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靴磨きを文化に!足元を綺麗にして人の心も元気にする ユニークな靴磨き職人 岡本英弥さん

最近はあまり見かけない靴磨き職人さん。今の時代に珍しいですが、昔の昭和時代を思い出すという人もいるのでは。どんな思いで昔ながらの“靴磨き”を職業にされているのか、お話しを伺いました。

岡本英弥さんプロフィール
出身地:北海道礼文郡
活動地域:北海道札幌市
経歴:1989年 北海道生まれ
   2010年 北海道芸術デザイン専門学校卒業
   2016年 靴磨き職人として活動を始める
   2018年 Abel社認定・サフィールシューケアトレーナー資格取得
現在の職業及び活動:店名「Bon Vieux(ボンビュー)」靴磨き職人として札幌市を中心に活動中。路上磨き、出張サービス、イベントや靴磨き講習会を行っている。
座右の銘について:「怠惰を求めて勤勉に行き着く」(漫画『勝負師伝説 哲也』の中の言葉)という言葉が好き。勝つために結局勉強をいないといけない、好きな仕事をするには結果勉強熱心にならないといけないという意味。好きだから苦しくないし、自分が決めたことだから楽しいと話す。

“足元が綺麗になる嬉しさ、楽しさを味わって欲しい”

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか? 
岡本英弥さん(以下岡本):昔は路上に靴磨きが居て、その頃を知ってる方は懐かしい、やってもらおうかなと言ってくれますが今は靴磨きの文化がないので、靴磨きの文化を北海道や日本に根付かせたいです。こちらが発信して良いものは良いと再認識されて認められたらなと思います。若い人が革靴を買い、「面接だから磨きに行こう!」という発想になったり、明日結婚式だから綺麗な靴で行きたい、「靴磨いてもらおう」となったら楽しいですね。
どんなに高いスーツを着ても靴が綺麗じゃないとカッコよくない。足元が綺麗だと気分も違うし、自分も初めて靴を磨いた時に綺麗だなと思い、他人から綺麗だねと言われて、めちゃくちゃ嬉しかったんです。これを一人でも多く味わって欲しいです。会社へ行くときも靴を履くことで元気になってほしい。面倒の向こうに楽しさや面白さがあり、それに気づかないのはもったいないです。
靴が綺麗であることがモチベーションになり、笑顔が増えてみんながもっと元気になって、そうなったらちょっと嬉しいです。
そして今はBarの一角に靴磨きブースを確保していますが、もっと拡大してお店を持ちたいと思っています。

Q.どんな目標や計画がありますか?
岡本:今企画しているのが、北海道にカントリーサイン(まちのシンボルと市町村名を一体化した標識)が179個あるので、カントリーサインの市町村出身者179人に出会い、靴磨きをして写真をアップするということを通して北海道制覇を考えています。地域の人に伝えることを大切にしていますし、それが実績にもなるので0から1をつくることが目的です。
北海道でこのカントリーサインの企画を通して、「靴磨き=岡本」と名前が最初に出てきたら嬉しいです。北海道の次は47都道府県も行きたいですね。

(写真:北海道のカントリーサイン)

“接客が好き、自分のキャラを売って信頼関係をつくる”

Q.靴磨きの活動や思いを聞かせてください。
岡本:今は「大通すわろうテラス」で週2回路上靴磨きをしています。昔から通うBarで靴磨きブースがあるので、Barとコラボしてお客様はお酒を飲みながら、パフォーマンスとして靴磨きを行います。来るのが難しい会社員の方へは、企業訪問で靴磨きもしています。
靴磨き講習会もしているんですが、ほとんどが女性で、旦那さんや自分のパンプスなど女性の方が靴や足元を気にしています。靴磨きを面白いって思ってもらえたら嬉しいし、子供の頃から靴を磨く文化があれば自然にやるようになります。自分も子供がいるので、娘の教育として自分の靴は自分で磨くこと、モノを大事にすることを伝えたいです。
もともとファッションが好きで、リサイクルショップで洋服を販売していました。接客も好きだったので、売り方のスタンスは、服を伝えながら自分を売り込み、自分のキャラを好きになってもらうことでした。服がなくなってもお客様が「遊びに来たよ」と、来る動機はそれだけでいいと思います。僕が「これめちゃくちゃいいですよ」と勧めたら売れるようになるし、そんな形で仲良くなったり信頼関係が生まれたお客様もいました。 
美容室みたいに、髪をきっている間にコミュニケーションがあり、誰に切ってほしいと指名が出てくるように、僕と話したいって思ってくれたり、今日も良い時間過ごせたなってその人が楽しい気持ちになってもらえたら嬉しいですね。靴を磨くサービスだけど時間を提供しているので、その間のコミュニケーションも楽しんで欲しいです。
日常心がけていることは、靴磨きの動画を今でも見たり、常に学ぶ視点を持つようにしています。イベント会場へ行ったらまず自分の靴を磨き、綺麗な状態でお客様をお迎えします。モチベーションが下がったら“ガネーシャ”という像の本(夢をかなえるゾウ)を見ます。靴を磨く、人を笑わせる、1日の終わりに自分を褒める、など本に書かれていることが自分の考え方・生き方に影響を与えています。


