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【イベントレポート】TOA報告会 -顧客時間が見たTOAとベルリン(2019/9/10開催)

2019年9月10日(火)WeWorkアイスバーグ内1Fスペースにて、「TOA報告会 -顧客時間が見たTOAとベルリン -」を開催しました。
当セミナーは、7月にドイツ・ベルリンで行われたテック・カンファレンスTOA(Tech Open Air)の視察ツアーを元に、「第二のシリコンバレー」と呼ばれるベルリンを中心とした欧州スタートアップの潮流、街や社会課題を巻き込んで実装されるテクノロジーの未来を顧客時間ならではの視点で紹介。
1部はTOA視察ツアーを企画した株式会社インフォバーン事業戦略部の亀山愛氏と風間による「What’s TOA?」、2部は奥谷と岩井による「顧客時間が見たTOA」をお送りしました。


「What’s TOA?」~TOAが見せるのは「社会課題×テクノロジー=未来」~

1部は、株式会社インフォバーン亀山氏と共に風間が登壇。日本ではまだまだ知名度が低いTOAがどんなイベントか、ツアーで訪れた最新スタートアップ企業とのミートアップの様子や、ベルリンの街で起こっている潮流についてお伝えしました。

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TOAは、2012年クラウドファンディングによって開催された欧州最大規模のテック・イベントであり、「欧州のSXSW」と表現されることもあります。
ただし亀山氏と風間は、SXSWと同じ見方で参加すると、本イベントの本質を見誤るだろうとも言います。

SXSWがテクノロジーを重要視する「テクノロジー先行型」だとすると、TOAは”Social Issue”、つまり「社会課題」が大前提としてあり、社会課題解決のためにテクノロジーを利用するという「課題解決型」のイベントです。
カバーするテーマの領域が広いのもTOAの特徴。今回顧客時間が注目した「フード」や「モビリティー」の他にも、「ヘルスケア」や「ダイバーシティー」、「マインドフルネス」など、他のイベントでは見られないテーマも数多く存在します。

今回参加したインフォバーンの視察ツアーは、ベルリンの最新テクノロジー、イノベーション、スタートアップを訪問するミートアップも盛り込まれていました。訪問企業は、フードテック「ATLANTIC FOOD LABS」、ファクトリーファーム「inform」、モビリティー「DRIVERY」などの最新スタートアップから、ツリーハウスプログラム「DAS BAUMHAUS」、都市型エコビレッジ「HOLZMARKT」など、ベルリンの歴史やバックグラウンドが反映されたベルリンの「これまで」と「今」を体感できるプログラムでした。

TOAやベルリンの街を通じて感じたこととして風間は「社会の根付いた課題を解決するために、いかにテクノロジーをインストールするか、アメリカと比べるとテクノロジーへの向き合い方が大きく異なると感じた」と言います。「ビジネスで繋がる未来ではなく社会の未来を目指しているのが、TOAなのではないか」とコメントしました。
昨年より本イベントのツアー企画・アテンドに携わっている亀山氏は「これから時代がどうなるか、10年20年先を見据えた未来を提示していくのがTOAのコンセプト。参加するたびに多くの発見や学びがあるので、企業のイノベーターや新規事業担当者など、不明確な時代の流れの中で、どのようなビジネスをしていけばいいか悩んでいる方は一度足を運んで見て欲しい」とコメントし、1部を締めくくりました。

「顧客時間が見たTOAとベルリン」~マーケターよ、社会を見よ~

2部は奥谷と岩井が登壇。初日に岩井が骨折するという衝撃的なエピソードも踏まえつつ、ベルリンの街が実践しているソーシャルモデルの意義や未来を、TOAや企業の事例を元に顧客時間ならではの視点でお伝えしました。
数々のテーマの中で奥谷と岩井は「フードテック」と「モビリティー」に注目。人々の生活に不可欠であり、社会的に大きな課題となっているテーマです。

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「フードテック」では、ファクトリーファーム「Infarm」、フードテックへの投資を行う「Atlantic Food Labs」、店舗内にファームを持つサラダレストラン「GOOD BANK」、り売りスーパー「Original Unverpackt」、「モビリティ」では、人の輸送を目指したドローンコプターの「Volocopter、Lilium」、車などのハードウェアをソフトウェアと融合させた”SOFTWARIZATION”の事例、モビリティービジネスのコミュニティーの場「The Drivery」などの事例を紹介しました。

