見出し画像

クリエイターを縛らない新しいカタチの事務所WOWs(ワオズ)の立ち上げに至るまで

株式会社Nateeは今日、クリエイター事務所WOWs(ワオズ)の設立を発表しました。

元々僕たちは5年前にTikTokのクリエイター事務所として創業をした会社ですが、実は事務所は3年前に閉じており、現在は広告主とクリエイターの間に入ってクリエイター共創マーケティング事業を行っている会社です。

そんなNateeがなぜ事務所を再開するのか、どんな事務所にしていきたいのか、昔話含めて少し長くなりますが、「人類をタレントに」というミッションを5年かけて走ってきたスタートアップのリアルと、Nateeの新たな挑戦がクリエイター業界の皆さんに伝わると嬉しいです。

「UUUMのTikTok版を作ります」

Nateeの創業は2018年11月。

大学時代から「個性と才能が生きる社会を創りたい」と思っていた自分の中で、自分の好きなものや得意なものを突き詰め、それを発信した結果多くのファンが生まれるYouTuberはまさにその生き方を体現している一番の存在でした。

その証拠にYouTuberをネットワークしたUUUMは、2013-2018年あたりのスタートアップの中でも5本指に入るくらいに飛ぶ鳥を落とす成長ぶりで、時価総額も1,000億円を超えていました。MCN(マルチチャンネルネットワーク)が世界的にも大きなトレンドになる中で、UUUMはその最先端を走っている企業でした。

ただ、Nateeを起業する際に今さらYouTubeをやるのは遅いと感じ、次のプラットフォームが生まれるタイミングが必ず来るはずだから、それが何なのかをずっとリサーチしてました。その辺はテクノロジーやユーザーの動向を細かく見ていくことで、自分の中でTikTokが日本でも流行ることが確定事項として見えてきたんですね。

そこからの動きは早く、「UUUMのTikTok版を作ります」とターゲットを決めて、UUUMのようになるんだとUUUMのことを研究して、UUUMがやってきたことをTikTokでトレースしよう、とそう思っていました。

UUUMがYouTubeの世界で一人勝ちした理由の一つに、初期に圧倒的なスピードでクリエイターネットワークを形成したことがあります。僕たちもそれにならい日本最大規模の事務所になることを目標に、TikTok上でフォロワーがたくさんいるクリエイターにどんどん声をかけていました。

今でこそ年齢層も広がったTikTokも当時のクリエイターと言えばティーンズが中心。多感な時期にクリエイター活動をしているわけですから、それはそれはいろんな悩みが発生しますし、悩むのは決まって夜。クリエイターのマネージャーが採用できるまでは、当時シャワーヘッドもなかったボロいマンションでクリエイターと夜な夜な電話するような毎日でした。

スカウトチームが頑張ってくれたのもあり、無事150人ほどのクリエイターに所属いただき、日本最大規模のTikTok事務所としてプレスリリースを出したのが2020年1月10日。ちょうど4年ほど前のことです。

結構有名なクリエイターも所属してくれていたので、Natee Xmas Collectionといった数百人規模の自社イベントを開催したり、華々しくスタートした事務所でした。

「案件はいつになったらもらえるんですか?」

一方でその当時のTikTokがどんなメディアとして広告主から認識されていたかというと「女子高生が踊ってるやつでしょ?」という意見がまだまだ強かった時期です。

情報収集のために話を聞いてくれる機会は増えていきましたが、実際に案件まで進むことは非常に稀で、案件がない、売上が立たない時期が1年半ほど続いていました。

toBビジネスを起業するには非常に大変な二重苦が存在します。それはリードが取れないことと、事例がないこと。無名の会社のよくわからないサービスではとにかくアポが取れない。アポが取れたとして事例がないので受注ができない。

そうなると今度は毎日のように「案件ないんですか」とクリエイターから言われる日々が続きました。

そしてもう一つの問題は、クリエイターのやりたいことが多岐に渡っていたこと。その当時のクリエイターは若い子も多く、そしてTikTokが楽しくてやっていたら思いの外アカウントが伸びてしまった素人の方も多かったのです。

