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ビリヤニの基礎 その1 〜 ビリヤニは大失敗さえしなければ大概おいしい

ビリヤニという米料理があります。狛江スリムでもお店やポップアップ営業で炊いていました。スパイスを使ったとても美味しい炊き込みご飯なのですが、日本ではあまり知られておらず、また「きちんと美味しく炊いたビリヤニ」に出会うことも2020年時点ではなかなか難しいのが実情です。

ビリヤニとは何か」や「うそビリヤニについて」なども興味深いのですが、これらは他稿に譲り、ここではビリヤニ(ほんとビリヤニの方です)の作り方について少し書こうと思います。とは言っても細かなレシピではなく、作り方のコツというか勘所みたいなものになります。

ビリヤニは「炊く」ことが真骨頂で、グレービーと呼ばれるカレーソースのようなものに茹でた米を合わせて蒸し上げるか、ヤックニーというカレースープのようなもので生米から炊き上げるかがメインになります。使うお米は多少の議論もありますが、ここではもっともメジャーでビリヤニらしい”バスマティ米”一択、まずはタイ米も日本のお米も使わずに行きましょう。

ビリヤニは工程が多く、マリネなども含めると時間もかかるので難しく考えがちですが、その実は多少の失敗ではそんなに不味くはならない懐深さを持っています。逆に「これをやると不味くなる」というポイントさえ押さえておけば、そこを回避することにより「きちんと美味しく炊いたビリヤニ」を作ることは難しくないんです。

不味くなるポイント1. 米を調理する鍋がヌルい

ビリヤニは米料理なので、なにより米の調理が重要です。美味しく米を調理するには米の加熱が重要で、そのためには鍋が十分に温まっている必要があります。「温まっている」というのは人が触って暖かいといったレベルではなく、「鍋全体が100度に近い温度になっている」ことが必要です。

これは、米を炊くという行為が「米のデンプンを適切にアルファ化させる」ことに他ならないことから来ています。詳しく理屈を知りたい方は「米 アミログラム」で検索すると出て来る論文を読んでみると良いです。

温度が上がり切らないといわゆる「生炊き」になってしまうことがあり、こうなってしまうと致命的に美味しくなくなってしまいます。グレービーが多少グツグツ言っていたとしても、鍋全体がきちんと温まるためには少し時間がかかります。茹で鍋に米を投入した直後は湯の温度が下がるため、できるだけ強い火力で沸騰状態に持っていく必要があります。

蓋が厚手の鍋を使う場合は「蓋まで温まる」くらいの気持ちで鍋全体をしっかり温めましょう。強火で急加熱すると焦げてしまいそうな場合は、中弱火で温まるまでの時間をきちんと考慮しましょう。

不味くなるポイント2. 旨味タンパク質素材が足りない

通常なんらかの肉がメインになるかと思います(ベジは一旦忘れます)が、基本ルールとして使う米の重量の1.5〜2倍くらいを目指すとわかりやすく米が美味しくなります。もしマリネできるのであれば、肉は風味をまとって柔らかく美味しくなりますが、必須ではありません。もしくは事前にギリギリの水分量で煮てスープ状にしておくと、肉も柔らかく出汁は米に染み込みますが、必須ではありません。

この旨味分の絶対的な量が足りないと、スパイスと塩気とギーなどの油分で米を食べる形になり「物足りない」印象を持ちやすくなります。それはそれで美味しく食べられないでもないのですが、慣れるまでは旨味素材はしっかり量を使った方が良いと思います。

不味くなるポイント3. 塩分不足

ビリヤニは米料理としてそれ単体で美味しいことを目指すので、後から他の塩味の追加を想定しません。また、各種のスパイスや旨味成分は塩分が効いていた方がより感じやすいこともあり、塩分が足りないとなんだか寝ぼけたような味になります。

米を入れる前に少ししょっぱいくらいのグレービーや茹で湯になっていると、それらが染み込む米と相まってちょうど良い程度の塩加減ですので、イメージ的には米を除いて塩分濃度1.5%くらいでしょうか。精製塩ではなく、美味しい海塩を使うと多少の過不足を補ってくれるのでぜひ使いましょう。

万が一「しょっぱいかな?」となってしまった場合も、少し時間が経つと塩が馴染んで落ち着きますし、パクチーや生姜・オニオン・ナッツ・ドライフルーツなどのトッピングが合わさるとちゃんと美味しく食べられます。ヨーグルトでライタを作ってかけても良いでしょう。シンプルなものでよければ、ヨーグルトをレモン汁や水で少し伸ばせばOKです。

いろんな解説でデンプン量のことなども触れらていますが、慣れるまでは一旦忘れてまず最初にちゃんと美味しいものができてしまえば、そこからは次回以降好みに合わせて調整しましょう。


今回触れた3点は失敗するとリカバリが難しい重要ポイントですが、逆にしっかり押さえられていれば極端な話スパイス無しでも美味しく食べられます(それは恐らく一般的にビリヤニと呼ばれるものではないですが)。一度美味しいと感じてしまえば後はどうにでもなるので、増やすも減らすもお好みで良いと思います。

もちろんこれら以外にも、火事になる程大焦げさせたり、極端に分量を間違えたりすれば大失敗になり得るのですが、おそらく「ビリヤニを作ってみよう」という調理マインドがあればこれらの「極端な間違い」は大抵避けられます。言い方を変えると、他の間違いは極端でさえなければ、おそらく食べて美味しい結果に範囲に収まります。

ということで、次回はこの3点以外の「心配しがちだけどそんなに心配しなくて良い」ポイントについて触れたいと思います。

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