洗脳の入り口に足をかけた話

「客層」という言葉がありますね。
年齢、性別、趣向、グレード。ひとくちに客層と言っても、分類は様々です。

でもどの客層にだって、どうしようもないお客さまはいるものです。
しょうがない。人間、いろんな人がいますから。

過去の話ですが、お客さまに洗脳されかけた話をします。

元々は商品のお取り寄せにまつわるトラブルでした。
わたしが間に入った時、そのお客さまは淡々と怒っていて。
理由は伏せますが、お客さまの気持ちはわからないではないものの、明らかに過剰な要求をしている状態でした。

言い分がちょっとあんまりだったので、あえて少し、わたしも態度に出したんです。そうしたらさらに逆上されまして。わたし個人に対しての攻撃が始まったんです。

クズだな、要らないな、なんで存在してるの?気が利かないね。
こんなところで働く資格はない、底辺の仕事してろよ。バカ。頭悪い。

ネットでよく炎上している界隈で見かけるようなワードを、現実世界で、目の前にいる人から直接、大量に浴びせかけられてしまいました。

わかってる。いろんな人がいる。頑張ってここは受け流そう。
そう思っても、普段そんなこと言われないから、ショックすぎて。軽く震えました。

よし、落ち着いてここは一歩引いて落ち度に関しては謝ろう。そう思い謝罪すると、「気持ちが伝わらない」と何度も詫びの言葉を要求してきます。謝るモードのスイッチを入れたわたしは、何回か謝りました。

すると、まあ、わかったよ。とちょっと許していただけました。

その後、お店側を気遣うような発言をバーっとして、自分は理解があるんだ、だから厳しいことを言ったんだ、というような話になりました。

よかった。これで、この場はおさまる。

そう思ったもののその後も会話は続き、いつしか、自分はいかにコネクション持ちで偉い人と繋がっているか、どれだけ博識か、というような話に変わっていきました。

へー、すごいんだ。
正直、話半分で聞いているけれど、相槌は打たないといけないわけです。
でも、「すごいですね」と言うたび、どんどん話が広がり、どんどん話を聞かないといけない状態に陥りました。

ようやく話の切れ目が出来て、お帰りになろうとしたそのタイミングで、
「このたびは、ご不快な思いをさせて、申し訳ありませんでした」
と一言お伝えした途端、またスイッチが入ってしまったんです。

「申し訳、ありませんでしたじゃなくて、ございませんでした、だろう?」

そこからまた暴言の嵐。最初の流れに戻ってしまいました。

助けを求めに行きたくても解放してくれないし、近くに頼れる人も来ないし、何より大声を出さないからトラブルになっていることがわかりにくい状況に陥ってしまい。

この無限ループを、延々2時間超、1対1でやりあってしまったんです。

最後、どうやってお帰りいただいたと思いますか。

徹底的に言うことに従いました。これしかなかった。

金銭的な面での要求は完全にお断りしていたので、わたしのお詫びの仕方の問題だったんです。要求された一字一句、そっくりそのまま申し伝えることで、最後お許しをいただきました。

「誠に」とか「大変」とか付けると、それはそれで怒ってきたんです。その言葉は余分だ、なんて言って。
だから最終的には、「このたびは、申し訳ございませんでした」という一番シンプルなセリフを言うことで、解放されるに至りました。

これ、ごく普通のお店の一角で起きた話です。

これだけやりあって、最後従うのって、無茶苦茶ストレスなんですよね。なんとも表現しがたい無力感、敗北感。でも一方で、解放されたことによる安心感も強く覚えました。

そう、この安心感が、よくないのです。

話をしている途中でも、時折、わたしのことを認めたり気遣うような発言が飛び出していました。これを聞いて、わたしは少し安心して、そろそろ解放される!と期待し、でも踏みにじられて、これまでよりもひどい言葉を投げられる。

安心からの、蹴落とす流れ。で、従わせて、また安心させて、もっと蹴落とす。

こうやって洗脳ってされていくんだなあ、と、お客さまと対峙しながら感じました。逃げるためだからと分かっていても、やっぱり従うのは、とても後味が悪い。



店頭だったからよかったけど、家庭とか、個人の仕事でのトラブルとかだったら、まいっちゃうかもな。

こういう案件が、世の中にはごろごろしているんだろう。
そう思った昼下がりでした。

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写真は栃木の大谷石資料館です。
雰囲気合うかなと思って。ちなみにこういうところに一人で行くのが結構好きです。

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