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市職員による自主研究チーム「狛江市ナッジ・ラボ」が立ち上がりました!

狛江市未来戦略室(こまえのデザイン.)の石﨑です。
狛江市では行動経済学の「ナッジ理論」を市の施策に取り入れようと、入庁してから概ね10年未満の若手職員による自主研究チーム「狛江市ナッジ・ラボ」を2024年1月に結成しました。
今回のnoteではナッジ・ラボの結成の背景と今後の動きなどについて紹介します。


ナッジとは

ナッジとは、行動経済学の知見に基づき、望ましい行動を促す方策として、リチャード・セイラー教授(シカゴ大学)が提唱した概念で、2017年にノーベル経済学賞を受賞したことで世界的に広く知られることになりました。ナッジの手法として「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予想可能な形で変える選択設計のあらゆる要素」と定義されています。
なお、ナッジ(nudge)とは、もともと英語で「そっと後押しする」「(注意を引くために)肘でつつく」という意味があります。

国内でのナッジの研究の動き

行動経済学やナッジの活用の検討は経済活動のみならず、公共施策への活用も進んできています。
諸外国では国レベルでナッジの活用の検討がなされているケースが多いですが、日本国内では自治体単位での事例研究が進んでいることが特徴です。
自治体における公共政策で有名な事例が、八王子市で実施された「大腸がん検診受診行動促進プロジェクト」です。こちらは行動経済学会・環境省共催の平成30年度ベストナッジ賞を受賞したことで、全国の自治体のナッジの活用が活発化する要因となりました。

自治体に広がるナッジ活用の動き

このように人々の望ましい行動を促す「ナッジ」を活用して、課題解決や業務改善、職員の政策立案能力向上を図る動きが全国の自治体で広がっています。
公共施策へのナッジ活用支援等を行っているNPO法人PolicyGarageによると、2024年4月現在で23のチームが自治体ナッジユニットが立ち上がっており、それぞれチームで自主的な研究や施策への展開がなされています。

狛江市でのナッジの活用事例「おしチャリナッジプロジェクト」

狛江市では、担当者レベルでナッジの研究がされてきたところですが、市の公式的なプロジェクトとして本格的にナッジの公共施策に活用した事例は、令和5年5月に狛江駅前の自転車の押し歩き(おしチャリ)促進施策「南北自由通路おしチャリナッジプロジェクト」(令和5年5月~10月)となります。

このプロジェクトは狛江市の担当部署職員と公募職員(12名)に加えて地域のデザイナー(2名)にプロジェクトチームのメンバーとして参加していただき、行政からの価値観の押しつけならないよう、ナッジに市民感覚を取り入れていることが特徴です。

令和5年8月に行った効果検証では45%程度であった「おしチャリ率」は、ナッジ施策の介入により90%以上に大幅に向上するなど施策の効果が認められました。さらにナッジ施策を終了したのちのモニタリング追加調査でも87%となっており、その効果が継続できていることを確認しています。

市では、このおしチャリナッジプロジェクトの研究成果を行動経済学会主催の「ベストナッジ賞コンテスト2023」に応募したところ、最優秀候補に最終ノミネートされました。
そして、2023年12月9日の行動経済学会でのプレゼン審査会において学会参加者投票の結果、最多得票により「オーディエンス賞」を受賞したことでも注目を集めました。

狛江市版ナッジユニットの結成

市では、ナッジの公共施策への活用の有効性を確認できたことを踏まえ、新たなナッジ活用の枠組みを模索していたところ、おしチャリナッジプロジェクトチームのメンバーの提案で、市職員による自主研究チーム「狛江市ナッジ・ラボ」を結成する運びとなりました。

狛江市ナッジ・ラボのロゴマーク

ナッジ・ラボのメンバーは入庁してから概ね10年未満の若手職員で構成されています。
まずは市職員向けのナッジ座談会を企画し、庁内の業務でナッジを活用したい課からの依頼・相談を受けて、一緒に業務改善の手法を考えていくことで市民サービスの向上に繋げていくこととしています。

狛江市ナッジ・ラボの田所リーダーは「住民に接することが多い自治体職員によって、ナッジはあらゆる部署で活用できる基本スキル。これまでのナッジの取組みをメンバー間で共有するとともに、住民目線での施策展開にナッジの考え方を効果的に取り入れることで、業務効率化と市民サービスの向上に役立てていきたい。」と意気込みを話しています。

あとがき

最近、狛江市のナッジの取組みについて、メディアからも取材を受ける機会も多くなってきました。
上記の「おしチャリナッジ」に加えて、別で取り組んでいた「喫煙所マナー改善ナッジ」について、フジテレビ『Live News α』の番組内のコーナーの取材を受けました。(4月12日に全国ネットで放送)

また、この他にも新聞社からも取材を受ける機会が増えており、ナッジに対する社会的な関心や期待の高まりを実感しています。これからも狛江市ナッジ・ラボの取り組みにぜひご注目ください。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。よろしければ、「スキ」や「コメント」をいただけると嬉しいです!
※このnoteは、狛江市未来戦略室の職員4人が交代で執筆しています。それぞれの文章のスタイルもあわせてお楽しみください。

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