漫画原作者という名刺をいただいた。

先月頭、自分が原作を描いた漫画が初めて掲載されました。

こちら、たくさん読んでいただいて、いろんな感想をいただいて、めちゃくちゃ勉強になってます。ありがとうございます。精進します。





会社を退職して約3年半。
何者でもない時間をちまちま過ごし、ようやく初対面の人に自己紹介ができるようになった。

別に一本読み切りが載ったからといって飯が食えるようになるわけじゃないし、この先こそがハードな道程であることがわかっているので浮かれる気持ちも全くない。苦しさは何も変わってない。向こう岸の見えない川を延々泳いでいて、ようやく一呼吸息継ぎができた。せいぜいその程度。
だけども。
だけども。

それでも、「漫画原作を描いています。」と名乗れるようになったことは本当に嬉しい。


整骨院などで「お仕事何されてるんですか」と聞かれた時、「ニートなんです」と言って気まずい空気にさせるのが耐えられなくて、会社でまだ働いてる設定で話していた。数年前上司に怒られた時のエピソードをついこの前あった出来事かのように話す度、惨めな気分になった。
「漫画の原作を描いてるんですよ。」と、正直に言えるのが本当に嬉しい。

なんでも話せたはずの大学の友人たちがどんどん社会人として立派になっていく一方で、自分はじわじわ腐っていった。会うたびに自虐や泣き言に付き合わせてしまうので、みるみる会う頻度が減っていった。自業自得だが悲しかった。
「読み切りが載ったから良かったら読んでくれ。」と、そう言えるのが本当に嬉しい。

騒がしい家族LINEが嬉しい。
友達から来るDMが嬉しい。
昔仲良かった人のいいねが嬉しい。
久々に開かれる飲み会が嬉しい。
大切な人たちの「読んだよ」が嬉しい。

自分の漫画に対しては色々思うところがあるし、毎日ただただ絶望と研鑽という感じで緩む余裕もありゃしないが、
掲載後、周りの人とのコミュニケーションの中には確実に嬉しいと言える瞬間が何度もあった。

そりゃそうだよな、と思った。

俺は、漫画を描くために漫画を描いているわけではない。
俺は、社会とのコミュニケーションのために漫画を描いていて、
つまりは、今まで出会った全ての人達のために漫画を描いているんだと、改めてわかった。
俺は人が大好きだ。
みんな仲良くして欲しい。
本当はみんなと仲直りしたくて、みんなとわかり合いたい。
だから漫画を描くんだと思う。

全ての人と仲良く在ることは不可能であるという事実に、いまだにフレッシュに打ちのめされてしまう。
だけど。
もし距離が離れていても、距離が離れていることが適切な関係性だったとしても、作品だけは届く可能性がある。
それはすごい希望だと思う。
表現活動は、エコーだ。
自分の表現は社会に広がっていき、その反射を観ることでようやく作家は自分の現在地を知るんだ。
無視する人は無視してくれてよくって、
気になった人だけ反応してくれたらそれでいい。
その反応を俺は目一杯喜ぼうと思う。

こういうウェットで一方通行前提なコミュニケーションの取り方がきっと自分には適してるんだろうとようやく腑に落ちてきた。
腹を括ろう。
発信を繰り返そう。
発信を繰り返そう。


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