【インタビュー】ピアノの枠にとどまらないピアノ講師 はぎあやさん
以前体験レッスンに来た親御さんから「先生って仕事されているんですか?」と質問され、(これが仕事なんですけど・・・)と世間からのピアノ講師像が仕事として認識されていないことに驚愕したというエピソードを語ってくれたピアノ講師のはぎあやさん。
はぎあやさんは、この親御さんがピアノ講師に抱いているイメージとは対照的なバリバリのビジネスパーソンだった。
ピアノで音大を卒業しているはぎあやさんだが、元々ピアノ講師になるつもりはなかったそう。
ーー音大を卒業して最初は就職されたのですか?
ちょうど就職氷河期で何十社も落とされ、苦労の末、楽器店に講師ではなくスタッフとして就職しました。
トイレ掃除やビラ配りから始まり仕事の内容は幅広く、長時間勤務で激務。大変でした。その後結婚に伴い、楽器店を辞め小学校の音楽講師になりました。
ーー恥ずかしさからか真面目に音楽の授業を受けない生徒がいると思いますが、苦労はありませんでしたか?
確かに真面目に授業を受けない生徒達はいましたが、サックスやドラムを取り入れてみたら、休み時間に行列ができるほど熱心に取り組むようになったケースもありました。
他にも、耳の聞こえない生徒が音楽の授業に参加しタンバリンで合奏したことがあったのですが、クラス内で一番私を見てたのはその耳の聞こえない生徒でした。ピッタリ音楽に合ってて感動したのがとても印象に残っています。
ーーお子様入園後、まずは少しずつ仕事をしていくために自宅でピアノ教室を始めようと考えたのですか?
いえ、最初から「ガッツリ頑張って働くぞ!」という気持ちで始めました。
まだ具体的な計画もなかった開業2年前位に家を新築したのですが、ピアノの部屋を防音室にしたのも自然と開業に気持ちが向かった背景の一つになったんだと思います。
ーーとはいえ初めての開業。どのように集客したのですか?
以前から、近所の公園で毎週「保育士と遊ぶ会」が開催されていたのですが、そこでチラシを配ったら短期間で10名も申し込みがありました。
最初は生徒の自宅にピアノがなくても、続けられるリトミック(音楽を通じて体を動かすことで、子どもの表現力を育む音楽教育法)から始め、音感やリズム感を育てながら音符が読めるようになった頃にピアノの個人レッスンに移行していきました。
ーーさらに生徒を増やすためにどんなことをされたのでしょうか?
指導法の勉強など様々なセミナーに通って勉強したり、ブログで自分の考えを発信したりしました。
「楽譜を読めてピアノが弾けるようになる過程で、勉強との時間調整や目標を達成する力などががはぐくまれ、ここで習得したことは勉強にも役立つ。ピアノという習いごとを使って、より自分で考えられるような人を育てたいという想い」を綴っていたので、考え方に共感した方から教室に興味を持っていただくことが出来ました。
ブログで発信していたおかげで、高齢者デイサービスから仕事の依頼があったり、障害児への音楽療法の打診があったりと仕事の幅が広がりました。
障害児への音楽療法は最初知識不足の為お断りしましたが、元々興味がある分野だったため、これをきっかけに資格を取得し、今では対応しています。
ーー自宅でピアノを教えること以外の活動もされていたのですか?
結婚式場やイベントでの演奏活動、高齢者や障害児の施設でのグループセッション、あとはアレンジ楽譜の販売などもやっていました。そんな時、近所に新設小学校が設立され、校歌の公募があったのを知り応募したところ、採用されました。
初めて自分が作曲した校歌を生徒達が合唱してくれたのを聞いた時は感動して涙が溢れました。
小学校の校歌作曲者になったからといって生活が一変するわけでもないのですが、近所に出かける時も校歌作曲者の名に恥じないよう自分を律するようにはなりました。
ーー様々な取り組みをされていますが、失敗やうまくいかなかったことはありますか?
最初はレッスン代の値付けが甘く安くしすぎてしまったこと、指導法のセミナーやピアノの調律代など思った以上に経費がかかったことなどがありました。
他にも、ピアノを一本指で弾くYoutubeを開設してみましたが飽きて更新をやめてしまいました。
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様々な活動を精力的に行っているはぎあやさん。
現在はビジネス系のオンラインサロンで知り合った経営の先輩からも学びを得ているところだそう。
少し前からレッスンの空き時間を利用したスタジオレンタルサービスを始め、将来的には全国の空きスタジオをマッチングするサービスも提供できるよう構想を練っている。
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はぎあやさんの現在の職業はピアノ講師だが、特にピアノの枠にこだわっているわけではない。
「音楽を聴くのもよいけれど、実際に演奏して豊かな人生を送る人を増やしたい」
全く別の職業でもはぎあやさんの活動を通して豊かな人生を送る人が増えれば、仕事を変えることがあってもよいという。
数年後は全く違う仕事で誰かの人生を豊かにしているかもしれない。
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インタビュアーココロノトモは、あなたのお話を聞いて相関図を書く活動も行っています。
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