不機嫌なおばあちゃんの家
不思議な夢を見た。
私は、おばあちゃんの家に遊びに行く。
おばあちゃんは二階から不機嫌に降りてくる。
私が来たことがそれほど嬉しいわけでもないみたい。
むしろ、煩わしいのだろうか?
そんな雰囲気で、私はなんだか居心地が悪く感じる。
無言のおばあちゃんといるのが気まずくて、話し相手を探す。
でも、おばあちゃんと同居していたはずの叔母の姿はない。
あれ、どこに行ったんだろう?
そう思い、はっと思い出す。
そうだ、叔母は亡くなったのだった。
それにしても、蒸し暑い。
麦茶を飲みたくて冷蔵庫を開けると、Zimmer という名前のビール瓶がずらりと並んでいる。
「おばあちゃん、ビールなんて飲んだっけ?」
おばあちゃんは相変わらず不機嫌そうなまま答えない。
「このビール、おいしいかったんだよね」と思いながらも、昔の自分の好みに今の自分がひっぱられるのが嫌な気持ちでもある。
もうビールは飲まないことにしたんだった。
冷蔵庫の中には昔よく食べていたヨーグルトもたっぷりある。
私が好き「だった」ものがいっぱいのおばあちゃんちの冷蔵庫に違和感を覚える。
沸かして冷やしておいてくれているはずの麦茶はどこだろう?
探すと、ビール瓶の向こうに、小さな透明の水筒に麦茶らしきものが入っているのが見えた。
蓋をあけて香りをかぐと麦茶のほっとする香り。
コップに中身を移して飲む。
冷たくておいしい。
「そういえば、帰りの便は何時だっけ?」
このままここに泊まるのは嫌だなと思い、おばあちゃんに聞くとそれは答えてくれる。
あと30分後に飛び立つですって?!
大変だ、ここでのんびりしていたい気もするけれど、帰らなければ。
誰かが「帰りの便なんてないから、帰れないよ」と言う。
みんなが、そうだそうだとうなずく。
あれー?
この家、こんなに人がいたっけ??
考えようとすると強烈な眠気がくる。
このままソファに転がって眠ってしまいたい。
睡魔に必死で抵抗しながら、いつの間にかここにいる友達の腕をひっぱって、おばあちゃんの家を出る。
「でも、帰らないといけないから、行ってみる!」
空港に着くと、ないと言われた便はちゃんとある。
間に合わないと言われたけれど、まだ乗れる。
飛行機の中で、おばあちゃんと叔母と過ごしたいくつかの夏を思い出す。
それにしても、たった数分しかいなかったな、おばあちゃんのうち。
毎年、夏にはゆっくり滞在したものなのに。
そして気がつく。
亡くなっているのは、叔母ではなく、おばあちゃんの方だ!!
え?
じゃあ、私はどこにいるの??
その瞬間、目が覚めた。
大量に出血していたこと、意識が遠のいたことを思い出す。
あー、私、助かったんだ、と思った。
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