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アジアの趨勢に影響を与えかねない大洋州の選挙

米国と政治的な歩調を合わせ、日本とも親密さを増している印象があるのがオーストラリアです。同国は、大陸がそのまま一国という実は珍しいケースであるために、周辺国との領土問題は先鋭化せず、移民が多く、観光、留学大国と多様性を絵にかいたような国ともいえます。

私は、かつてアジアに駐在していた際、入国審査ではパスポートはそっけなく返されるのが当たり前でそういうものだと思っていましたが、オーストラリアだけは、早朝到着にもかかわらず「Hello」とにこやかに対応されて、少々いい意味で面食らった経験があります。

そんなオープンでフレンドリーなお国柄で、人口規模も約2,600万人で日本の一都三県よりも少ないのですが、主要な輸出品は天然資源であり、最大の仕向け先は中国、近年は、対中政策を巡って与野党間の対立が目立っています。同国は、自由党・国民党からなる保守連合(現与党)と労働党(最大野党)の事実上の2大政党制に近い体制ですが、現与党のモリソン首相(自由党党首)は中国には厳格姿勢です。米英との軍事同盟であるAUKUSの発足はその証左とみられています。これに対して、労働党の方は比較的柔軟な姿勢を示しているとされています。

そのオーストラリアが、5月21日に総選挙を迎えることになり、与野党の接戦が予想される中で、にわかに耳目が集まっています。


世論調査は、与野党の接戦が続いていますが、現在は野党が支持率を上げている状況ですが、次の首相としては与党のモリソン氏が優勢であり、このねじれのなかで、残り1カ月弱でどう転ぶかわかりません。

https://www.theaustralian.com.au/nation/newspoll

与党の勝利なら、これまでの政策は継承される可能性が高いでしょう。
他方で、同国はあくまで議院内閣制。政権交代となると、対中政策は修正され、AUKUS(米英豪)、クアッド(米日豪印)の一角の中で強硬姿勢が目立った様子は是正される可能性が高まります。

基本的には米中対峙が続く中でも、アジア諸国の多くは、経済的には中国との結びつきを強めています。大学院の講義で日系製造業のグローバル展開のケーススタディを取り扱っていますが、サプライチェーンの強靭化は進めつつも、中国市場は重視の企業は多いと感じています。

トイレタリー業界などでは、日本国内の設備投資も、よくよくみてみると、「日本製」を中国でPRして売るためというケースも散見されます。中国の海南島に輸出すれば、そこは第二の香港としてフリーポートとなったため、中国国内の観光客が免税で日本製品を購入できることになっています(足元はコロナの影響がありますが)。

他方で、国際政治的なバインディングも強まっており、そのしわ寄せが、基本的にはオープンでフレンドリーなオーストラリアの民意を悩ませているというのが、同国の内政の選挙の一つの側面ともいえます。

悩みはつきませんし、ウクライナ情勢も影響を与えると見込まれますが、オーストラリアの民意は、どちらを選ぶのか、アジア全域にも影響を与えかねない選挙に注目致しましょう。




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