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つくることを通じた心の復興ー能登地域に対して僕たちVUILDにできること


①メンバーの被災に直面して

はじめに、能登半島地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

能登地域である羽咋市の実家に帰省していたメンバーの沼ちゃんが被災したということもあって、年始早々、社長としては気が気でない日々が続いていました。

1月9日に本人の顔を見た時は無事でホッとしたことを覚えていますが、沼ちゃんやご家族になにかしてあげたい、何か役に立ちたいと、メンバー皆が強く思ったと思います。

それから僕たちにVUILDにできることはないだろうかと、チーム内で議論を重ねてきましたが、能登半島地震から1ヶ月が経ち、ようやく方針が固まったので、対外的に活動を発信していこうと考えています。

②何もできない無力さを実感した大学4年生

思えば、2011年に起きた東日本大震災は、当時大学4年生として建築を学んでいた僕にとって、建築や建築家の在り方を問い直す契機となりました。

人々の住まいをつくる「建築」を学んできたにもかかわらず、大きな災害が起こった時に初めて、誰かの助けになるように直接的に働きかける能力が自分にはないと気がついたのです。

大学で学んできたのは、絵を描きアイデアを練ることでしたが、それを実現する手段までは身につけてこなかった。その無力さを痛感したことを覚えています。

この大きな挫折から、自分でもモノをつくれるようになりたい、行動を起こせるようになりたいと思い、大学院では3DプリンターやShopbotを扱う研究室の門を叩き、ものづくりを学びました。

大学院卒業後は、町に工房を開き、市民や一般の方々の「つくりたい」ものを伺い、それを実現してあげるという「モノの翻訳家」のような仕事を始めました。A4用紙1枚に素人が描いたスケッチから、目の前で家具をつくる。そんな活動を1000本ノック的に100人以上の人々に届けてきました。  

福岡県朝倉市での復興WSの風景(2017年

③「つくる」ことで「いきる」

そんな実績と自信がついてきた頃、2017年にMistletoeの孫泰蔵さんの誘いで、彼が主催し福岡の高島市長らと進めていた防災プログラム「Pop-up Commons*」に混ぜてもらうことなりました。

*Pop-up Commonsとは、移動可能な支援拠点を活用し、地域コミュニティ形成などを行うことによって、災害に強いまちづくりを目指す防災・減災の新しい取り組み。普段は地域住⺠のコミュニティの場として活用され、災害時には被災地に出動し支援を行う。平時から利用しておくことで有事の際にも、有効活用できることを目指している。

全て移動可能な災害に強いまちをつくる

その活動の一貫で、2017年7月に福岡県朝倉市で発生した九州北部豪雨の現場に急行し、被災者の方々が「必要としているモノをその場でつくる」という実践を行いました。

具体的には、2トン車に発電機とShopBotを積み、現地で被災した木材を活用して、①お茶ができるテーブルと②ゲートボールラックの2つを即興でつくりました。

被災木でつくったゲートボールラック(2017年

避難所暮らしのお爺ちゃんやお婆ちゃんたちに、いつもの①お茶会と②ゲートボールという日常を取り戻してあげるために、それらを成立させていた「場の復興」が大事だと考えたためです。

みんなでつくったお茶会のための机(2017年

機械で部品を削るものの、木材の研磨から組み立てまでは皆に参加してもらいました。完成したとき、今まで歩けなかったお婆ちゃんが、飛び跳ねて走って大喜びしてくれた光景は一生忘れません。「つくることで、笑顔になる」、そんな心の復興の在り方を実感したのでした。

こういった経験を経て、「いきるとつくるがめぐる社会へ」というヴィジョンを言語化することができ、2017年11月にVUILD株式会社を創業したのでした。

④被災者の心を、ものづくりで建て直す

創業後の6年間で、全国に生産基盤をつくるCNCルーター「ShopBot」販売事業、誰でもどこでも木材加工にアクセスすることを可能にした木材のプレカットサービス「EMARF」事業、共創型で場づくりを行う「VUILD PlaceLab」事業、革新的な建築を生む「VUILD ARCHITECTS」事業など、誰もがアイデアをカタチにできる仕組みを社会へ実装する取り組みを行ってきました。

家具から始まり、内装、建築と事業を広げていきましたが、2023年から従来の家づくりの在り方を再考し、素人でも家を建てることができる仕組み「NESTING」を開発し、遂に家づくりのソリューションを携える事ができました。

実際に素人の力で家を建てることができた(2023年

▶︎NESTINGのプロセスを示したnote『素人でもつくれる高品質住宅ー1か月で建つ1000万円の家』

これなら災害時にも役立つことができるだろう。そう思っていた矢先に起きた能登半島地震。

かつて自分自身に問うた疑問が繰り返されました。建築になにができるだろう、僕になにができるだろう。13年前と明確に違うのは、「つくることで人を生かす」ことが実際にできること。そしてそれを一緒にできる多くの仲間達がいることです

⑤今後の具体的な活動内容

応急対応のフェーズから復興を考え始めるフェーズに入ってからが、僕たちの力が発揮できると思っていますが、今こそそのタイミングだと考えています。

具体的にVUILDとして活動していく内容は下記です。

①短期】ものづくりワークショップの実施
2月〜3月にかけては、金沢21世紀美術館のプロジェクト工房にShopBotを設置し、金沢市に避難されてきた方々が必要としているものの製作や、被災した家屋や家財などの修復やアップサイクルをワークショップ形式で開催したいと考えています。

②中期】沼田家の再建プロジェクト
今回の地震で被災された、VUILDメンバーの沼田汐里さんのご実家を、NESTINGの仕組みを使って再建するプロジェクトに取り組みます。2月6日には現地での地盤調査を予定しており、5月までの上棟を目指します。

▶︎沼田汐里さんの被災体験を記したnote『「被災した」あの日から1ヶ月。現状と前に進むための行動』

③長期】「地域の力で復興する」を後押しする
VUILDが持つ全国200の生産ネットワークとNESTINGの仕組みを活用すれば、被災された多くの方々に対しても、②での実践を届けられると考えています。短期的な仮設住宅ではなく、暮らしを取り戻すための復興住宅として、能登の文化や歴史を継承した住宅キットを開発すること、そして倒壊してしまった家の部品や大事なものを継承しながら、「自分たち」や「ボランティア」の力で復興することを後押ししたいと考えています。

現状さまざまなご相談を頂いていますが、問題となるのは財源です。僕たちが展開する小さな活動が、被災者の皆様の希望となることを願って、一旦は自分たちで出来る限りのことはやろうと思っています。

今後定期的に発信をしていこうと思っていますので、是非応援頂けたら幸いです。

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