上懸念という文脈で報じられています。

ただし、台湾では民進党(基盤は南部、伝統的に人権派弁護士が率いてきた)と国民党(基盤は北部、伝統的にエスタブリッシュメントが率いてきた)の2大政党制が定着しています。国民党は、対中姿勢をその時その時の情勢で修正する一定の柔軟性はあり、日米安保のロジックで、懸念を述べるのは、少々、筋違い・・・なのかもしれません。

実は、現状はデジャブ感があります。
4年前の統一地方選挙も、民進党は相当に劣勢だったことが思い出されるためです。確かに、今回は4年前以上に「緑」が劣勢で、「青」に勢いがありますが、そこには、コロナや物価高への与党への不満があることは論を待ちません。

4年前も、次の総統選での民進党の苦戦がささやかれていました。
実際は、前回の統一地方性以降、中国の香港に対する締め付けが強まり、そのことが台湾市民への警戒感を高めて、2020年には蔡英文氏は総統に再選されています。

総統選もまた、都度、民進党と国民党で揺れているのが実情です。
https://www.koryu.or.jp/Portals/0/images/publications/magazine/2021/12%E6%9C%88/2112_01sakou.pdf

要すれば、統一地方選は日々の経済問題、総統選は外交安保などに大きく左右されるということになります。元新聞記者で台湾通の野嶋教授も、概ね同じスタンスの見方をされており、今回の統一地方選では、(香港問題では民進党支持に傾いた)若者の支持が得られなかったことが敗因と分析されています。


台湾市民にとっては、外交安保は、とにもかくにも現状維持が望ましく、両岸関係が緊張するよりも、安定するほうがいいはずです。それは、日本の政治・経済界も100も承知ですし、実は、民進党の蔡英文総統も、最後の一線を超えるような発言はなさらない俊英な淑女とされています。

ただし、台湾は、経済安保面で世界から注目を集めるようになっています。そのため、これまでそこまで注視されてこなかった統一地方選挙に世界の目が注がれ、さらに、総統ポストの登竜門という意味合いのある閣僚級である台北市長に、政治家としては若い蒋介石元総統のひ孫で絵になる蒋万安氏が当選したことがセンセーショナルに取り上げられているのは事実でしょう。

台湾において、国政に係る選挙は、投票率は7割を超える最大級のイベントであり、それは街中、「緑」と「青」の旗と、演説の熱狂の中で、すさまじい熱気で選挙戦が展開されています。とりわけ、総統選は、台湾の進路を左右する極めて重要事項なので、白熱の中で議論が尽くされます。これから民進党は、若者を取り込もうと巻き返しに出てくるはずです。

「緑」と「青」には、分断がないとは言い切れないのが事実ではあります。それでも、選挙が終われば、勝った政権に委ねる。それが台湾の民主主義であり、議論が反映されるならどちらに触れても、それが尊重されるべきのように思われます。

私は、台湾駐在時、選挙翌日になると、前日まで街を埋め尽くした旗が綺麗になくなっているのを見て、いつまでのポスターが貼りっぱなしの日本よりも、市民の品格がずっと高いと感銘したことがあります。

大枠では、民意をしっかり反映させる民主主義を貫徹することにこそに意義があり、台湾市民の決断を、日米はしっかり受け止めるのが大人の対応ということになるのではないでしょうか。世界でも日本のことを最大級に親しみを持ってくれる方々であることには、「緑」でも「青」でも揺らぎはないでしょう。

それでも、「緑」の総統候補として、頼清徳副総統が現時点では有力候補の一人ですが、蔡総統よりは、踏み込んだ発言もあるとされているのは少々気になります。さらに、このあたりに対する中国側の反応は一層気になるところです。さらに、「緑」の政権下で進んだ、中国からASEAN・インドを重視する「新南向政策」などがどうなるのか、「緑」と「青」の狭間で、米中さらに日本を股にかけるOEM最大手の鴻海にファンドリー最大手のTSMCといった台湾の巨人たちは、どのように軌道修正していくのかなどは、しっかりと確認しておく必要はありそうです。










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