そうなると、モデルになりたい人、芸人を目指している人、ただ趣味としてやれればいい人、お金を稼ぎたい人、ランウェイを歩きたい人、アーティストになりたい人、とにかくたくさんの要望をもらうことになりますが、その当時駆け出しのスタートアップであったNateeにできたことなどほとんどありませんでした。

華々しくスタートしたのはいいものの、クリエイターには価値提供がまったくできない。クリエイターはもちろん、クリエイターと向き合うマネージャーのフラストレーションも日に日に大きくなるばかりでした。

「このまま事務所を続けていても誰も幸せにできない」

そう思った僕は、事務所を辞めることを決意しました。自分で始め、自分で夢を語り、自分で誘った事務所を、自分で閉じるのは非常に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。社員も事務所をやりたくて集まってきた人たちだったので、僕の意思決定に対してネガティブな反応しかなく、社内はお通夜みたいな空気感が漂っていました。

それでもこっちに進む方が正しいと思ったら個人的な感情を排除して目的地に向かうのがリーダーの仕事。後ろを向いてはいられない、自分の意思決定を信じて前に進むと決めました。

クライアントに向き合うことに全振りした3年前

当時を振り返ると「こんなにTikTokの広告利用が進まないと思わなかった」という考えがずっと頭の中にありました。どう考えてもスマートフォンのコンテンツはショートムービーにシフトするし、実際にユーザーがこれだけ熱狂しているのになんで、といった歯がゆさがどうしても拭えなかった。

余談ですが、フリークアウトの本田さんもDSPを開発後に、結局SSP側もやらないといけないとなって個人で出資をしてSSPも充実させたというエピソードがあります。

「DSP 事業は単独では成立しないことから、本田が個人投資先の広告会社数社に対して、SSP を始めることを提案しました。フリークアウトが日本初の DSP を開発・提供し、また SSP 事業者と連携することで、日本の RTB マーケットが立ち上がりました。」

株式会社フリークアウト・ホールディングス沿革より

ディマンドとサプライの鶏卵問題は非常に難しいのですが、その当時僕はサプライサイド(広告主)に注力することがクリエイターに還元する一番の方法だと信じていました。

リードがない、事例がないの二重苦も、一つまた一つとご縁に恵まれ、事例も生まれていきました。中でもNateeが手がけたTikTokのプロモーションで、3年分の在庫が全部掃けたというエポックメイキングな事例が発生し、「TikTokで棚が動いた」という成果は非常に大きな自信に繋がりました。

事例ができてくると商談の成功確率は格段によくなります。ここまで辿り着くのが非常に大変なのですが、一緒にチャレンジをしてくれるクライアントに恵まれ、ここまでやってくることができました。

事務所をやめてから3年が経ち、クリエイターへの累計還元金額は14億円ほどになりました。直近1年間だけでも7.6億円の額になります。もちろんこれは僕たちの理想とする目標から比べたらすごく小さいサイズだなと思う一方で、僕たちがいなかったら届けられなかった14億円のユニークな生き方の証明だと誇りにも思っています。

これはクライアントに向き合ってきたからこそ生まれたクリエイターへの還元であるのは紛れもない事実でした。しかし、やっぱりクリエイター起点で考える事務所を再開したいという思いはあり、何度か議論を重ねてきて、今の僕たちにならできることがあるんじゃないかと思って立ち上げたのが、「クリエイターを縛らない新しいカタチの事務所」WOWs(ワオズ)です。

どんな事務所にしていくのか

このクリエイターのマーケットに5年ちょっと向き合う中で見えてきたものもたくさんありますし、5年間の中で変わってきたこともたくさんあります。

一番大きい変化は、クリエイターの独立気運が過去最高を年々更新しているということです。以前は事務所がメディア(TV)に対して非常に強い影響力を持っていたため、メディアに出るためには事務所に入る必要性がありましたが、今は個人がSNS上にメディアを持っているので事務所に入る必要は少なくなっています。

