ワイヤレスイヤホンの充電が切れるとかいう絶望
最近、世の中の流れに乗ってワイヤレスイヤホンを買った。
有線イヤホンからの脱却である。
イヤホンの音質には比較的こだわる方で、以前使っていた有線イヤホンを買う時は、家電量販店でひたすら“ききくらべ”をしたものだ。
しかし今回は、Amazonのタイムセールで 3000 円弱で購入したことを、ここに告白する。
音質にこだわる時は、自宅のお気に入りのイヤホンやモニターヘッドホンで聞けば良いじゃない。適材適所だ。
さて、今日も1時間ほど残業をして帰路についた。
席を立ち、ワイヤレスイヤホンを耳にはめる。
エレベーターを降りながら自然と指は YouTube を開いている。
音量を 0 にし、片耳だけイヤホンを外して、ちゃんと Bluetooth が接続されていることを確認しながら音量を上げた。
(Bluetooth 接続ができていなくて爆音を垂れ流した、なんてのはあるあるだろう。それが米津玄師さんの歌声ならまだしも、ハイテンションゲーム実況だったりしたら、それこそテンションが凍りつく。)
10分ほどゆられたのちに、1つ目の乗り換え駅。
スタスタと人混みを抜けながら、
(今日は何を食べて帰るかな…また松屋かなぁ…)
なんて脳内でぼやいていると、突然。
私の脳内に直接語りかけてくる声があった。
『Battery Low』
少し低めの女性の声は、流暢な英語で脳内、というか耳に直接流れ込んでくる。
(…あ………)
この瞬間。ハイテンションゲーム実況の内容なんて全て吹き飛んだ。
そうこの女性の声は、ワイヤレスイヤホンの充電不足を知らせる囁き。
充電器はない。
なにがハイテンションゲーム実況だ。
私は超絶ローテンションだ。
ローテンションをこえて、もはや軽い絶望すら感じる。
私はまもなく通勤のお供、いや友を失うのだ。
友を失うなんて耐えられない。少し休んでいてもらおう。
いざという時に、残りの力を振り絞ってもらえるよう。
『Power Off』
眠りにつく前の彼女が残した最後の言葉を、私はしっかりと聞き届けた。
ゆっくりとワイヤレスイヤホンを耳から外す。
街がうるさい。
ありがとうございます。 書きたい時に、書きたいことを。 これからも日常を切り取って描写していきます。