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BL・野良猫の飼い方2

8 先へ

智嘩とは、皆が寝静まった後や
仕事場の車の中でもヤッた。
ーーもう遊びは止めよう。
《つまらない》

あの日、成海が襲撃され
死んだあの夜。
本当に怖かったのは
殺される事じゃなかった。

首輪を付けられ、鎖に
繋がれ調教された2年間。
僕の意識の中に残酷な
何かが現れる様になった。
其れさえも、成海は
操って面白がった。
いつからだろう
苦しみが快楽に変わって
毎日が、愉しみになった。
成海は其れを許さず
拷問めいた事までしてきた。
いつだったか、口に
剃刀の齒を咥えさせられ
次々に男に嬲られた。
躰中、精液にまみれた僕を
成海は冷たい瞳で見ていた。
この時は、心底ゾッとした。
僕は、成海にさえも
愛されたいと思う様になっていた。
そして、あの日ーー

いきなり首輪を外され
鎖が切れ、僕は混乱した。
どうすればいい?
何を?
僕は?
我に帰ったのは
智嘩の背中でだった。
あの時の涙は成海を思っての
ものだったのだ。

《そろそろ新しい遊びを
始めよう》
サヨウナラと書いたメモだけ
テーブルに置き、そっと
マンションを抜け出した。

深夜3時。
バックパックを右肩に掛け
街頭の灯りだけを頼りに歩いた。
多分、僕はこの街の隅で
生きてゆくのだろう、
生きられるだけ生きてゆく。

終幕