上記スタートアップの特徴として、「植物の廃棄」や「交通渋滞の解消」などの社会課題から始まり、テクノロジーを活用し社会に実装、社会と共にビジネスを育てているという点があります。

例えばファクトリーファーム「Infarm」は、野菜ではなく「野菜を育てるシステムと管理」を販売するサブスクリプション型のサービスを提供しているスタートアップ企業であり、「食品の廃棄」という社会課題と「新鮮な食品を食べたい」というニーズから始まっている。ドローンコプターの「Volocopter、Lilium」は「交通渋滞の解消」という社会課題から始まっているが、人の輸送などの実装実験をすでに始めており、日本に比べてスケールが大きく異なっています。

奥谷は「社会課題を起点としたスタートアップがあり、それを育てる(投資する)場がある。ソーシャルモデルが街に実装され、人々がそれを受け入れているという強烈な”Future of our society”が印象的だった。」と述べました。

TOAならではのテーマや潮流

「フードテック」「モビリティー」以外で顧客時間が注目したTOAならではのセッションや事例を3つ紹介しましょう。

1点目は「Pinterest」。日本では数あるSNSの1つというイメージが強いが、非常に優れた画像認識のテクノロジーを持っています。

奥谷「Googleの検索も画像検索用に代わっていくのではないかというアメリカでも聞けないようなセッションを聞くことができた。消費者の検索行動が変わるかもしれない、そんな未来を感じさせるセッションだった」

2つ目は「Lora Haddock」のLore DiCarilによるセッション。彼女は女性向けのセックストイを企画しているスタートアップを経営しています。

岩井「男性主導のイメージが強い性産業へテクノロジーを使って一石を投じた革新的な経営者である。会場は満員で熱気に包まれており、「ジェンダー」「LGBT」のテーマを体現したセッションだった」

3つ目は、人々が集まる場=コミュニティーの事例として「HOLZMARKET」。「HOLZMARKET」はベルリンの一等地にあり、元々ディスコなどがあったが、都市開発による立ち退きに反対した市民コミュニティによって再建されたエリアです。現在は川周りの自然の残しつつ、コワーキングスペースや保育園などが存在し、週末にはイベントなどが開かれ、コミュニティのメンバーによって「場」として運営されています。

岩井「これからの時代、“どうやって価値のある場所を守っていくか”
日本でも考えなければいけない課題に、ヒントを与えてくれるような場所だった」

TOAとベルリンの街を通じて

TOAとはどんなイベントなのか。SXSWが“ Technology Model ”を提案する場であるのに対し、TOAとは“ Social Model ” を提案する場であると、奥谷と岩井は伝えます。

奥谷「Winner takes allなTech biz model競争ではなく、
social Issue に基づいた、腰を据えた実装までを含んだ「社会的な運動律」、これを体感できるのがTOAの大きな特徴」

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岩井「社会の中に存在する課題を、プレイス・オンライン・オフライン・モバイル、あらゆる場を包括して解決に挑む、挑戦的な姿勢をTOAのみならずベルリンの街を含めて感じることができる。これらかの社会で課題になるような価値、どういうプライスやフェアが実際に社会に出してお客さんが受け入れてくれるか、ネクストプロダクトを考える場がTOA」

TOAには完成されたサービス、プロダクトは少なく、すべて”On Going”の状態ですが、TOAやベルリンの街は一緒に考える場を作っているとも言えます。
社会課題を起点としているものの、良い意味で競争が起こり、物だけ作ろうとするのではなく、消費行動、社会行動まで含んで作ろうとしている「“Collaborative Consumption(共創消費)”型社会への萌芽」を強く感じることができる点、それがTOAやベルリンの街の醍醐味です。

最後に奥谷はこのように述べて2部を締め括りました。
「マーケッターよ、社会を見よ。(世界には)実際にやっている人たちがいる」

日本ではビジネスとして社会課題が取り上げられることはまだ少ないです。しかし、社会課題を起点にしビジネスを成功させ、イノベーションを起こしている事例は世界では数多く存在します。
社会課題を切り込む姿勢が日本にもっと浸透すれば、世界を驚かせるようなサービスやイノベーションが生まれるかもしれません。
(TEXT:伊藤文恵)


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