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いんよう!第10回「はたらく細胞の感想②」

2018年10月23日公開 25分

先週に引きつづき、『はたらく細胞』の感想です。擬人化ってすごい! みたいなことも話をしています。PD-1の話題が少し出てきますが、かなり雑な説明になってしまっています。きちんとお知りになりたい方は記事などをあたってくださいね。

「いんよう!」概要欄


ここからは地引網の収穫です。薄い冊子を作るイメージで自分勝手にまとめています。



★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 

■固有名詞
アニメ
「はたらく細胞」
漫画
「はたらく細胞 ブラック」
「ちびまるこちゃん」
漫画家
本宮ひろ志
声優
早見沙織
研究者
本所庶



■目次
1. 「ソォイ」からの、今日も先輩の横Gがすごい
2. 擬人化における設定の厳密化とエンタメのせめぎあいについて
3. 難しい免疫領域を早見沙織さんで一発解決?
4. おれも擬人化やりたい!よし、じゃあ電解質だ!~伝説への道~



「難を易にする手法の難」


 

1. 「ソォイ」からの、今日も先輩の横Gがすごい

最初~1分30秒



● ちょっと前にいっちーがツイッターでやってたギャグが好き(よう)

https://twitter.com/dr_yandel/status/1045487179110076416?s=46&t=YoJ84v9RkMJzWnAVgJWzRA


よう:あれぐらいわかりやすかったら、おれ、楽しめるよ。
いん:(笑)ああ…ああ…う?
よう:おれ、あれぐらいのレベルでいい。すげーおもしろかったもん、あれなんか。
いん:ああ。つらいな(笑)ギャグの解説も振り返りもつらいなー。んっとにつらい(笑)
よう:いや、それでさー、先週のね、話の続きなんだけども、
いん:い、今の終わりぃ?(笑)
よう:終わりだよ?






2. 擬人化における設定の厳密化とエンタメのせめぎあいについて

1分30秒~9分25秒


● 「はたらく細胞」がアニメ化されて、アウトリーチという観点から見ても素晴らしい作品。免疫系細胞をしっかり概説してて、かつ忘れないように記憶付けしてくれるコンテンツで、専門家がつくるの不可能なレベル。先週の終わりにどのキャラが好きか、という話をしたけれど、あれはすでに細胞の性質を覚えているということ。
日本のアニメの擬人化という手法が発達している。アメリカだと「カーズ」なんかでも車に目が付いている。日本の場合は原型がない。人間の形にして特徴だけとらえている。赤血球なら帽子が赤血球の形をしていて真ん中がへこんでいる、とか。好中球なら白血球だからまっしろ、とか。完全に人間の姿にするのが思い入れもしやすいし特徴が抽象化されてる。
この作品では免疫系以外の細胞を「一般細胞」としてまとめている。白Tシャツに「細胞」と書いてあったりモブにしている。そのばっさりがすごい。(よう)

よう:血管て一番内側が血管内皮細胞でしょう?
いん:はいそうですね
よう:だけどさ、道とかにしちゃってるじゃん、もう
いん:うん。んふふふふ
よう:いやそこも細胞だよ?って思うしさ。
いん:ああ、言われてみれば。
よう:赤血球が、肺で酸素と二酸化炭素を交換するときにちっちゃい部屋に入るけどさ、あれ肺胞でしょ?
いん:そうすね
よう:あれも細胞だけどね?って思うわけじゃん。でもガチャッてドア開けて部屋に入ってくじゃん。
いん:ほんとだ。よく考えたら概念ごとに人にしたりしなかったりしてるんだ。
よう:してるんだと思うよ。あれがなんかね、あまりにも専門家すぎるとあそこにやっぱり違和感があってできなくなっちゃうかもしれないよね。
いん:ああ、それはわかります。厳密性でどこまでいけるかなあみたいなことばっかり考えると、エンタテインメントとしての質を置いといちゃうんですよね。
よう:そうなんだよ。つまんなくなっちゃうんだよね、単純に
いん:ああ、ほんとだな(北海道アクセント)

● SF作品でも設定が科学的じゃない細かいところが気になって興味がなくなるのはよくない、みたいな話をしたけれど(第二回「未来職安を読んだうすい感想② 12分~17分あたり参照)同じだと思う。でも「はたらく細胞」の場合は「違うけどそう処理したんだ。うまいな」と思った(よう)
● アニメは絵柄だけで許せることがある。同時に絵柄だけで許せない、という話にもなる。「はたらく細胞」は読む人に不快感を与えないラインに落としているのがえらい。(いん)
● キャラの味付けの濃さが一般的な水準になっている。(よう)
● 「味付けの濃さ」で思いつくのは本宮ひろ志(いん)
● 本宮ひろ志、確かに濃いのは間違いないけど萌えのほうに濃いわけじゃない(よう)




3. 難しい免疫領域は早見沙織さんで一発解決?