加えて昨今立て続けに大きい事務所のスキャンダルが話題になり、クリエイターサイドからすると大きい事務所に入ることによるメリットだけではなく、ある種巻き添えを食らうリスクも大きくなってきた数年間でした。

とは言え個人ができることに限界があるのも事実で、「たくさん来る企業からの問い合わせに応えられないし、適切な金額がわからず交渉ができない」「受注できたとしてスケジュール管理が難しく、トラブルが発生した時に自力では解決できない」等、特に企業対応が苦手なクリエイターは案件やサポートのために事務所に入らざるを得ません。

そしていざ事務所に入ると、「そんなに案件も来ないしサポートもないのに、YouTubeのアドセンスは取られる」「事務所に確認することが増えたり活動が制限されてしまう」「契約書の内容と実態が違って、案件マージンが多く取られているのがわかった」という声を実際にクリエイターから聞いてきました。

WOWs(ワオズ)の基本コンセプトは「クリエイターを縛らない新しいカタチの事務所」です。時代に合わない縛りはこの際一切やめて、過度に事務所の機能を拡張することもせず、提供できる価値を限定するつもりです。

具体的に言えば、案件の対応窓口をすること、案件動画制作のサポートをすること、税務や契約などめんどくさいバックオフィス業務を行うことです。逆に言うとそれ以外のことは現状ではそこまで期待しないでくださいね、ということになります。でも、それこそがクリエイターと事務所がビジネスパートナーとして健全な関係を築いていくやり方なのでは、と思っています。

また、クリエイターにとってだけではなく、広告主、キャスティングをする代理店にとってもNateeが事務所をやる意義は大きいと思っており、なぜなら我々は今まで「実際に売上にヒットする案件」を目標に広告主に向き合ってきた会社で、案件についての理解と進行レベルが高い事務所を作ることができると信じているからです。

人類をタレントに。

Nateeは先日コンタクトセンター向けに生成AIの開発支援サービスをリリースしましたが、生成AIは基本的に今は生産性向上の文脈が強いです。今後労働人口がまったく足りなくなる日本において、AIを活用した企業の生産性向上は不可欠であり、非常に社会的意義が大きいと思っています。

一方で、生成AIにクリエイターがすぐにリプレイスされるかと言えばまったくそんなことはなく、むしろテクノロジーによって新しいクリエイティブが生まれていき、更にクリエイターエコノミーが加速することは間違いないでしょう。インターネットは個人をエンパワーメントする歴史だからです。

WOWs(ワオズ)という事務所名は、その名の通りこの世にWOW(驚き)をたくさん届けたいという意味でつけました。

クリエイターという存在はWOWの塊だと思うんですよね。常人にはおよそ思いつかないような独創性でコンテンツを作り、人々を魅了する。僕個人としてもクリエイターの方々にずっと憧れがありますし、当然尊敬もしています。

そんな可能性の塊であるクリエイターにはめんどくさいことに貴重な時間を使ってほしくない。もっと視聴者やファンと向き合って、コンテンツと向き合ってほしい。そして世界にたくさんのWOWを届けてほしい。Nateeが新たに始める事務所がそんなクリエイターのサポートとなるようにコミットしていきます!

〜番宣タイム〜

クリエイターの方へ
僕たちは活動を縛らず、マージンも契約書に明記した通りオープンにやりますし、案件に特化した事務所です。

ぜひ興味があればいつでもお声がけください!

広告主・代理店の方へ
WOWs(ワオズ)のクリエイターと体制をぜひクレデンさせていただければと思っています。取締役CROの朝戸が飛んでいきますので、お気軽にお声がけくださいませ。


サポートいただいた方には一人一人に感謝の返信を差し上げたいと思います!いつもサポートありがとうございます。