早稲田実業学校 高等部(早実)古文 平成26年度【徹底解説】

今回は、早実高等部の古文、H26年度の解説です。
早実古文は、苦手にしている受験生がとても多いですが、しっかりと対策をすれば得点源になる問題です。

本解説を通して、「このくらいわかっていれば良いのか!」というラインをわかってくだされば幸いです。

H26年度の出典は、今昔物語集でした。
早実では、説話集、仏教説話、非常によく出ます。
今回は古今、今昔物語集、宇治拾遺物語集、十訓抄など、頻出のものは題材を覚えておくといいと思います。ある程度、各物語に関してベースとなっている背景知識があれば、文章が圧倒的に読みやすくなります。

早実の古文であっても、単語や文法が分かっているとぱっと解けるものもありますが、今回ようなものは、比較的単語、文法の力ではなくて、文脈力の把握に尽きる作品です。
登場人物が男が2人ということで、誰のどんな状況のセリフかということを 曖昧にしてしまうと、設問で迷うことがあるので、状況判断をしっかりしていくということがポイントとなっていきます。


【問題文・設問】

〈問題文〉

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〈設問〉

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〈状況判断〉

今回の場合ですと、ある雨の夜、男が雨を避けて暗い穴に入っていた。
そこにもう一人の男が入ってきた。
「最初に男がいて、そこにもう一人が来たんだ」ということを分かったうえで読むということが1つ。
そして部分的に古文、原文の横に現代語訳がついているので、古文というよりは、ほぼ現代文の読解のような形で文脈を把握して読んでいくことができるということです。
この文章は、中学生に出題するには分かりにくかったんでしょう。

【解説】

〈問1〉
「男おそろしと思ふこと限りなし」とありますが、この男は何によっておそろしいと感じているのでしょうか。
闇の中で音だけを頼りに相手の正体を探っているからということですね。
これは本文から抜き出し問題ではありませんが、
本文の中に「音が」というところが出てきましたね。
そして、「その後にいぬる音す」なんていうところがあるから、音だけが頼り。
なぜなら、真っ暗だからです。
そしてその後も同じページの後ろから2行目に、「耳を立て聞きいたるに」とあることから、耳で、音で聞いて判断している描写というのが続いているということがわかります。

答え:音


〈問2〉
A、B、C、Dの人物を指す言葉から、最初に墓穴に入った人物を指しているものはどれでしょうか、という問題です。
Aは後から入ってきた男が最初に入ってきた男の近くに来た場面です。
そして何か自分の持っていた手荷物を床にドサドサ置いていく場面。

Bはそれを聞いている最初からいた男。
ということは、最初からいた男は耳を澄まして誰が入ってきてどんな様子かを聞いているわけということです。この最初からいた男は身分が低いけれども、結構思慮深くて頭のいい男だったため、いろいろ想像をめぐらしたというような文脈になっています。

Cは今来たるものですから、後から来たものです。

Dも後から来た男、元の男ではなくて、後から来た男。
神様、墓穴に住んでいるのかなと思ったっていうことになります。
ここは冷静に判断して行けば、最初からいた男が後から来た男の様子を耳をそばだてて聞いているというシチュエーションを分析できるのではないかと思います。

答え:B


〈問3〉
それぞれに対応するもの言葉を探す問題は、場面をゆっくり見ていくと良いです。
まず、「ものをどさりとおろした」ということは、袋をよっこらしょとおろした。
そして3番のところは、「次に物となるものをおく」この物となるものは、後から4行目にも書いてあるから、藁で作ってあるのかな?と考えます。
7番はページが飛ぶが、よく○○たるものですね。何かというと餅を置いておいたわけです。ここのシチュエーションで、文脈から読み取ることができますね。
ですから、○○○(問題文)だから、餅ということがわかる。これは全然難しくありませんね。3番がちょっと迷うかもしれないけれども、7番は特に簡単に選ぶことができると考えます。

答え:2→袋 3→藁 7→餅

〈問4〉
アは1人は墓穴からすぐ逃げ、すぐ逃げていません。また、後を追いかけない。
ウは最初に人物が後から来た男に声をかけていません。静かに身を潜めて耳をそばだてているわけです。
エは親しげに話し始めません。
オは、しくしくと泣かない来ません。この2人の交流はないわけだからです。
ということは文脈で最初の5行、10行の所を読んでいると、1人は静かにしゃがんで耳をそばだてて、1人はよっこらしょと荷物を置いてから座ったっていう状況だから当てはまります。

答え:イ

〈問5〉
ここは、人の声、そして○○(問題文)と言って、想像している場面です。
そしてここは本当に鬼がいて食べちゃったのかなという想像になるので、鬼がいると思ってしまったシーンですよね。いろいろ想像を巡らせています。だから、前半のところは人、人、誰か後から来た人、そして鬼は最後に入れていけばいいでしょう。

答え:1ア 2ア 3イ


〈問6〉
最初の男の描写である○○(問題文)のところで、ここと同じですから最初の男の所を「どういう風に描写しているか」を確認していきます。
思わぬところへしたるやつかなということは、得したな、最後も後から来た男が怖くなって逃げてしまい、色々物を置いて行ってしまいました。
それを棚から牡丹餅のように思いがけずもらうことになった。自分の手に入れることができたということですから、思わぬの一番最後の所を選べばいいわけです。

答え:思はぬ


〈問7〉
「さればこそ」はやっぱり人間だったのかの部分ですのでアでいいですね。

答え:ア


〈問8〉
偶然でしたが、餅を食べてしまった。そうしたら後から来た男が餅を置いのだけれども、食べられてしまいました。そのため、あるべきところに餅がない。「ああ怖い、あの餅はどうしたんだろう」という状況になります。
そしてそれが怖くなって逃げて行っちゃったわけだから、しめしめと思います。丁度いいタイミングで自分が餅を食べたから、相手が怖がって気味悪がってくれて出て行ってくれたということです。
ということは、良いタイミングで食べたから命拾いして、後から来た男は逃げて行っちゃったからベストタイミングだったということですよね。
これは文脈をいかに把握しているかでいいと思います。

答え:ウ


〈問9〉
元の男について語り手はこの人物をどのように判断しているかという問題です。
アは知らない人との会話を交わす。これは思いやりのある人物ですが会話を交わしていないので違います。
イも鬼退治もしていないですから違いますね。
ウは、大切なお供え物をするどころか餅を食べちゃった。このようなシーンはありませんから違いますね。
オは迷うかもしれないですが、危険な場所を察知する判断力はないからじっと耳をそばだてて静かにしていたのですし、たまたま餅を食べたらそれがいい方に転じたっていうような状況ではあるので間違えになります。
答えは、ラッキーなことに自分の手に置いていったものが入るということですから、エを選んでいけばいいでしょう。

答え:エ


〈問10〉
今昔物語集よりも後で、鎌倉時代のものを選べばいいと思います。
この辺りはベタな問題しか出ませんから、しっかり点数を取っていきましょう。5秒で選ぶことを意識して下さい。

答え:エ

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