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「魔法除去細菌兵器」のカルテ(クソカード医学会用資料47)


まえがき

 「魔法除去細菌兵器」は原作の海馬vsイシズ戦で海馬が使用したウイルスカード(分類的には魔法カードの一種と思われる)で、その効果はなんと「相手の手札及びデッキの魔法カードを10枚選び墓地に置く。」という意味不明なレベルで強力なカードでした。
 再利用の難しい魔法を、10枚も、手札とデッキから、選んで墓地へ……全デュエリスト必須なのでは……。しかもそんなカードを「死のデッキ破壊ウイルス」と併用するという鬼畜さ。
 しかしながらそんなパワカもイシズの「現世と冥界の逆転」というさらなるパワーカードで逆用されています。兄様も姉様も大人げない。

 そして『遊戯王真デュエルモンスターズII 継承されし記憶』の攻略本付属カードとしてOCG化。「死のデッキ破壊ウイルス」も一時期は制限~禁止カードであったのですから、このカードも当然相応のパワーを秘めているはず……にも関わらず現代ではまったくの無名。これはどういうことでしょう。
 今回はそんな細菌兵器を治療します。(意味わからん字面だ……)

魔法除去細菌兵器について

 患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)

付属していた攻略本やVジャンプなどでは
「相手がサンダー・ボルトやブラック・ホールを使ってきたら、破壊される前に生け贄にしよう」
的なことが書かれていた。それ結局モンスター全滅してんじゃねーか!

 めっちゃ弱毒化してますね
 えーまず、効果の発動にモンスターのリリースが必要になっています。「死のデッキ破壊ウイルス」にリリースが必要だったのを踏まえて、こちらもこのコストを付けたのでしょうか……まあ、原作通りだと破格すぎますし、コストの追加は百歩譲ってわかるとしましょう。
 地味に相手の手札から墓地に送れなくなっている点、墓地に送るカードは相手が選ぶ点もさすがに原作のままでは強すぎるので、さらにもう百歩譲り許すとしましょう。後退しすぎてもう崖っぷちである。
 しかしながら、相手のデッキから墓地に送れる魔法カードの枚数=リリースしたモンスターの数なのはさすがに弱い。
 現代の遊戯王ならEXモンスターゾーンもあるので6枚、エクストラリンクを決めて最大7枚墓地に送れますが、当然、そこまで展開できるならそのまま殴るなり制圧するなりすれば良く、わざわざ自分のフィールドを更地にしてまで相手のデッキ破壊を行う意味がありません。
 しかもトークンの利用は不可。どことなくアンチホープが脳裏にちらつきますね。

 また、デッキ破壊系統のデッキなら使えるかというとそうでもなく、伝統的な【デッキ破壊】や【絶望タワー】ではそれらのギミックの回転率を上げたほうが効率が良いので事故要因にしかならず、【神牌】や【封鎖型クシャトリラ】でも盤面にモンスターを残しておいたほうが都合がいい上に、デッキ破壊速度が当の「魔法除去細菌兵器」より段違いなのでやはりいらない。
 つまり、デッキ破壊効果なのにデッキ破壊系統のデッキで使いづらい

 トドメと言わんばかりに、そもそも昨今の魔法カードは墓地効果持ちや墓地からの再利用可能な場合が多く、墓地へ送るカードを相手が選べるのもあって、「魔法除去細菌兵器」を使うと相手が得をする可能性もかなり高いです。【ウィッチクラフト】や【閃刀姫】対面においてはもはや自殺同然です。

 問題点をまとめると、
①リリースが複数枚必要
②デッキ破壊デッキには組み込みづらい
③相手の魔法を墓地に送ることで相手が得をしかねない
 となります。

 さて、まず一番の問題とも言える①のリリースをどうにかしましょう。
 リリースといえばそう、「闇黒世界ーシャドウ・ディストピア」でしょう。

 リリースを相手モンスターに肩代わりさせることで「魔法除去細菌兵器」は、コストによる盤面除去を行いつつ相手のデッキ破壊を行うカードとなります。
 さらにディストピアのサーチに使う「悪王アフリマ」はリリース効果でビーステッドもサーチ可能なので、自分の場ががら空きになったとしても、手札から妨害と展開を行える点で相性がいいです。

