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自分が何者か考えた結果、「ゲイである」ことしか残らなかった話

「30歳にして転職経験3回」
この言葉は一般的にどう聞こえるのだろうか。
ほとんどの人にとって、あまりよろしくはない響きであることは確かだろう。
ましてや同じ「転職3回」でも、向上心溢れるアクティブ転職モンスターと、防戦一方逃げ足の速いネガティブ転職モンスターの2つに分かれるが、僕の場合は後者であるので目も当てられない。

人生で4回目の退職届を提出した時、「もう正社員として働くのは厳しいな」と思った。
まず、まともな企業ならこんなリスキーな人間は採用しないだろう。
そして、自分の気持ち的にも組織の中でこれ以上働くのは限界に感じていた。
そう感じてしまう原因はつまるところ自分のセクシャリティ——すなわち、「自分がゲイである」というところにいきあたるのだった。

本来、仕事をする上で各々の性的指向なんて関係の無い話である。
実際、そんな部分に捉われずに組織の中で自分の力を存分に発揮している当事者も沢山いらっしゃるだろう。
そんな当たり前の事実を鑑みると、「仕事が続かないことをセクシャリティのせいにするなんてただの言い訳じゃないか!」と思う人もいるだろうし、僕自身だってそう思い過ごしてきた。
「それとこれとは別問題」「自分のメンタルが弱いだけ」ってな具合に。

でもね。
そんな言葉達の方がよっぽど本質から目を反らした言い訳である、と最近思う。

退職をする時なんて、様々な要因が重なり合った結果としての決断であることがほとんどで、一概に誰のせい、なんのせい、だなんて言えないのだろうし、それは僕にとっても同じだ。
しかし、少なくとも僕にとっては「ゲイであること」が働く上でぶち当たる困難の根幹となっているのもまた事実なのである。
この事実にきちんと向き合い対策を練らねば、一生同じことを繰り返すだけだろう。

いや、同じことを繰り返せたらまだ幸せな方で、現実は転職歴という自分が生み出した過去と、もう若いとは言えなくなった年齢のために、同じ失敗を繰り返せる程の機会すら現在進行形で失っていきつつあるのだ。

では一体、ゲイであることの何が問題なのか。
僕の場合は、さしずめ「将来のイメージが沸かない」という言葉に集約される。
10年後、今と同じ職場で変わらず四方八方に嘘をつき続けながらも働いているイメージがどうしても沸かない。
同僚の態度がそっけない日には、「たまたま機嫌が悪いだけ」なのか、「ゲイであることがバレて距離を置かれているのか」が分からず不安になるし、結婚適齢期をとっくに過ぎても未婚であることを影で馬鹿にされている上司は将来の自分を見ている様である。

そんな環境の中で職務上の困難にぶち当たると、何の為に働いているのか分らなくなり、退職の道を選んできてしまったのが今までの人生である。

そうして、ぼんやりと「将来はフリーランスとして生きていくしかないかもな」と、考える様になっていった。

とはいえ、営業系職種を転々としてきた僕には特筆すべきスキルもなく、安直に「フリーランス おすすめ」とか「フリーランス 仕事」等の検索ワードを入力しては、現実の壁に苛まれるのであった。
当たり前だが、経験が物を言う世界で僕の様な安易な考えの人間が安易に始められる生き方では無いのである。

そして、「もしゲイであることが活かせる仕事があれば、自分は生まれてから30年間分の経験値を持っているのにな~」なんて惚けたことを考えては、本当に自分は「ゲイであること」以外の何者でも無いんだな、と思い知らされるのであった。

そんな中、ある日知人からオウンドメディアの共同運営のお誘いを頂いた。

色んな人のちょっとした生き辛さ、共感、働き方・生き方のヒントが集まる場所。
今抱えている心の痛みは、より大きくなるための成長痛であって、思春期の頃に悩んだ膝の痛みもいつの間にか忘れていたように、その痛みを懐かしく思える、そんな日を迎える為の一歩を後押しできる様に——、との想いでサイト(SEICHOTSU magazine)を立ち上げた。

フリーランスとしてとか、まだまだそんな次元の話では無いのだが、ずっと感じてきたゲイであることのやり場のない気持ちを、どうにか昇華させたいと思っていたので、まさに渡りに船の様なお誘いだったわけである。
その為、基本的にこのサイトでは当事者ならではの考え・経験にフォーカスした記事を綴っていこうと考えている。

ちなみに、こちらがサイトで書いた自己紹介記事なので、興味が沸いた時にでも読んで頂けると、非常に嬉しい。

記事を通して主義・主張を訴えるつもりなんてさらさら無いが、僕の記事へ辿り着いた人がコーヒー片手に「こんな人もいるんだな」程の距離感で何か感じて貰える様な文章を作る。
それが叶えば最高だ。

そしてnoteでは、LGBTQのことに寄らず、より日常的で等身大な内容を書いていきたい。
「こんな人もいるんだな」から「こいつってこんな奴なんだな」に、距離感を縮めることが目標だ。

そう思い、とある年の瀬にnoteを始めてみたのだった。

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