“自分の好きなことは貫く、周りに何を言われても気にしない”

Q.靴磨き職人になろうと思ったきっかけは?
僕はビンテージが好きで、アメカジのブーツをもっと綺麗にできないか調べていて、動画をみて綺麗になる様子を見てびっくりしました。
自分の洋服ブランドを立ち上げたいと思っていた時に、『夢をかなえるゾウ』という本で“成功したいなら靴を磨け”という教えが心に刺さって。「やっぱりそうなんだ、靴磨こう!」と思って習慣化したのがきっかけです。靴磨きは小さい課題だけどそれからずっとやり続けていて、趣味は靴磨きと言い続けていました。
自分の靴はもう綺麗だから上司に靴磨きさせてと言い続け、ある時依頼されて綺麗に磨いて返したら、上司がお金をくれたんです。自分も楽しく、相手も喜んでくれて対価になる、これを仕事にしたら絶対楽しいと思って、靴職人になろうと決めました。

記者:趣味から始まったんですね。靴磨きのどんなところが楽しいですか?

岡本:靴磨きは段階があって、少しずつ工程を経て綺麗になって行く様が楽しいです。昔から工作や裁縫など、モノを作りげていく細かな作業が好きでした。学校がデザイン系の専門学校で卒業制作はなにをやってもいいので、僕はデニムパンツをミシンで縫って作りました。全部独学でファッションの歴史も調べて、どんな質問が来てもいいようにプレゼンの準備もして。結果はファッションの学校ではないので誰も質問してこなかったですが、自分の好きなことを貫きました。

記者:ファッションやモノづくりが好きなのはご両親の影響もありますか?

岡本:父親が服やカバンを集めるのが好きで趣味が多くて、こだわりが強いところが似ています。父は自分でスピーカーを作ったりもしていました。本体を買って外枠を自分で組み立て、真空管を入れて爆音でロックをかける。音楽や趣味の部分は父親から影響を受けています。仲は良くて大好きな父です。父も本当はデザインの仕事をしたかったけど、夢を叶えられなかったから息子に色々好きなことをさせてくれていたと思います。今も父にもらったカバン(靴磨きの道具入れ)を使っていて、これ一つでどこへでも行けます。

Q.世の中の人へ伝えたいことは?
岡本:みんなもっと発信するべきだと思います。僕は昔から好きなものがあったけれど、こだわりのある人が少ないなと。周りに合わせたり、自分はこれが好きだけどそっちにするとかしないで、好きなものは好きでいいし、周りに何言われてもいいと思います。
僕はわがままに生きてきて、デザイン学校へデザイン系に就職するということで入ったけど、結局アパレルに就職すると言って父と喧嘩もしました。俺はやりたいことがある、と貫いて何度も父と電話で大喧嘩しました。最後は母が父に「言い出したら聞かないから」と言ってくれて、父が折れてくれました。
周りに学生もいますが、「好きなことないの?」って聞いても「ない」と言う。小さくてもこだわりや好きなことは持った方がいいし、それが仕事に変わっていきます。世の中に認められなくてもいいから、周りから色々言われても芯があれば折れないし、貫き通して上に行けば誰も何も言わないと思います。中途半端にやるから言われるんです。僕は周りに言われても気にしないので、言う人には言わせておけばいいと思うタイプです。

記者:言われて気にして折れる人もいますし、なかなかできない人も多いと思いますが・・・

岡本:誰かが否定してくれないと、上手くいきすぎることなんて絶対ないから、アンチにどれだけ勝てるか。世間が認めたら味方にできます。興味ないより人よりもアンチの方がいいですよ。批判する人はそれだけ見てるわけだから、それをプラスに取れるかです。

記者:人を楽しませたい思いや、好奇心が溢れつつも、自分の好きなことは貫く芯の強さを感じますね。岡本さん、ありがとうございました!


◆岡本さんのInstagram↓

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【編集後記】今回インタビューを担当した岸川と深瀬です。職人と聞くと昔の頑固な”職人気質”のイメージですが、岡本さんはアメカジが好きで、人と話すことや笑わせることも好きとのこと。職人のイメージを一新するような、人を和まし元気にする人柄とバランス感覚があり、これからもっとニーズが増えていきそうです。今後のご活躍も楽しみにしております。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


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