どんなデッキにでも入ってくるなキミ……

 そしてビーステッドを加えてドラゴン族主体にしたことで「天球の聖刻印」も使えます。こちらもリリースを必要とする効果なので、リリースを相手に押し付けつつバウンスというこれまた無慈悲な効果になりますし、自身がリリースされれば後続を用意できる点でも「魔法除去細菌兵器」やビーステッドと好相性です。

出しやすいのも偉い

 「天球の聖刻印」を採用することで、③の魔法墓地利用・再利用問題についてのかなり簡単なアンサーも見つかりました。こいつです。

海馬のウイルスカードを救うために、海馬と戦ったウィラーのエースカードを使う。エモい

 「ホワイト・ホーンズ・ドラゴン」は召喚・特殊召喚時に相手の墓地の魔法カードを5枚まで除外し、その枚数に応じて攻撃力を上昇させる効果を持ちます。
 「魔法除去細菌兵器」で上述の「天球の聖刻印」を含むモンスターをリリースし、聖刻印の効果で「ホワイト・ホーンズ・ドラゴン」を特殊召喚。そのまま相手の再利用を許さず即座に墓地除外を行えるというわけです。

 相手がしめしめと墓地へ落とした魔法カードを即時除外。自殺同然だった【ウィッチクラフト】や【閃刀姫】相手の墓地送りも、逆に完封まで持っていける可能性のあるコンボです。
 さらにこの「ホワイト・ホーンズ・ドラゴン」はビーステッドと同じ闇属性でレベル6のドラゴン族なので、ルベリオンのリリースコストなどとしても使用できます。

 さて、しかし。このコンボには問題があります。
 そもそもこの「相手のデッキの魔法カードを除去・除外」という行為になんの意味があるのかという問題です。
 問題点②の通り、デッキ破壊としては使いづらいですし、そもそもビーステッドにデッキ破壊と相性のいいカードは他にありません。ただ漠然と相手のデッキを減らし墓地からの再利用を封じるだけでは、結局のところリリースの割に合わないのでは?
 相手のデッキから魔法カードが減ってくれると嬉しいエースカードでもいれば別ですが……。

闇黒深淵細菌兵器

カオス最強!

 あ、いた
 「カオス・アンヘルー混沌の双翼」は光属性・闇属性のモンスターを素材にシンクロ召喚すると、戦闘破壊耐性と相手のモンスター効果を受けなくなる強力無比の耐性を得ることができます……が! 魔法・罠カードには無力なままです。
 「魔法除去細菌兵器」で相手がまっさきに墓地に送りたいのは墓地利用・再利用しやすいカードですが、それがなければ汎用魔法カードを選ぶ可能性は非常に高いはずです。
 相手がアンヘルを除去する「サンダー・ボルト」、効果を無効にする「冥王結界波」「禁じられた一滴」などを落としてくれればしめたもの。相手のアンヘル突破はかなり厳しくなります。
 そう都合よくそれらのカードを相手が落としてくれるかですが、「魔法除去細菌兵器」を使用した時点ではこちらの場にアンヘルはおろかモンスターはほぼいない状況になっているので、モンスター除去や効果無効の魔法を落とす可能性は割りとあります。(というか試運転中に実際よくあった)

 そしてそのアンヘルのシンクロ手段ですが、ビーステッドやホワイト・ホーンズが全員闇属性レベル6なので、レベル4光属性さえ用意すれば簡単に出せます。ディストピアのシャドウトークンもレベル3なのでこれ2体とレベル4でも出せます。お手軽簡単アンヘル。
 相性のいいレベル4ドラゴンはこのあたりですね。

