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呼応すること

テキスタイル作家の清原遥さんの個展「祈りの形に似ている」の企画イベントである「絵と音と踊の会」にピアノとして参加させてもらいました。
ドローイングとダンスと音楽のコラボによるパフォーマンスで、自分としては初めての試みでしたが、とても面白く、示唆に富んだ貴重な体験になりました。

この企画のきっかけになったのが、清原さんから頂いたメールでした。
YouTubeにアップしていた僕の音源「Esprits de lumiére」を聴いてくださって、今度自分の個展で制作する映像の音楽にぜひ使わせてもらえないか、という内容でした。
映像の音楽はかねてから関心があったし、機会があればぜひ取り組んでみたいことのひとつだったので、快諾させてもらったのでした。
映像は、清原さんの作品を纏ったダンスとのコラボレイションで、宣伝用のトレイラーは↓のような感じです。

せっかくなので、これを実際にライブパフォーマンスでできないでしょうか、というお話をいただいて、自分のライブとダンス、そして、清原さんのライブドローイングを組み合わせたパフォーマンスをやってみましょうか、となり、今回のコラボが実現することになったのでした。

紙芝居や朗読、絵本の読み語りなどとはコラボしたことはあったのですが、ダンスやドローイングとのコラボは初めてのことでした。
今回は、30分ほどのプログラムで、僕のピアノを軸に、即興演奏を間に挟みながら、個展のイメージに比較的近そうなテイストの自分の持ち曲を4〜5曲ほど選んで演奏し、ラストに映像でも使われた音楽でダンスとコラボレイションするという流れで組み立ててみました。
ピアノの演奏とともに、ドローイングを即興で行っていくという流れでしたので、こちらも、ドローイングの様子に合わせて即興的な演奏を組み合わせながら進めていきました。
どんな具合で進んでいくのか、自分でもわからない部分が多かったのですが、ドローイングの色使いや描き手の筆の動きを見ながら、テンポやタッチ、和音の積み方を替えたりしていると、その時々の空気感に導かれるようなイメージで、自分自身も自由に絵を描くように、ラストに向かって静かに高揚していく感覚が自分の中にありました。
楽器どうしでのアンサンブルとは一味違う呼応のようなものがあって、絵やダンスの動きから生じたインスピレーションが、次の動きを生んでいくような、そんな時間でした。



今回このお話をいただいた時に、清原さんからは「雨乞いがテーマなんです」と聞いて、一瞬「ん、どういうことだ!?」と思ったのです(笑)。
けれどよくよく話を聴いてみると、それはつまり、人の力ではコントロールすることのできない自然現象に対する人々の向き合い方であったり、意図したものと意図しなかったものの出会いであったり、めざす方向がきわめて日常的な営みに根ざしたことがらであるのかな、というように捉えました。
自分も、概ねそういう方向で音楽を作っているので、ひょっとしたら、その部分で、似たところがあったのかもしれません。
今回映像で使用いただいた作品は、このために作曲したものではありませんでしたが、結果として、この個展のコンセプトに寄り添うような形ですっぽりとハマったのは、結構びっくりしましたね。

異なる分野とのコラボは、違う楽器とのアンサンブルともどこか似ているなと思います。互いの空気感やアプローチからインスピレーションをもらいながら、楽曲を演奏したり、即興的に音を作るなかで、一期一会の創作物が完成するという過程を直に体験することができて、演奏する側も、とても良い時間を過ごすことができました。

個展を開いた清原さんは、染織が専門ですが、多様な分野の作品を作られていて、遊び心も感じるマルチな作家さん。そのアプローチにはとても刺激を受けましたし、なにより自分の音楽に引っかかるものを感じてもらえて、選んでくれたことをとても光栄に思ってます。

これからも、こんな形で様々な分野の方とコラボしてみたいなと思いますし、映像の音楽は機会があればもっとやってみたいなと思っています。


ちなみに清原さんの個展は9月23日(日)まで。京都・阪急大宮から5分のアートホステル・クマグスクにて。とてもいい、印象に残る展覧会です。ぜひ足を運んでみてください。
ちなみに、会場で販売しています僕のCDをお買い上げの方に会場限定で、映像作品に用いられた音源「Esprits de lumiére」(アルバム未収録曲)を収録したCD-Rを特典でお付けしてます。しかも、清原さんのミニドローイング付き。レアアイテムですよ(笑)。結構売れているようで、残り僅かのようです。ご希望の方は急ぎ目で会場へどうぞ。

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