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生んでない 《詩》

十五もはなれてるんだからね
わけわからなくなったみたいでずっとうろうろうろ部屋中を歩きまわってね

息子のことを語る彼女
髪を切りながら
わたしは切られながら

彼女に三人目のこどもがうまれる

それはよろこばしいこと
この世界にとってもわたしにとっても

だけど
こころをはさみが
すこしかすったのがわかった

それは彼女がしたのではない
わたしが

かすったと思ったけど
家に帰ってひとりになってみたら
けっこう切れていた

そんなことってありませんか

わたしにはこどもがいない
けっこんもしていない

彼女はわたしのみっつ年上で
けっこんもし
こどももふたり生んで
さらにさんにんめを授かって
やりたいこともまだまだあって

わたしは
わたしは

大学生のころ
ひとりで暮らしていたころと
何が変わったのだろう

そう思えてしまうほどの
切り口を
ながめるのは
おそろしい

見なかったことにしたいけど
痛みは
わたしに教えてくれる

わたしは
こどもがうみたかった
そだてたかった

もうそれは叶わないかのように
わたしのあたまがかたる

まだわからないじゃない
祈りなさい
きっと
叶うから

もうひとりが

わたしがわたしの肩をだき
背中をさすって

そうね
ちいさくうなずく

ほんとうはまだしんじられてない
ここにいる
わたし

生んでない

かなしみをかかえて

いつか

よろこびのほうへ

立つことができるのだろうか

sunshine
あかるい光の中に

ちいさい手をにぎって
いとおしさにとけてしまいそうになりながら


#詩
#あふれてくるものとして
#kokorokotokoto

#スキしてみて
#三日目

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