未実装だと「百檎龍-リンゴブルム」とかも相性よさそう

 ビーステッドで妨害しつつ自分の盤面を固め、隙を見て「魔法除去細菌兵器」とディストピアで相手のモンスターを除去しつつ魔法を墓地に送り、「ホワイト・ホーンズ・ドラゴン」でそれを除外して返しのターンのアンヘルにつなぐ。
 時代錯誤の罠カードを軸に、最新カードたちがなんかちゃんと噛み合ってる……。

 こうして生まれた細菌兵器を治療するためのデッキが【闇黒深淵細菌兵器】です。

相性のいいカード

 【カオス】や【ドラゴンリンク】に近いけど、ドラゴン展開やサンダードラゴンは不要な変わった構築になった。

・「カイザー・グライダーーゴールデン・バースト」
 フリーチェーンで自分モンスターをリリースして特殊召喚できる。もちろんディストピア対応。レベル6光属性のドラゴン族なので、「暗黒竜コラプサーペント」とでアンヘルになる。

・「闇のデッキ破壊ウイルス」
 やっぱり相手モンスターをリリースしつつ魔法破壊したり、ラビュリンスみたいな相手なら罠を破壊したり。

・「烙印の獣」
 フリーチェーンの除去。魔法は事前に除去れても罠でアンヘルが処理される可能性はあるので、なるべく相手が伏せた罠カードを割る。ディストピアのトークンが相手の場にも出るので、不意の「無限泡影」や「拮抗勝負」は怖くないのでセットカードを最警戒。

・「宣告者の神巫」
 ビーステッド用に墓地を肥やしつつバロネスを狙う枠。効果無効にされてもアルミラージの素材に。たまにヌトスミサイルも撃ったり、ルベリオンとでレベル10になったり。

・「悪魔嬢リリス」
 ディストピアとのコンボでフリーチェーンのコストによる除去を行いつつ罠を持ってくる……けど、デッキの罠は少なめにしてるので、どちらかというと普通に自身をリリースしてビーステッドの餌になることが多い。

デッキ構築

 アフリマでディストピアをサーチしつつ、ビーステッドの除外コストにするのが理想的初動。リリースを必要とする魔法・罠は多すぎても事故るので、「魔法除去細菌兵器」以外は入れないほうが無難。

 使用感はビーステッドとディストピアの噛み合いが良く、アンヘルや聖刻印も普通に強いのでかなりいいです。初手でダブつくと初動でつまずきやすいのが欠点ですが、「魔法除去細菌兵器」も単純な除去としても使えるのでそこまで邪魔にならず、「ホワイト・ホーンズ・ドラゴン」とのコンボも意外とよく決まりますね。
 さすがに環境トップクラスと殴り合うのはキツいですし、罠主体のラビュリンスなんかは天敵ですが、たぶん私の治療デッキとしては過去最強かと。重症度は5寄りの4。ビーステッド頼りなのは多分にありますが。

実績。相手は墓地の魔法をよく利用する【ドラグマ堕天使】。思惑に綺麗にハマってくれた。そしてこのあとサレンダーされた。

あとがき

 デッキとしてかなり上手くまとまったので満足です。
 最初は聖刻軸で組んだんですが、実際組んでみると聖刻要らんなとなり、聖刻印のみとなりました。
 刺さるかどうかは相手次第ですし、医学会で披露してもコンボの意図が伝わらずパワカでゴリ押してる感じになってしまいそうなのが欠点といえば欠点ですか。

 第12回クソカード医学会は「インフィニティ・ダーク」で参加しようと思っていたのですが、お昼で終わる予定の休日出社が21時すぎまで長引くという逆ミラクルで泣く泣く諦めました。労働はやはり悪。
 第13回でリベンジですね。

 次回は次の患者が見つかってないので未定です。

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