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Day.21 ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯

30day song challenge」、二十一日目のテーマは「人の名前がついている好きな曲」。本日は、陽気なメロディと意外な物語性が印象的な「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」をお送りします。


まず、この「ティル・オイレンシュピーゲル」という人物についてご紹介しましょう。ティル・オイレンシュピーゲルは14世紀のドイツに実在したとされる人物ですが、その詳細な生涯ははっきりと記録されてはいません。悪戯やとんちが好きだった彼の行動は人々の口伝によって語り継がれ、民衆本にまとめられました。日本で言うところの一休さんみたいな感じですね。

本場ドイツには道化の格好をしたティルの銅像があるそうで、一度見に行って見たいなぁと思っております。


そんなティルの道化話にアイディアを得て、R.シュトラウスが作曲したのがこちらの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」です。

静かな森のささやきのような冒頭、そして印象的な「悪戯」のテーマを奏でるホルン。軽やかに、かつダイナミクス豊かなこの旋律が同曲の最大の魅せ場であり、かの「のだめカンタービレ」で千秋先輩がホルン奏者と激戦を繰り広げたように、多くのバンドが腕に縒をかける聴かせどころでもあります。

途中でティルは市場に乱入して品物をひっちゃかめっちゃかにしたり、ネズミ顔負けの足の速さで逃亡したり、淑女を口説いてはフラれたりと、思いつくままに悪戯を繰り広げます。ホルンの主題が再登場し、華々しいメロディとともにさぁもうひとつ悪戯を、と思った瞬間!唐突なスネアドラムにより曲の雰囲気は一変し、なんとティルは逮捕されてしまいます。

次第に悪戯好きなティルは影を潜め、高音楽器の断末魔を残してあっけなく処刑台の露と消えてしまいます。
しかし曲はここで終わらず、小休止を挟んだのちに冒頭を思い起こさせるようなフレーズとティルの悪戯の変奏、そしてバンド全体のインパクトによって終曲となります。まるでティルの死後も彼の悪戯人生が語り継がれていくようで、「ティル・オイレンシュピーゲル」という主人公が死を迎えるという悲しいストーリーの曲にも関わらず、不思議とまた冒頭の愉快なホルンを聴きたくなってしまう曲なのです。


吹奏楽やクラシックなど、楽器のみで演奏される曲の多くは、歌詞を持ちません(オペラ音楽や劇中歌はこの限りではありませんが・・・)。
その分、楽器が持つ豊かな音色や作曲者・演奏者の表現力によって、人間の喜怒哀楽や動物の鳴き声、駅のホームに響く汽笛、軍隊の足音までも聴衆に感じさせることができます。聴く側の感じ方も、これこそが正解!というものはなくて、聴いた人が自由に解釈して楽しめるのもオーケストラの素敵なところの一つですね◎

この曲を聴いて、皆さんの心の中に愉快なティルの物語が生まれたらいいなぁと思います。

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