9分25秒~21分25秒



● キャラクターの描きわけだけで許せる許せないという話になると教育効果の話も難しくなる。ただうまく例えればいいわけではない。(いん)
● お役所がキャラ作るとつまらないのは、年配の人のセンスで無難なラインで作ろうとするから。今の需要に応えるようにやらないと(よう)
● 「はたらく細胞」は今の看護学生に勧められたのがすごいところ。(いん)
● スピンアウト作品も多い。「ブラック」はモーニング、「はたらく細菌」は「なかよし」だ。講談社ってことだ。(よう)(注)
● 専門家の文脈で書かれたものは伝わってないということも言いたかった(いん)
● 制御性T細胞は自分の中では早見沙織の声でインプットされてる。これは専門家以外誰も知らないのに、「はたらく細胞」読んでる人はみんなわかるから、ノーベル賞の本庶先生の話の時に出てくると「おおなるほど」と言う。信じられない時代(よう)
● ノーベル賞がこんなにわかりやすかったことはない。(いん)
● メカニズムとしてはシンプルに説明できるという意味で美しい。(よう)


よう:っていうベースはあるにしても、でもやっぱりさ、えっと樹状細胞がいて、キラーT細胞がいて、制御性T細胞がいて、それががんとどう関係してるかっていう話でさ…まあ時間かかるよね、説明するのね
いん:それが「はたらく細胞」一発で、ってすごくないですか
よう:すごい。制御性T細胞の(が?)抑制機能をなくしてるっていうか阻害してるっていうか、ざっくりいうとそういうことになるわけじゃん。そうすると、まあ早見沙織が…
いん:ん?(笑)
よう:早見沙織がキラーT細胞を押さえてるのを、ブロックしてるというと「あ、なるほど」みたいなさ
いん:なりますよね。こんなにノーベル賞級の話を簡単に説明できたことはほぼないです
よう:ないね。




● 登場人物がいっぱいで役割があるので、免疫系はもともとバトル物の群像劇だと思う。いっちーは本当は自分で「これはバトル物の群像劇として説明すればいいんだな」って気づかなければいけなかった(よう)
● 人体を都市にたとえたことはあったけど、なぜその発想が血球免疫に行かないかと言うと、苦手だから(いん)
● 免疫は日本人研究者多いけど、学生としては面倒な領域。自分もちょっと突っ込まれるとわかってない(よう)
● これをきっかけにアレルギーを勉強しなおした(いん)






4. おれも擬人化やりたい!よし、じゃあ電解質だ!~伝説への道~

21分25秒~最後



いん:こういうこと言ってると、悔しい悔しいだけじゃなくて、じゃあ今度は人が思いつかない何かを、例えるなりキャラクターにするなりすればいいじゃないかという話になるわけですよ
よう:うんうんうんうん
いん:で、もうそこまで考えてましてですね
よう:ほう
いん:ひそかに、電解質でなんか、いけないかなあと思って
よう:電解質ねえ
いん:みんな知りたくないです?電解質。わかんないですから
よう:先週ちょっとだけ話題に出たけど、熱中症の話とかさ。電解質ってその、医者になった当初とかさ、最初にあれなんでしょ、その電解質めちゃ大事じゃんみたいなさ
いん:いやそうなんですよそうなるわけですよ。カルシウム、ナトリウム
よう:輸液とかも含めて、点滴も含めて、電解質が人間の体の恒常性の維持とかにとってどれだけ大事かっていう話になるわけでしょ?
いん:そうですそうです
よう:そこをね、うまくじゃあ擬人化のテクニックとかを使いつつ、頭にスポッと入るような説明を、これから、いっちーが、考えると
いん:いえ、あのですね
よう:ちがうんだね
いん:考えた、と言いたかったんですけど、三週間くらい考えてたんですけど
よう:うん
いん:考えつきませんでした(笑)



● 電解質のことを勉強するっていうより擬人化の作品をいっぱい読んで擬人化の文法を体に叩き込むといいのでは(よう)
● カルシウムをどうやってキャラクターにすればいいのかぜんぜんわからない。(いん)
● カルシウムはイメージカラーは白で、見た目と性格にカルシウムっぽい特徴を入れていく感じ。基本的に何かを活性化するカルシウムが来たらまわりが元気になるとか(よう)
● まわりって誰?なにをどうしていいのかわからない。あれ難しい。はたらく細胞はえらい(いん)







(注)「なかよし」に反応してヤ先生が30年以上かけて回収した伏線の話は「ちびまる子ちゃん」(りぼんマスコットコミックス)第6巻151ページを
ご参照ください。

******* 感想 *******

誰かに何かを説明するとき、トピックをばばばばっと考えて、優先順位をつけて、飛ばすものと入れるものをわけて、説明する順序を決めていくわけですが、物事に精通していればしているほど、粒子が細かくなりすぎて説明のための仕分けが難しくなるなあと思います。知れば知るほどわからないことが増えていくのと同じで、知れば知るほど説明も困難になりますよね。専門家が書く入門書の9割がぜんぜん入門書じゃないもんな。

はたらく細胞への愛は、科学コミュニケーションへの愛なんですよね。ヤンデル先生が悔しがってよしおれも電解質でやる、と思ったのはやっぱりすごい。多くの人を引き付けたあの伝説回の布石でありフラグです。回収は約一か月後の回。今年中にそこまで地引網を引きたいところですがどうかなあ。

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