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お祭り騒ぎではなく、真のスポーツの感動とエンターテインメントの力を感じた「MLB at フィールド・オブ・ドリームス」

 2021年8月12日(現地)、アイオワ州ダイアーズビルでMLB公式戦ホワイトソックス対ヤンキースが開催された。名作「フィールド・オブ・ドリームス」のロケ地として有名な場所で、実際に映画撮影のために作られた球場は観光地になっていたが、その隣に、本格的な球場を新設。「MLB at Field of Dreams」と題して、MLB公式戦を開催する計画が進められたが、昨季はコロナ禍で開催中止。今季、いよいよ待望の公式戦開催となった。


 この計画が明らかにされたのが2019年でしたか。名作「フィールド・オブ・ドリームス」はもちろん、原作「シューレスジョー」(W.P.キンセラ)の大ファンとして、あのとうもろこし畑の中の手作りスタジアムでMLB公式戦が開催されて、メジャーリーガーがプレーする、というシチュエーションに興奮しました。

 昨季は残念ながら、コロナ禍により中止になりましたが、今季、いよいよ「MLB at フィールド・オブ・ドリームス」の開催です。

 試合当日、主演のケビン・コスナーがとうもろこし畑の中の球場に姿を現した映像を見た瞬間から、胸が躍り、涙ぐみました。こんなシーンが見られるなんて、少々オーバーに聞こえるかもしれないですが「ああ、生きていて良かった」と思いました。そして、野球が好きで良かった、と。

  心憎い演出が随所に見られました。映画のシーンを再現するために、ライトスタンドのフェンスの一部は外れる仕組みになっていて、まずケビン・コスナーが現れて、球場を見回し、次いで、クラシカルなユニフォームに身を包んだ両チームの選手たちがグラウンドに入場してくる。

 コスナーの挨拶の後、両チームの選手たちが一人一人紹介される。「この特別な場」にいられる誇らしさで、選手の表情は誰もが輝いていました。

 レーザー光線も、大音量の音楽も、スモークもいらない。実況アナウンサーの絶叫や、場内DJもない。「お祭り騒ぎ=盛り上がり」だと捉えている人にぜひ見て欲しい。

「とうもろこし畑から野球選手たちが現れて、ケビン・コスナーと握手をし、試合が始まる」

 この静かな光景が、最高の演出なんです。

 そのために、木造のスタンドを作り、木造の得点ボードを作り、綺麗な芝生を整備して、綺麗な土のグラウンドを作った。お金は相当掛かっていますし、大勢の人が関わったはずですが、華美にするのではなく「名作映画のシーンの再現」のために、ディテールにこだわり、ちゃんと掛けるべきところにお金を掛けているのです。

 

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 最高の舞台に両チームの選手たちも燃えていました。

「野球で一番面白いゲームスコアは8対7だ」(ルーズベルト大統領)と言われますが、考え得る限り最高に面白いゲーム展開でした。

 ホワイトソックスが先制すれば、ヤンキースが追いつき、逆転。熾烈なシーソーゲームを繰り広げて、両チームで実に8本塁打が飛びした白熱のゲームは、アンダーソンが逆転サヨナラ2ランで決着。ホワイトソックスが9対8で勝利を収めました。

 映画のシーンを再現しておこなわれた試合が、映画以上のドラマティックな展開と結末で観る者を熱狂させたのです。

 この「筋書きのないドラマ」こそが、本来の意味でのスポーツの興奮、スポーツの力です。実況アナの絶叫や大音量の音楽、大仰な煽りVTRが無くても、人と人が勝利を目指して勝負し、一喜一憂する姿に引き込まれて、感情を揺さぶられる。観る者に「さあ、明日から自分も頑張ろう」と思わせるスポーツの感動やエンターテインメントの真の力を見た思いです。

 MLBのマンフレッドコミッショナーは「来季も戻ってくる」と明言したそうです。夢の続きがまだまだ見られることを喜びたいと思います。 


写真はMLB公式ツイッターより。

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