苔と海苔

苔と海苔

最近の記事

2年越しのお礼参り

都会ではランドセルを背負った子供たちがバスや電車で通学する光景をたびたび目にする。私が二年前にようやく使うようになったICカード、いまだにピッとすると少し嬉しくなるICカードを彼らは息をするように使う。都会で生きていることを感じる瞬間である。 田舎者にとって、電車通学はちょっとした憧れだ。私も電車通学のために街の高校を志望していたが、中学生の後半にあらゆることにつまずき、当然のごとく勉強にもつまずき、電車通学は夢と散った。私の園児、児童、生徒、学生の生活はすべて町内で完結した

    • 風呂焚きばあさん

      小学校高学年の私は漠然と核家族に憧れていた。中学生になる頃には憧れが具体性を増し、自分が身を置く二世帯同居に嫌気を感じていることをはっきりと自覚した。 風呂焚きばあさん。それは弟が祖母につけたニックネームである。弟は、姉である私と母から「あの子はこの家から生まれたとは思えん。仏じゃ」と言われて久しい。悪意を人に向けることを知らないような人間だ。 その頃の私は年頃らしく、風呂に入れと言われてもなかなか言うことを聞かなかった。一丁前に口先だけの返事をして困らせるくせに、風呂に

    2年越しのお礼参り